ピアノ修理の作業日報

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ピアノ修理etc…

最近物忘れがはげしいので(笑)日々の作業の覚え書きです。

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ピアノ外装・内部のパーツの修理と仕上げは完了して、組付けがひとまず終わりました。

ピアノ修理の作業日報-パールホワイトのピアノ

ホワイトパール塗装とセミコン・タイプのピアノ椅子も相まって、かなり質感が高く感じます。

ピアノ修理の作業日報-パールホワイトピアノ

写真ではなかなかその質感が伝わらないので、そこが課題でもあります。


あとは通常の整調・調律の作業ですが、長い間使われていなかったのでけっこう大きく狂っているところもたくさんあるので、じっくり時間をかけて調整していきます。

U3-Hの頃の年代特有の代表的な経年劣化、フレンジ・コード(バット・スプリング・コード)切れと白鍵木口(白鍵の手前側垂直部分)の変色・変形の修理です。

グランドピアノの場合は水平に張られた弦をハンマーが下から叩くので、鍵盤から指を離すと引力で自然にハンマーが落下して始点に戻りますが、アップライトの場合は垂直に張られた弦をハンマーが水平方向に叩いた後で始点に戻るのをサポートするために、ハンマーの後ろで常にスプリングの力がかかっています。

ハンマーの軸の根元(バット)にスプリングがついていて、センターレール(固定部分)側のフレンジに紐(コード)が両端を固定して付いていて、その紐にスプリングを引っ掛けてあるのですが、その紐がこの年代のものは経年劣化によって切れてしまうことがしばしばあります。

ピアノ修理の作業日報-フレンジコード

ピアノ修理の作業日報-フレンジコード貼り変え

また、これもこの年代特有の経年劣化として、白鍵の木口が変色したりひどいものは凸凹に変形したりするものも多いです。

外装をクリーニングしたり塗り替える場合は変色したままだととくに目立つのですが、変形(平面がデコボコしてとくに周辺部が盛り上がってくる)が進行すると白鍵が沈んだときにその前の口棒に干渉して戻らなくなるなどの症例もありました。

ピアノ修理の作業日報-白鍵木口

ピアノ修理の作業日報-白鍵木口貼り変え


物忘れが激しいので書き始めたブログですが、ブログを書くのを忘れます(笑)

先日塗装したピアノのパーツを磨きます。
スペース的なこともあって、磨いて仕上がったパーツを組み立てながらの同時進行です。
なので、まず本体とそのまわりの部品から磨いて、とりあえずピアノを台から下ろして起こします。

ピアノ修理の作業日報-ピアノ塗装 磨き

塗ったままの状態で乾いた塗膜を、粗いペーパーから徐々に細かい番手に変えながらひたすら研磨し、その後コンパウンドをつけてポリッシャーで磨きます。


「ピアノ塗装」とはいわゆる「鏡面仕上げ」のことです。

ちなみに、自動車の塗装は「塗りっぱなし」の状態で、塗り肌がそのまま塗装仕上げ面に鳴ります。
なので、自動車補修の塗料は、「塗りっぱなし」で塗膜表面の状態がなるべく滑らかに仕上がることが重要になりますが、ピアノの場合は一度ペーパー掛けをして平面を作り、そこからポリッシャーを使って艶を出す感じなので、必要以上に「伸びる」塗料を使う必要はありません。

また、伸びる塗料は焼き付けを前提にしていますが、ピアノの場合は高温の熱をかけて乾燥することが難しいので、適しているとはいえません。

わざわざ書く様なことではないのですが、塗装関係の方などにたまに質問されるので。


U3-H全塗装の後半戦、前回塗った残りのパーツを塗装しました。

ピアノ修理の作業日報-ピアノ パール塗装

3コートパールではパールの層の塗り回数やガンの運行速度などで、パールの量の加減が変わってきます。
とくに、同じ面の隣り合うパネルでパールの量の加減が違うととても目立つのですが、部品自体は別々に塗るので、なるべく合う様に注意しながら作業します。

