何かに行き詰まった時、そこから逃げたしたと思う事があります。
逃げてしまえば、その時は確かに楽になりはします。
ただ後になって後悔しても、もうどうにもならないんです。
亡き姉の事を思い、本当は大好きなのに、私の事を好きになってはいけないと思う由美。
そう苦しんでいる彼女を目の前に、何も出来なかった自分。
言葉をかける事も、抱きよせる事も・・・。
この事があってからしばらくして、自分はある決断をしようとしていました。
「マスター、俺さ、仕事辞めて故郷に帰ろうかと思ってるんだ」
「どうした
急に
親でも具合悪くなったのか
」
「いや・・・、そうじゃないけどさ・・・、なんか疲れちゃって・・・」
「今回の事か
まあ確かに、恋愛経験のほぼ無いお前には少々
こたえたかもしれんなぁ。だけどお前このままでいいのか
」
「・・・」
何とかしたい気持ちはある。このままでいい訳がないのは分かってる。
由美を亡き姉の呪縛から解き放すには、自分が動かなきゃ始まらない。
だけど、その一歩がどうしても踏み出せない・・・。
「お前がそう決めたなら、俺は何も言わん。こんな状況から逃げ出したい気持ちは
分からんでもないからな。ただな、いけべえ、これだけは覚えとけよ![]()
後で後悔しても、もうどうにもならないって事をな」
確かにマスターが言うように、この状況から逃げ出したい気持ちはあったのです。
自分から行動も起こせない、こんな情けないこの状況から。
それから数ヶ月後、私は会社に辞表を提出し、故郷に帰る事に。
引っ越しの準備をしていた時、思い出の品も出て来ました。
それは、絵美から貰った物、一緒に撮った写真、
1つ1つ、1枚1枚、それぞれの思いが詰まっていました。
由美とディズニーランドで撮った写真も。
絵美が亡くなってから、由美に随分励まされたものです。
そんな由美を放って逃げ出す自分。ただ、自分が辛いからと言う身勝手な理由で。
由美を苦しみから救ってあげられなかった情けない自分。
マスターの言葉が、今になって心に染みて来ました。
後悔しても、もうどうにもならないって事を。
そして故郷へ帰る日、思い出詰まったこの部屋を、静かに後にしました。
~思い出つまったこの部屋を 僕も出て行こう
ドアにかぎをおろした時 なぜか涙がこぼれた
君が育てたサボテンのは 小さな花をつくった
春はもうすぐそこまで
恋は今終わった
この長い冬が終わるまでに
何かをみつけて生きよう
何かを信じて生きてゆこう
この冬lが終わるまでに~
チューリップ 「サボテンの花」 より