びぶたいけべえです。

このブログがSさんの目に止まる日が必ず来る事を願って~

 

 

「ディズニーランドから帰ってきて君と別れた時、ああ、また1人の空しい時間が戻って

 くるんだな、と思っていたんだ。だからしばらくして君がマスターのお店に現れた時は

 正直驚いたよ」

 

当時私は絵美を失ってからは特にやる事もなく、マスターの店に入り浸り状態。

だから由美が突然現れたので驚いてしまったのでした。

 

「ホントはね、私、お店の奥にずっといたのよ。いつもいつもあなたを見てた・・・。

 無理にディズニーランドに連れて行ってもらった事でかえってあなたに辛い思いを

 させたんじゃないかと・・・」

 

私は思わず「えっ?」っと叫んでしまったんです。

まさか由美がいつも奥から私を見ていたなんて・・・。

 

「私、何とかあなたが元気になって欲しくてね。何も考えずに行動しちゃったの。

 外へ連れ出せば少しは気が紛れるかな?ってね。自分でも不思議な位行動しちゃったわ」

由美は笑いながら懐かしそうにそう語りました。

 

「あの頃君に随分あっちこっち連れ回されたものね。私はあまり気が進まなかったんだけど

 あの時の君の行動力は凄かった!強引に腕を引っ行かれちゃった行かれちゃったから」

 

当時の由美は、魂の抜け殻状態だった私を何とか励まそうと自分なりに一生懸命

だったのかもしれません。

 

「あなたがあまり乗り気じゃないのはわかっていたわ。でも何とかしなきゃ、

 と思う気持ちばかりが先走っちゃってね。連れ回すしか考えられなかったのね。」

高校生だった自分にはそんな事位しか頭に浮かばなかった。

由美はそう言ってコーヒーを口にしました。

 

「最初の頃はあなたを励まそうとしてたんだけど、段々とあなたと一緒にいるのが

 とても楽しくなってきちゃったの。  

 そんな時にあなたが、「俺の事好きなの?」って言った時があったわね。

 私、その時凄く、ドキッ、ってしちゃってね。慌ててあなたの事タイプじゃない!

 って思わず言っちゃったのよね。

 今思えばあの時から、あなたの事を好きになり始めてたのかもしれない・・・」

 

由美はうつむき加減になりながらそう語りました。

その頃から由美は、私の事を少しずつ意識し始めたみたいでした。

 

当時は高校生なんてまだ子供だと思っていた私でしたが、そんな由美と過ごす時間が、

私の心にポッカリと空いた穴が、少しずつ少しずつ埋まって行ったのが思い出されます。

 

嬉しそうに買い物をしていた由美の姿が、鮮やかに蘇って来たのでした・・・。

 

 

~ちょっとはにかむ顔が好き ふわふわマシュマロ色の

  粉雪が頬をかすめる winter story

  景色も街も樹々白く塗り替えていく あなたとなら暖かいね~

 

 

   岡村孝子 「Winter Story」 より