「”あの1行"の衝撃」

 

近日書店で見かけた際にこのようなアオリで紹介されていました。

この作品の魅力を表すのにこれ以上の言葉は無いでしょう。私も、読んだ時は電撃が走るような感覚を受けました。

 

近日、huluで実写映画化されるらしくなにかと話題の『十角館の殺人』。いったいこの作品がどう映像の形で表現(実現?)されるのか、ファンの方は楽しみにされていることかと思います。

私自身、長いこと気になっていながらも手に取ったのはつい最近のことでしたが、今まで読んだミステリの中でも5指に入る作品でした。もっと早く出会いたかったと思ってやみません。

 

 

さて、紹介に移ります。

十角形の館が立つ曰く付きの孤島・角島に旅行に来たミステリ研の大学生グループ。彼らが次々に殺害されていく・・・という、舞台設定としては比較的オーソドックスな「孤島モノ」「雪山山荘モノ」に括られます。時間が進むにつれ人が減っていき、疑念を抱き合い・・・

 

独特なのは、登場人物の呼び名。

彼らは研究会の伝統から互いをエラリィ(・クイーン)、アガサ(・クリスティ)など著名な推理作家の名で互いを呼び合っています。大学生らしい微笑ましさもありながら、読み手としては舞台により引き込まれていくような効果も感じられます。

 

そして、展開の仕方も特徴的です。

メインの舞台の角島に加え、本土では元ミス研の2人や十角館を建設し半年前に悲惨な事件を起こした建築家・中村青司の縁者が彼らの元に届いた一通の手紙を介して繋がりあい、半年前の事件の謎に迫っていきます。その中で、青司とミス研のメンバーたちの関わりも明らかになっていきます。

こうして角島と本土の2つの独立した流れが次第に重なっていき・・・そして、"あの一行"に至ります。

 

そして、個人的には締め方が非常に好きです。ここもかなり独特なポイントになるとは思うのですが・・・犯人の心情などに思いを馳せると、非常に良い締めだなあ、と思います。

 

 

綾辻行人さんですが、これがデビュー作ということが何より恐ろしい。その後も30年以上にわたって愛され、いい作品を出し続けていられるのも素晴らしい。

『暗黒館の殺人』を近いうちに読んでみようと思っています。

 

ミステリの紹介というのは他のもの以上に難しいものですね。ここをみて手に取ってくださる方が一人でもいらしたら、これ以上の幸せはありません。