自動車の補修などでは、パーツを一度組み立ててから滑らかにつながる様に隣のパネルと同時に塗ったりしていましたが、ピアノの場合は隣り合うパーツ同士は隙間なくくっついているので(自動車の場合はパネル間に数ミリの隙間があることが多い→ボンネット~フェンダー~Fドア~Rドア~クオーターパネル~トランクリッドの様に、それぞれ面はつながっているけど指の先が入るくらいの数ミリずつの隙間があります)毛細管現象でパーツ同士の間の部分に塗装が入り込んでみっともないので、パールの加減は難しいですが部品単位で塗装しています。

パールの感じを写真で撮ろうと思うとなかなか難しいのですが、キラキラ光ってて陰翳があるのが分かるでしょうか?写真は下前板のツマミの部分です。

ピアノ修理の作業日報-ピアノ パール塗装


先日分解して下地の調整をしたU3-Hのパーツを塗装しました。

ピアノ修理の作業日報-ピアノパーツ塗装

今回は全塗装しますが、パール塗装ということもあり、工程数も多くホコリなどが入らない様に細かく気を使う塗装なので、全パーツを2回分に分けて塗装することにしました。

写真に写っているパーツ+本体や棚板など、組み付けして自立出来るパーツを先に塗りました。
この後、ふつうに簡単に取り外しが可能な部品を塗ります。

ホワイト系の色にパールをそのまま混ぜると、ホワイトの顔料にパールが隠蔽されてほとんどホワイトになってしまうので、自動車の塗装でいうところの「3コート」で仕上げます。

ホワイトを塗り、その上からパールだけを塗り、クリアーでコーティングします。

また、パールは光のあたり具合の変化でキラキラと美しく光るのですが、自動車と違ってピアノは平面が多く、とくに目につく部分は垂直面なので光源から反射しても人の視界には入り辛いので、その様なことを考慮しながらピアノの塗装の目的に合わせていろいろ工夫しています。
U3のピン磨きです。

鍵盤の位置と軌道を決めるため、鍵盤の長手方向のまん中辺りと手前にそれぞれバランスピンとフロントピンという金属の細い棒の様なものがピアノから生えていて、鍵盤側にはそのピンが通る穴が開いています。

前項の写真の様に、穴のまわりはクロス(編み目の入ったフェルト)が貼ってあって、木と金属が直接触れずに鍵盤がスムーズに摺動する様になっています。

ピンは経年で錆が出て来たりホコリの様な不純物や油っぽい水分で粘り気のある付着物が付いたりするのですが、長い時間をかけてゆっくりたまっていくので、普段の定期メンテナンスでもなかなか手の入れられない部分でもあります。

作業的には単純に、汚れは拭き取り錆は削り取るのですが、けっこうチマチマと時間のかかる作業でもあります。

ですが、このピン磨きをすることによって、鍵盤の動きはかなりスムーズに変わります。
とくにバランスピンの根元部分の錆などは、かなり分かりやすいです。

中古ピアノの選び方等を書いたサイトで、チェックポイントとしてチューニングピンの錆とかアクションまわりのきれいさとか鍵盤のガタつきとかが書いてありますが、このピンがきれいかどうかを見れば中古ピアノとしてしっかり整備されているかの基準にもなりそうな(他のところも想像がつく)気がしますが、なかなかチェックしにくいところでもあります。


ピアノ修理の作業日報-バランスピン磨き
バランスピン

ピアノ修理の作業日報-フロントピン磨き
フロントピン

フロントピンは断面が楕円形になっているのでオーバル(:楕円)ピンとも呼ばれます。

鍵盤の長手方向に対して縦長の楕円で、鍵盤の横方向の間隔を保ちながら上下に動かすときのガイドとなりますが、使用時間の長いピアノでは鍵盤側の穴が広がり横方向にガタが出るので、楕円を若干回してそのガタを収めることがあります。

