フレームを載せる前に、裏側の支柱の汚れを落として再塗装します。
グランドピアノの重さは「3」クラスのもので300kg少々ですが、そのうちフレームの重さが約半分くらいだと思われます(2人で持った感じで)
グランドピアノを運ぶときには、専用の布団で巻いて「フネ」と呼ばれる木製のパレットの上に立てて固定し運ぶのが一般的ですが、さすがに1人で出来る作業ではありません。
フレームを外した状態だと重さが約半分なので、一人でもなんとか脚を外して立てることが出来ます。(十分な注意が必要ですが)
響板の裏側や支柱の汚れをきれいに落として、上から新しく黒を塗装します。
このピアノは海のすぐそばで使われているピアノなので汚れやカビが結構ひどい状態で、塗装もだいぶ剥げていました。
若干の対策として、普段はラッカー系の塗料で塗るところをウレタン系にしておきました。
※明日から3日間は教室の発表会のお手伝いに行くため、ブログの更新が滞りそうです。
再び中研ぎを入れて、3度目の響板塗装です。
前々日の日記にも書きましたが、このピアノの場合どちらかといえばしなやかさを重視した仕上げにしたいので、仕上がりの膜厚をなるべく薄くするために、手間はかかりますが薄い塗膜を重ねてこの様な作業を繰り返します。
余談ですが、テンションが高くて響板もハードな仕上げが良いとする設計のピアノの場合、最上級のフルコンでもポリエステル系の塗料をたっぷり流し込む様な塗装が施されているものもあった様です。(年代によって一時的にではあった様ですが)
これで仕上げとするつもりなので、乾かす間にホコリなどが付着しない様にマスキングシートをかけて養生しておきます。
マスキングのことを日本語に直すと「養生(ようじょう)」といいますが、以前大手塗料メーカーの講習を受けていたときに講師の方が「マスキングを養生と訳すのはおかしい」とおっしゃっていました。
たしかに、マスキングとは塗装したくない部分に塗料が付かない様にあらかじめ何かで覆っておくこと、養生とは上の写真の様に塗装後ホコリなどが付かない様に塗装面を覆うこと…という違いがニュアンス的にある様に思います。
前々日の日記にも書きましたが、このピアノの場合どちらかといえばしなやかさを重視した仕上げにしたいので、仕上がりの膜厚をなるべく薄くするために、手間はかかりますが薄い塗膜を重ねてこの様な作業を繰り返します。
余談ですが、テンションが高くて響板もハードな仕上げが良いとする設計のピアノの場合、最上級のフルコンでもポリエステル系の塗料をたっぷり流し込む様な塗装が施されているものもあった様です。(年代によって一時的にではあった様ですが)
これで仕上げとするつもりなので、乾かす間にホコリなどが付着しない様にマスキングシートをかけて養生しておきます。
マスキングのことを日本語に直すと「養生(ようじょう)」といいますが、以前大手塗料メーカーの講習を受けていたときに講師の方が「マスキングを養生と訳すのはおかしい」とおっしゃっていました。
たしかに、マスキングとは塗装したくない部分に塗料が付かない様にあらかじめ何かで覆っておくこと、養生とは上の写真の様に塗装後ホコリなどが付かない様に塗装面を覆うこと…という違いがニュアンス的にある様に思います。
響板は中研ぎを入れて2度目の塗装をしました。
響板は弦の振動を直接伝えて共鳴させる部分で、理屈的にはバイオリンのボディーと同様です。
以前、バイオリンを製作していらっしゃる方に伺った話では、塗装前がいちばん『鳴る』との事でしたが、いろいろ調べていると、未塗装のものは音が拡散して焦点が曖昧だ…などの意見もある様でした。
ピアノの響板をスピーカーでいうところのコーン(振動部分)に置き換えて考えてみると、スピーカーの設計に違いがある様に、ピアノの設計もメーカーや機種によって方向性に違いがあります。
繊細な表現が可能なアンプで能率の良いスピーカーを鳴らす場合と、高出力のアンプでダイナミックな音を出す場合とでは、そのスピーカーに求められる性能はほぼ正反対のものになりますが、ピアノの基本設計の思想も、大雑把に言うとメーカーや機種によってこのような方向性の違いがあります。
で、響板の塗装に関しても、たとえば塗膜の厚さは、能率の良さを求めるならば薄くて柔軟な方が良いでしょうし、ダイナミズムを求めるならばある程度強固な塗膜が必要になると考えられます。
今回、たまたま同時に作業していたグランドピアノと同じ音階で弦を比較してみると、このピアノの方が細くて短い設計になっていることが判りました。
