ピアノの外装を塗り替えるための塗装下地を調整します。
浅い傷はまわりの塗装をまるごと削り取ったり、深い傷はパテ等を使って修正した後、プラサフを塗布します。
ピアノの外装は、古いものではカシュー、ラッカー等の塗装が施されていますが、その後ウレタン系、ポリエステル系の塗料に移行し、パーツによっては素材の樹脂がそのまま外装の仕上げ面となっているものもあり、1台のピアノにそれらが混在しています。
年代が古かったり取扱の条件が悪かったりして、塗装やその下地そのものが変質したりヒビ割れたりして劣化しているものはそれらを取り除く必要がありますが、たいていの場合は現存する塗膜をそのまま下地として使用します。
ひとむかし前、新車を買ってしばらくは、塗装が傷つき易いのであまりマメに洗車をしてはいけないといわれていましたが、実際、塗装の溶剤分が完全に抜け切るのは数ヶ月以上の時間がかかるので、何年も経過して完全硬化した塗膜は、新しい塗装の下地としては最適だといえます。
プラサフとはプライマー・サーフェーサーの略ですが、プライマーは下地(素地)との密着性などを高めるもの、サーフェーサーは上塗りの前段階の面を整えるものという様な意味合いです。
プラサフにもラッカー系、アクリル系、ウレタン系などがありグレードも様々ですが、樹脂がそのまま仕上げ面となっている様なパーツでは、その上に直接上塗り塗装すると樹脂の成分が塗料の中に移行して変色する(ブリード)場合があるので、それを防ぐことのできるものを選びます。
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前項でコーティング塗装したペダルを底板に組み付けます。
ペダル下のクッション・フェルトをはじめ、緩衝材として使用されているクロスやスキンは消耗が激しい場合が多く、そのままでは雑音等の影響も出やすい部分ですが、分解しないとなかなか手が届きにくいところでもあるので、これらの交換はこういう時にはマストな作業です。
真ん中のペダルの板バネが擦れる部分のスキン(鹿革)は、潰れていたり無くなっていたりしているものが多いです。(黄色く見える部分)
ペダルの動きを天秤棒に伝える部分の緩衝材は、古いものだと革製の部品が使われていますが、ふつうは鍵盤の下のバランス・ブッシング・クロスが流用されています。
とくに使用頻度の高い右のペダルのこの部品は、切れたり無くなったりしているものもたまにあります。
せっかく交換するので、厚手のものに差し替えています。