回す角度が大きくなるほど鋭角的に接触することになるので、その後も穴が広がり易くなります。

今回は鍵盤側のクロスも張り替えるので、オーバルピンも元の角度に戻します。

・・・そういう意味でも、中古ピアノを選ぶときはチェック出来たら良い場所かもしれませんね。


磨いた後で最後にほんの少しだけ潤滑&防錆のオイルを塗ります。

家を建て直す間にピアノをお預かりして、新しい家にも馴染む様ピアノをクリーニングし、せっかくなので中身も外装も整備するという内容のピアノが入庫しました。

ヤマハの400万番台…比較的新しい(…といっても昭和60年代ですが)ピアノですが、エイジングしてあるかの様な年代を感じさせる外観になっています。
ちなみに、鍵盤蓋が錆び付いて開かなくなっていたということでしたので、保管状態はかなりサバイバルな感じだったことが予想されます。

この仕事は同業の先輩からの委託で、とりあえず先に運び出すので後はよろしく…という感じの依頼です。

さっそくバラして各部をチェックしました。

ピアノ修理の作業日報-MC301

まずは鍵盤を一通り動かして、各部が正常に機能しているかをチェックし、外装パネルを外してアクションを取り外しさらに細かくチェック。

回転部分のセンターピンのスティックやフレンジコードなど、不具合の起きやすいところを重点的に確認し、目視で各部の異常の有無を確認しましたが、幸いなことに致命傷は無さそうです。

次に、鍵盤を上げて鍵盤そのものと鍵盤の収まっている周囲を確認。

ピアノ修理の作業日報-バランスピン 虫食い

まぁ、しかし、まずはホコリがなんとも凄いのですが、ホコリに混じって小さな赤いツブツブ。写真の赤いフェルトを見ても分かりますが、本来真ん丸なはずのフェルトが欠けているのが分かるでしょうか。
虫食いです。赤いツブツブは食い散らかした跡です。

ということは、鍵盤側も・・・

ピアノ修理の作業日報-バランスブッシング

ブッシングクロスがやはり虫に食べられています。
ということは・・・

ピアノ修理の作業日報-フロントブッシング

フロント側のブッシングクロスも然り。
写真では分かり難いですが(思いっきり逆光だし(笑))フェルトの毛の部分だけを食べて、クロスの繊維より下は残してあるので、一見赤いのが残っている様にも見えますが、ピンに通すとガタガタです。

とりあえず、現状を依頼主の先輩に報告しておきます。

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前に響板とフレームの修理の話題で書いたグランドピアノも別の同業の先輩からの仕事で、そちらは中身のオーバーホールは先輩自身が時間があるときに工房に通って仕上げる感じですすんでいるのですが、今日は張弦が終わってとりあえず下律まで終わりました。

弦を張ってダンパーが入るといよいよグランドピアノらしくなります。

ピアノ修理の作業日報-c3b 整調


ピアノの外装を塗り替えるための塗装下地を調整します。

浅い傷はまわりの塗装をまるごと削り取ったり、深い傷はパテ等を使って修正した後、プラサフを塗布します。

ピアノ修理の作業日報-塗装下地(プラサフ)

ピアノの外装は、古いものではカシュー、ラッカー等の塗装が施されていますが、その後ウレタン系、ポリエステル系の塗料に移行し、パーツによっては素材の樹脂がそのまま外装の仕上げ面となっているものもあり、1台のピアノにそれらが混在しています。

年代が古かったり取扱の条件が悪かったりして、塗装やその下地そのものが変質したりヒビ割れたりして劣化しているものはそれらを取り除く必要がありますが、たいていの場合は現存する塗膜をそのまま下地として使用します。

