ボブ・ディランの全曲訳詞に挑戦中、「ディラン日記」のコーナー。前回から"Blonde on Blonde"のアウトテイクに入っております。同アルバムからのアウトテイクはこの2曲のみでありました。今回は長い歌詞ですが、それほど難しい単語は使われておらず、比較的楽な訳詞作業でした。

 

She's Your Love Now
"The Bootleg Series Volumes 1-3 (Rare & Unreleased) 1961-1991"(1991)収録

恋人を他の男に取られてしまった男の怒りとも、グチともつかない、なんとも複雑な感情を歌った曲。そんな曲ながら、冒頭にそのフラれた男を見て喜んでいる質屋と家主が出て来るところが、ディランらしい屈折ぶりだと思います。また"you"の使い方が同じヴァースでも彼女に対してだったり、男に対してだったりして変わるところが、この歌詞のユニークなところであると思います。

サウンドの方は、前曲に登場したザ・ホークス(後のザ・バンド)のロビー・ロバートスンリック・ダンコに加え、ガース・ハドソンがオルガンで、リチャード・マニュエルがピアノで参加しており、レヴォン・ヘルム以外の4人が勢ぞろいしています。収録ヴァージョンでは第4ヴァースへと進んで行きますが、途中で演奏が止まってしまします。

コードが進行が"Like a Rolling Stone"で一緒のようですし、アレンジは"One of Us Must Know (Sooner Or Later)"のような雰囲気になっています。また、65~66年のアウトテイクを集めた"Bootleg Series Vol.12"にもややスローにしたヴァージョンが収録されており、個人的にはこちらの方が歌詞の内容に合っているのではないかと思います。

まずはディランのHPで原詩を確認下さい。途中で終わる第4ヴァースは掲載されておりませんでした。
https://www.bobdylan.com/songs/shes-your-lover-now/

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質屋が吠えた そしてそう 家主もそうだった
その様子はとてもクレイジーじゃないかい
二人ともとって喜んでた オレが持ってるものを壊すのを見て
痛みは確かに人の一番いいところを引き出すよな
ここにいたくなかったら なんでただ出ていかなかったんだ
なんでそんなに辛くあたったんだ 
そんな風にしなきゃならなかったのか
今おまえはここに立ってる
おまえが言い忘れた何かをオレが思い出すのを期待しながら
そう おまえは まだ彼女と一緒にいるのをオレは見た
いいさ 彼女はとっても奇妙にやってくる わかるかい
誰かがもっとうまく説明できる 彼女は鉄の鎖を手に入れた
オレはやるよ だがおまえがどんな風に彼女に話しかけるのか
オレは思い出せない
彼女は今 おまえの恋人だ

オレたちは重罪室にいると既に思ってた
だがオレは裁判官じゃない おまえはオレに良くしてくれなくていいんだ
だがカウボーイ・ハットのおまえの友だち話してくれ
ヤツはなんでも二度オレに言い続けるだろ
オレはどんな風にもおまえを変えようとしなかっただろ
おまえがオレといたくなかったら ここにいなくて良かったんだ
今おまえはここに立ってる
許して忘れると言いながら オレに何が言える?
そう おまえは その辺に座って灰皿を取ってと言う 取れないのか?
おまえは彼女が持って話す度に 彼女の頬にキスするのが見える
ピラミッドの絵本とビリー・ザ・キッドの写真を持って
(なんでみんなお辞儀をしなきゃいけないんだ?)
彼女にそのこと言った方がいいよ
あんたは今 彼女の恋人だ

気にしている人はみな お城の階段を上っている
だがオレはおまえの城には登れない ハニー 
その通り オレはサンフランシスコを全然思い出せない
エルパソさえも思い出せない ハニー
忠実になる必要はなかった おまえを泣かせたくなかったんだ
おまえには なんでそんなにつらかったんだ?
オレと一緒にいたくなかったら ただ出ていくことが 
今おまえはここに立ってる おまえの指をオレの袖に入れながら
そしておまえ ともかく何をするんだ? 言えることはないのか?
彼女はもうじきバーに立っているだろう
魚の頭と銛を持って 眉につけ髭をつけて
すぐに何かやったらいい
彼女は今 おまえの恋人だ
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まずはVol.12収録のテイク6をお聴き下さい。
https://www.youtube.com/watch?v=Lry48R7Pi1I
 

それでは、今回のVol.2収録ヴァージョンをお聴き下さい。