人は死んだらまた生まれ変わるって聞いたことがあると思います。
大抵はそんな事ある訳がない
と思いますよね。
でも、偶然とは思えない事が続くと、おもわず信じてしまいたくなります。
由美は、夢の中で絵美に導かれ、ここに来た・・・。
私は、Sさんに話をした事で当時の記憶が蘇り、ここにやって来た・・・。
まるで絵美が二人を導いたとしか思えない不思議な出来事・・・。
「じゃあいけべえさんは、そのSさんって言う人に出会わなければ
ここには来なかったって事なの
」
由美は興味深そうに聞いてきました。
「そう、それまでは完全に記憶を封印していたからね・・・。
もう二度と思い出す事もないと思ってた・・・。だけど」
「だけど
」
「Sさんと接しているうちに、君や絵美と過ごしたあの頃の事が、
ホント鮮やかに蘇って来たんだ。悲しくて封印したはずの記憶が、楽しくてしょうがない
記憶としてね。何だかとても不思議な気分だったよ」
Sさんと出会わなければ思い出す事など無かったあの頃の記憶。
もちろんここに来る事も、由美と再会する事も無かったはず・・・。
私の話を聞いていた由美が、突然こう言いだしました。
「ねえ、いけべえさん。あなたは”生まれ変わり”って信じる![]()
人は死んだら、また生まれ変わるって、聞いた事ない
」
「えっ
生まれ変わり
確かにそう言う事は聞いた事はあるけど・・・。
それがどうしたの
」
正直、由美の言っている事が、私は理解できませんでした。
いきなり”生まれ変わり”を信じるか
と、言われても・・・。
続けて由美は、こんな事を言いだしたのです。
「もしかしたら・・・、そのSさんて人・・・、姉の生まれ変わりじゃないかって・・・」
「えっ
Sさんが絵美の生まれ変わり
そんな事ないでしょう![]()
だってSさんは30以上も年下なんだから」
私は由美の言った言葉に驚いてしまいました。そんな事あるはずがないと。
でも由美は確信があると言わんばかりに
「でもね、いけべえさん、Sさんは私や姉と同じ雰囲気を持っていたんでしょ![]()
それであの頃の記憶を取り戻した。それも悲しいままの記憶ではなく
楽しかったあの頃の記憶の方を」
「姉はきっと、このままで終わらせたくなかったのかもしれない。
悲しいままの記憶であなたが一生を終えるのが。
それに・・・、姉はあなたに忘れて欲しくなかったのかもしれない・・・。
私との事も・・・」
由美はそう言うと、コーヒーを口にしました。
「そうか・・・、そう言われると確かにその通りかもしれない・・・。
封印していた記憶が蘇ったのも、ここへ来ようと思ったのも、
すべてSさんの存在があったからこそだから・・・
それで、ここへ来るタイミングで、夢の中で君を呼び寄せたのかもしれない・・・」
由美が言うように、もしかしたらSさんは絵美の生まれ変わりかもしれません。
このままで終わって欲しくない。絵美のそんな思いが30数年の時を経て
蘇ったのかもしれません。
~決してもう二度と戻らぬ日が
いつまでも輝けばいいな
何度も何度も見上げた背中はもう
前をむいたまま
前を 前を向いたまま~
星野源 「生まれ変わり」 より