ひとむかし前、新車を買ってしばらくは、塗装が傷つき易いのであまりマメに洗車をしてはいけないといわれていましたが、実際、塗装の溶剤分が完全に抜け切るのは数ヶ月以上の時間がかかるので、何年も経過して完全硬化した塗膜は、新しい塗装の下地としては最適だといえます。

プラサフとはプライマー・サーフェーサーの略ですが、プライマーは下地(素地)との密着性などを高めるもの、サーフェーサーは上塗りの前段階の面を整えるものという様な意味合いです。

プラサフにもラッカー系、アクリル系、ウレタン系などがありグレードも様々ですが、樹脂がそのまま仕上げ面となっている様なパーツでは、その上に直接上塗り塗装すると樹脂の成分が塗料の中に移行して変色する(ブリード)場合があるので、それを防ぐことのできるものを選びます。

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前項でコーティング塗装したペダルを底板に組み付けます。

ピアノ修理の作業日報-ペダル組み付け

ペダル下のクッション・フェルトをはじめ、緩衝材として使用されているクロスやスキンは消耗が激しい場合が多く、そのままでは雑音等の影響も出やすい部分ですが、分解しないとなかなか手が届きにくいところでもあるので、これらの交換はこういう時にはマストな作業です。

ピアノ修理の作業日報-ペダル裏スキン

真ん中のペダルの板バネが擦れる部分のスキン(鹿革)は、潰れていたり無くなっていたりしているものが多いです。(黄色く見える部分)

ピアノ修理の作業日報-クロス

ペダルの動きを天秤棒に伝える部分の緩衝材は、古いものだと革製の部品が使われていますが、ふつうは鍵盤の下のバランス・ブッシング・クロスが流用されています。
とくに使用頻度の高い右のペダルのこの部品は、切れたり無くなったりしているものもたまにあります。
せっかく交換するので、厚手のものに差し替えています。
予想通り(笑)更新が滞ってしまいました。

現在、ヤマハU3-H(220万番台)のクリーニング&塗り替えの作業に取り掛かっています。

10数年放置してあったピアノなので、作業の内容的には盛りだくさんになりそうです。


調律も20年近くしていなかったので、半音ほど下がっていました。(しかも結構ばらついた状態で)
とりあえず、入庫からすでに2~3回下打ちしてあります。


外装パネルの脱着できる部分とアクション・鍵盤まわりを取り外し、ベッドと呼ばれる作業第に載せ、更に接着してあるパーツも分解します。

ピアノ修理の作業日報-アップライト分解

クリーニングと同時に色の塗り替えもするので、外装パーツはなるべく最小単位まで分解します。

ピアノ修理の作業日報-アップライト分解

本体から外せるだけパーツを外した後、フレームや響板まわりをクリーニングします。
ピンや弦についた錆も落とします。

ピアノ修理の作業日報-弦ピン錆び落とし

底板&ペダルまわりもクリーニング&錆落とししておきます。

ピアノ修理の作業日報-底板&ペダル

底板と附属のパーツもできるだけ分解して、錆び落としや消耗部品の交換(フェルト・皮)、グリースアップします。
目につきにくい場所ですが、放置しておくとペダルの雑音や「かび臭さ」などの原因にもなります。


ピアノ修理の作業日報-底板分解

ペダル磨きについては、以前書いたブログの「ピアノのペダル磨き 」の項参照。
下の画像は再び錆びない様にコーティング剤を塗装して乾燥中。

ピアノ修理の作業日報-ペダルコーティング

他の作業を進めながら、コーティング剤が乾燥した頃合いを見計らって組み付けます。


3日間ピアノの発表会のお手伝いに行っていて、工房の作業はしていませんでした。


響板の塗装面の最終調整をして、再塗装したフレームを取り付けます。

天井裏の鉄骨にチェーンブロックをかけて吊り上げます。
フレームは不均衡な形をしているので、バランスを取ってなるべく水平になる様にロープを架けています。

ピアノ修理の作業日報-グランドピアノ フレーム取付け

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