落ち込んだり、悲しんだりしてる人を励まそうとする事があります。

よかれと思ってやった事が、功を奏したり、逆効果になったりすることもあります。

でも、結果はどうあれ、その気持ちが大切だと思います。

 

 

絵美の死をようやく受け入れたあの時、由美がお店にいて、一部始終を

聞いていたなんて、思いもしませんでした。

 

「私もまだ高校生だったでしょ。大人のあなたをどうやって励まそうかと

 私なりに考えてはみたけれど、取りあえず連れ回すしかないビックリマーク

 なんて、それしか浮かばなかったのよ」

由美は笑いながら、懐かしそうに当時の様子を語ります。

 

「あの時、姉が楽しみにしてたディズニーランドのガイドブックを見た時ね、

 行きたい所に線がいっぱい引いてあったわ。

 そうだビックリマークあなたとディズニーランドに行こうビックリマークそうしたら、あなたも少しは

 気が紛れるんじゃないかってビックリマーク何故かそう思ったのね」

 

由美は、当時そう思ったらすぐ実行しようとマスターのお店に電話して

私が来たら連絡ちょうだいね。っと、マスターに頼んでおいたそうです。

由美のそんな行動力に、私は驚きを通り越して思わず感心してしまった次第です。

 

「君が突然来て、私の事を励ましてあげるビックリマークって、言われた時ホント驚いたよビックリマーク

 高校生だった君に、どう向き合おうか戸惑ってしまったからね」

正直あの時は、高校生なんてまだ子供だと思っていたので、

ホント戸惑いが大きかったのでした。

 

「ホント言うとね、ディズニーランドあまり行きたくなかったんだ。絵美の事思い出しそうで。

 でも君が言ったんだよね ”私達が行けば、お姉ちゃんも一緒にいる気がするの” 

 そう言われて、そうか・・・、絵美も一緒か・・・、って、思ってね。行く事にしたんだ」

行けば絵美の事は思い出してしまうかもしれない。でも、由美の気持ちもうれしい。

そう思ったあの頃の自分が思い出されます。

 

「私はそんな事全く思いもしないで、あなたを励まさなきゃ、励まさなきゃ、

 それだけで頭がいっぱいだったから、ただただ突っ走っちゃったのよね。

 それに気付いたのが帰りになってから。あなたに悪い事しちゃったな、って」

 

「でもあの時、あなたを励ますどころか、私1人ではしゃいでたものね。

 私自身ディズニーランド行きたかったから。でも、そんな私をあなたはイヤな顔1つせず

 付き合ってくれた・・・。姉の事を思い出して辛かったはずなのに・・・」

由美は私の顔を見つめながら、あの時の思いをそう語りました。

 

「うん、確かに思い出してはいた・・・。君と絵美を重ね合わせてね、

 きっと絵美もこんな風にはしゃいでたろうなって。でもね、あの時はとても楽しかったんだ。

 君の嬉しそうな姿見てたら、来て良かったな、ってね」

 

今思うと、あの時の由美の楽しそうな姿に、私の心も癒されたのかもしれません。

 

 

 

   ~おかしな恋人 ハチミツ溶かしてゆく

     蝶々結びを ほどくように

     珍しい宝石が 拾えないなら

     二人のかけらで 間に合わせてしまえ~

 

 スピッツ 「ハチミツ」 より