藤原洋のコラム -22ページ目

『日本初4Kスローテレビチャンネル全国CATV局向け試験放送』

~「協調力」による「企業競争力」向上の取り組みを始動~

 

 今回は、当社グループが新たに取り組み始めた「オープンイノベーション」と「協調力」による具体的展開について述べさせて頂きます。

 

 私は、企業経営の実践を通じて経営学の基本を学ぶ実践的ビジネススクール(SBI大学院大学、学長:北尾吉孝氏)の副学長・教授を務めております。当ビジネススクール(経営大学院)において、私が強調しているのが、「バリューチェーンからオープンイノベーションへの転化」です。「バリューチェーン」は、ハーバードビジネススクールを代表するマイケル・ポーター教授の著書『競争優位の戦略』(1985年)で提示され、インターネット以前の企業経営の基本となりました。一方、「オープンイノベーション」は、ハーバードからカルフォルニア大学バークレー校に転じたヘンリー・チェスブロー教授の著書『オープンイノベーション』(2003年)で提示されたインターネット以後の企業経営の基本となるべき概念です。私は、昨年11月、中国深圳政府主催のオンラインシンポジウムでチェスブロー教授と共に招待講演をさせて頂きました(写真参照)。「オープンイノベーション」は、企業が単独で事業領域(バリューチェーン)を作るのではなく、複数の企業や学術研究機関等が連携して連鎖的事業領域(サービス・バリューウェブ)を作るというものです。

 

 

 

 オープンイノベーションの時代を迎える中で、当社は、まず最初に、他社と共に、グループ企業間の連携に着手する方針を立てました。その第1号が、今回の凸版印刷株式会社(以下、凸版印刷)、株式会社ブロードバンドタワー(以下、当社)、およびジャパンケーブルキャスト株式会社(以下、ジャパンケーブルキャスト)の3社の連携による、日本初4Kケーブルテレビ放送スローテレビチャンネル「ナチュラルウィンドウチャンネル」(写真参照)の全国試験放送の開始です。

 

 

 スローテレビチャンネル「ナチュラルウィンドウチャンネル」とは、新型コロナウイルス感染拡大に伴う在宅勤務の普及や、おうち時間が増えている状況において、快適な生活環境の実現に向けて北欧を中心に世界中でトレンドになっている「スローテレビ」の新番組として、凸版印刷が手掛ける超高品質4K映像を、ケーブルテレビの「新放送方式」により全国CATV局へ配信する試みです。試験放送後は、一般家庭での利用や、診療施設・店舗の待合スペース、オフィスの休憩スペースでの活用を見込んでいます。ここで、「スローテレビ」とは、アメリカ、イギリスなどで始まった、焚火動画(睡眠不足解消効果があるとされる)やカメラワークのほとんどない風景や情景映像をひたすら上映する内容の映像コンテンツで、特に北欧ノルウェーでは人気があるとされています。また、「新放送方式」とはACAS(Advanced Conditional Access System)を利用した放送方式のことで、4K・8K放送時代に即したコンテンツ保護管理やセキュリティ要件に対応する規格です。次に3社の役割について述べさせて頂きます。

 

 凸版印刷は、従来の映像コンテンツとは異なる、印刷テクノロジーを活用した「データの真正性」を重視した「オリジナル高品質4K映像」を提供します。ここで、「データの真正性」とは、エンターテイメントや各種映像作品は制作者による演出を含む様々な加工や映像・画像処理がなされているのが一般的ですが、同社は、印刷テクノロジーの中核的な理念でもある「正しい情報を正しく伝える」ポリシーから、画像・映像などのデジタル視覚データの正しさについても追求を行っており、この知見を活かした遠隔診療などへの技術応用開発等を実施しています。「ナチュラルウィンドウチャンネル」においても演出を極力抑え、まるでそこにいるかのような臨場感の環境空間の再現性を目指して制作を行っています。以下のURLをご参照下さい。

 

 当社は、5G に対応した新大手町データセンターを核とする「IX」接続技術など幅広いIT技術や「ダークファイバー回線」を活用した映像配信ノウハウを提供します。ここで、「IX」とは、インターネット・エクスチェンジの略で、インターネットトラフィックの交換拠点を指しています。新大手町データセンターには、当社の特長である、通信キャリアとの中立性を活かし、NTT系のJP/NAP、KDDI系のJPIX、ソフトバンク系のBBIXという3大IXが集結しています。また、「ダークファイバー回線」とは、電気通信事業者などが敷設した光ファイバーのうち使用されていない心線を意味し、多くは専用線となり契約企業だけが利用できる回線で、通常のインターネット接続に比べ通信速度が速く、新しいインフラの活用が模索され、オフィス空間などへ大容量となる「ナチュラルウィンドウチャンネル」の導入効果が期待されます。

 

 ジャパンケーブルキャルトのルーツは、私が現在社外取締役をさせて頂いている株式会社スカパーJSATホールディングスのスピンオフ企業で、従来は、通信衛星回線を用いて映像コンテンツを全国のCATV局に対して一斉配信をしていました。その後、光ファイバー網の普及と低コスト化が進んだために、現在では、当初から培ってきた全国のCATV局顧客に対して、同社が通信キャリアと提携して構築した全国規模の情報配信ネットワークを保有しています。この日本全国のケーブルテレビ局へのリーチ力によって、超高精細・高品質4K映像を各家庭の4K対応テレビへ届ける役割を担っています。

 

 最後に、凸版印刷、当社、およびジャパンケーブルキャストの3社連携によるプロジェクトの意義について述べさせて頂きます。ポストコロナ社会は、これまでのワークスタイルとライフスタイルを一気に変革する社会になると思われます。換言すれば、これまで、デジタル化が遅れていた日本を大きく変える「デジタル変革」(DX)の潮流が生まれています。テレワークの本格化に伴い、東京都の人口は、昨年夏から継続し、東京以外への人口分散が起こっています。このような潮流の中で、当社は、「DataセンターからDXセンター企業」への転換を目指していきたいと考えております。また、当社グループ企業のジャパンケーブルキャストにおいても、全国へのリーチ力を活かした「CATV番組配信企業から地域DX創生企業」への転換を目指していきたいと考えております。このようなDXの時代に当社グループ自身を変革する必要があり、また変革には、イノベーションを起こすことが極めて重要であると認識しております。そのためには、冒頭述べさせて頂いた「オープンイノベーション」の取り組みが有効であると判断し、今回の凸版印刷との共同事業を行うことと致しました。

 皆様には、今後とも当社のオープンイノベーション戦略へのご協力・ご支援をお願いしたいと考えております。

 

 

2021年2月25日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