すなわち、2台のうちではこちらの方が弦の張力が低く、どちらかといえば繊細な表現に向いていることになります。
よく『響板ニスはやっぱりレンナーがいいよね』とかいうのを聞きますが、とりあえず、レンナーのニスを塗っておけば怒る人もいないし話のネタにはなるので、それはそれで正論だと思います(笑)
話がそれました(笑)
次に、フレームまわりの細部を仕上げました。
ブリッジを研磨して調整したり、フレームボルトやアリコートなどのメッキパーツを磨いたり、同色のものは再塗装します。
製造番号のまわりもきれいに調整して、あとはピアノに戻すのを待ちます。
響板は弦の振動を直接伝えて共鳴させる部分で、理屈的にはバイオリンのボディーと同様です。
以前、バイオリンを製作していらっしゃる方に伺った話では、塗装前がいちばん『鳴る』との事でしたが、いろいろ調べていると、未塗装のものは音が拡散して焦点が曖昧だ…などの意見もある様でした。
ピアノの響板をスピーカーでいうところのコーン(振動部分)に置き換えて考えてみると、スピーカーの設計に違いがある様に、ピアノの設計もメーカーや機種によって方向性に違いがあります。
繊細な表現が可能なアンプで能率の良いスピーカーを鳴らす場合と、高出力のアンプでダイナミックな音を出す場合とでは、そのスピーカーに求められる性能はほぼ正反対のものになりますが、ピアノの基本設計の思想も、大雑把に言うとメーカーや機種によってこのような方向性の違いがあります。
で、響板の塗装に関しても、たとえば塗膜の厚さは、能率の良さを求めるならば薄くて柔軟な方が良いでしょうし、ダイナミズムを求めるならばある程度強固な塗膜が必要になると考えられます。
今回、たまたま同時に作業していたグランドピアノと同じ音階で弦を比較してみると、このピアノの方が細くて短い設計になっていることが判りました。
すなわち、2台のうちではこちらの方が弦の張力が低く、どちらかといえば繊細な表現に向いていることになります。
よく『響板ニスはやっぱりレンナーがいいよね』とかいうのを聞きますが、とりあえず、レンナーのニスを塗っておけば怒る人もいないし話のネタにはなるので、それはそれで正論だと思います(笑)
話がそれました(笑)
次に、フレームまわりの細部を仕上げました。
ブリッジを研磨して調整したり、フレームボルトやアリコートなどのメッキパーツを磨いたり、同色のものは再塗装します。
製造番号のまわりもきれいに調整して、あとはピアノに戻すのを待ちます。
フレームの傷を修正し、ヒッチピンをマスキングして金粉塗装しました。
ピアノのフレームに施してある塗装は俗に金粉塗装と呼ばれますが、金粉といっても金(Gold)の粉ではなくて真鍮の粉です。金(色の)粉。
真鍮は銅と亜鉛の合金ですが、銅の割合が多いほど赤っぽい金色になります。
ベーゼンドルファーのフレームなどはけっこう赤っぽいです。
同じメーカーでも年代によってフレームの色が若干違います。
使おうと思っていた金粉が現状よりも若干赤っぽかったので、以前ピアノの外装の装飾に使った黄色味の強い金粉と混ぜて調色しました。
ちなみに、金粉はクリヤーに混ぜて塗るのですが、金粉が酸化すると変色する(真鍮は錆びると緑っぽくなる)ので、無酸のクリヤーとシンナーを使います。
また、金粉塗装のみのもの(古い機種に多い)と、金粉塗装を施してからその上にさらに透明なクリヤーを塗ったものがありますが、今回は後者だったので仕上げにクリヤーでコーティングしています。
響板の方は何度か重ね塗りしますが、写真は1回目の状態です。
このあとである程度乾いてから中研ぎを入れて塗り重ねます。
今の季節は気温が低いので、乾くのに時間がかかります。
覚え書きのついでに…
今日は以前納品させていただいたお客さまから、TDLのお土産をいただきました。
ありがとうございます♪
(ちなみに、下の鍵盤はこのピアノのもので、白鍵上面&木口とフロント&バランス・ブッシング貼り替え済みです)
ピアノのフレームに施してある塗装は俗に金粉塗装と呼ばれますが、金粉といっても金(Gold)の粉ではなくて真鍮の粉です。金(色の)粉。
真鍮は銅と亜鉛の合金ですが、銅の割合が多いほど赤っぽい金色になります。
ベーゼンドルファーのフレームなどはけっこう赤っぽいです。
同じメーカーでも年代によってフレームの色が若干違います。
使おうと思っていた金粉が現状よりも若干赤っぽかったので、以前ピアノの外装の装飾に使った黄色味の強い金粉と混ぜて調色しました。
ちなみに、金粉はクリヤーに混ぜて塗るのですが、金粉が酸化すると変色する(真鍮は錆びると緑っぽくなる)ので、無酸のクリヤーとシンナーを使います。
