部下のF君が『お好み焼き』を焼いてくれるという。


『どうしても食べて欲しいんです』

何故?

疑問を残しつつ、仕事がてらお店に向かう。


テーブルの上には

『スジ玉のお好み焼き』

『刻んだ沢庵』

『卵2個』が

器に乗せられている。

西の方では定番なのでしょうが、こちらではあまり馴染みが無い。

F君はいそいそと刻んだ沢庵を鉄板で炒め始める。

『沢庵は炒めると甘味が出るんですよ』

『へー』

それをスジ玉に乗せて、さくさく混ぜる。

『ぐるぐるでは無くさくさくです』

『何故?』

『空気を含んだ方が美味いんです』

『へー』

スジ玉を鉄板で焼く事十数分。外側がぱりっと焼き上がる頃

鉄板に2個の卵を溶いたものが広げられる。

『ここからが勝負です。手早くいきます』

広げた卵に火が完全に入る前に

焼き上がったスジ玉を中央に乗せ

卵で一気に包み込む。
敢えて名付けるならば『スジ玉オムレット』とでも呼ぶのだろうか。

(写真はイメージです)

熱々のお好み焼きにソースの『ジュワッ』っという音が堪らない。まるで誘うかの様に、鰹節がひらひらと踊っている。コテで切り分けると、中はトロリで周りはパリパリ。しっかりしたダシに加えて、牛スジの深い味わいが実に美味い。全体を包み込む卵の調和と、沢庵の『コリコリ』した食感がアクセントになり、複雑に構成された世界がそこにあった。


『どうですか?』

『…美味い。美味すぎる』


今まで食べたお好み焼きの中で一番美味かった。

F君に敬意を表して

『スジ玉オムレットFSP』と命名した。


有難うF君。

実に美味かった。


ところで『何故突然、お好み焼きを焼いてくれたのか』


いまだに謎である。