広島県呉市の灰ケ峰の山中で広島市の16歳の少女とみられる遺体が見つかった事件。自首の末に死体遺棄容疑で逮捕、送検された知人の16歳の少女に続いて、6人が逮捕されました。うち5人は同じ年齢の少年少女です。
みんなで山に行き、暴行した、とする複数の供述も出ているようです。そんな場面を想像するだけでぞっとします。
そもそも遺体発見のきっかけは容疑者の少女の自首です。それがなければ、事件解明が遅れていたのは確かでしょう。ただ自分1人で相手を殺害し、山に捨てたとの当初の供述はあまりに不自然でした。仲間をかばおうとしたのかもしれません。
周辺捜査によって、他の人物の関与が浮上するのは時間の問題だったといえます。容疑者たちは、今度こそ包み隠さず真相を明らかにすべきです。
今のところ事件の経緯については首をひねる部分があまりに多いです。何より動機。
事件の関係者同士では、スマートフォンなどで気軽にメッセージをやりとりできる無料通信アプリのLINE(ライン)が主な連絡手段だったといいます。それが今回注目されているのは、自首した少女が「ラインで悪口を書かれて腹が立った」と説明していたからです。
ラインを含むインターネット上のやりとりは対面して話すより誤解を生じやすく、トラブルになりがちなことが、かねて指摘されていました。もし供述が本当なら、争いの発端になったとしてもおかしくはありません。
一方で容疑者の少女と被害者とみられる少女は同じ接客サービスに参加し、金銭をめぐって関係が悪化していたとも伝えられています。それが背景にあったとすれば見方も変わるが、初対面もいたという容疑者7人の事件当日の行動と、どう結び付くのかははっきりしません。
一ついえるのは、彼らにとって人の命があまりにも軽かったということです。自首した少女が、直前にラインに書き込んでいた中身が報じられています。友人らへの感謝こそあれ、被害者の無念を思い、謝罪する言葉はなかったようです。
だがこの事件を、無軌道な若者による暴走ととらえるだけでいいものでしょうか。
このところ、子どもを自殺に追い込むいじめ事件も各地で後を絶ちません。生命の尊厳を重んじる。そんな当たり前のモラルが若者たちの間で薄らいでいるとすれば、ゆゆしき問題です。
1万数千人が亡くなった東日本大震災を思う。かけがえのない命を大切にし、苦難を乗り越えて生きる意味を、全ての日本人が教えられたはずです。
10代の半ばで学校にも行かず、仕事にも就かない。そんな少年少女たちが、社会の片隅にいることにも思いを巡らせたいです。そして地域の中で、命の重みをもっと伝えていくための営みが欠かせません。