また、金粉塗装のみのもの(古い機種に多い)と、金粉塗装を施してからその上にさらに透明なクリヤーを塗ったものがありますが、今回は後者だったので仕上げにクリヤーでコーティングしています。
響板の方は何度か重ね塗りしますが、写真は1回目の状態です。
このあとである程度乾いてから中研ぎを入れて塗り重ねます。
今の季節は気温が低いので、乾くのに時間がかかります。
覚え書きのついでに…
今日は以前納品させていただいたお客さまから、TDLのお土産をいただきました。
ありがとうございます♪
(ちなみに、下の鍵盤はこのピアノのもので、白鍵上面&木口とフロント&バランス・ブッシング貼り替え済みです)
昨日に引き続き、響板の作業です。
新しく塗る響板ニスの下準備として、溶剤で落としきれない古いニスを除去しつつ、響板の表面の凹凸を平滑に均します。
響板ニスを塗るときは、一般的にその塗膜の膜厚は薄い方が良好だとされます。
膜厚を薄く、且つ、表面をきれいに仕上げるには木地の調整の精度が重要で、パッと見はなかなか判り辛いところですが仕上がりの音質にも深く関わるので手は抜けません。
響板を仕上げてマスキングを施し、いざ塗装しようとしたところで塗料が足りないことに気付いてそのまま作業はお預けになりました(笑)
仕方が無いので、外したフレームの再塗装の準備にかかります。
海のすぐそばのお家で使われていることもあり、部分的に錆が出ています。
塗膜を剥がして、その下の鋳物の部分の錆を落とし、防錆処理をしてサフェーサを吹きます。
全体の汚れを落としながら、塗装の足付け(塗装を密着させるために細かい傷を付ける)作業を行います。
新しく塗る響板ニスの下準備として、溶剤で落としきれない古いニスを除去しつつ、響板の表面の凹凸を平滑に均します。
響板ニスを塗るときは、一般的にその塗膜の膜厚は薄い方が良好だとされます。
膜厚を薄く、且つ、表面をきれいに仕上げるには木地の調整の精度が重要で、パッと見はなかなか判り辛いところですが仕上がりの音質にも深く関わるので手は抜けません。
響板を仕上げてマスキングを施し、いざ塗装しようとしたところで塗料が足りないことに気付いてそのまま作業はお預けになりました(笑)
仕方が無いので、外したフレームの再塗装の準備にかかります。
海のすぐそばのお家で使われていることもあり、部分的に錆が出ています。
塗膜を剥がして、その下の鋳物の部分の錆を落とし、防錆処理をしてサフェーサを吹きます。
全体の汚れを落としながら、塗装の足付け(塗装を密着させるために細かい傷を付ける)作業を行います。
オーバーホール中のグランドピアノ(ヤマハC3B)の響板を再塗装するため、古いニスを落とします。
古くなったニスは軟化するものがあり、ベタついたり、そこにホコリがこびりついて汚れが目立ちます。
また、軟化したニスは、音響的にも響板の動きをスポイルする方向に働くことが予想されるので、弦を外したついでにフレームを上げて響板を塗り替えることにしました。
(もう少し古い年代のものはシェラック・ニスというカイガラムシの分泌物に由来するニスが塗ってありますが、これは硬度が高く水分量が低いので、古くなると細かくヒビ割れます。)
古いニスはアセトンで落とす場合も多いですが、今回はラッカー・シンナーを使いました。
古くなったニスは軟化するものがあり、ベタついたり、そこにホコリがこびりついて汚れが目立ちます。
また、軟化したニスは、音響的にも響板の動きをスポイルする方向に働くことが予想されるので、弦を外したついでにフレームを上げて響板を塗り替えることにしました。
(もう少し古い年代のものはシェラック・ニスというカイガラムシの分泌物に由来するニスが塗ってありますが、これは硬度が高く水分量が低いので、古くなると細かくヒビ割れます。)
古いニスはアセトンで落とす場合も多いですが、今回はラッカー・シンナーを使いました。
ホームページやブログの更新もままならないのですが、新たな年を迎えるにあたって、日々の工房での作業を書き留める日記を始めようと思います。
最近は物忘れが激し過ぎで、昨日のことすら忘れてしまったりしてますし(笑)
内容的にはつまらない独り言になりそうですが、なるべく毎日チマチマと更新できれば良いと思っています。
最近は物忘れが激し過ぎで、昨日のことすら忘れてしまったりしてますし(笑)
内容的にはつまらない独り言になりそうですが、なるべく毎日チマチマと更新できれば良いと思っています。
















