スティーヴ・ウィンウッド率いるトラフィックを特集しております「ピックアップ・アーティスト」のコーナー。3回目の今回は、70~71年の彼らの動きを追ってみたいと思います。
ウィンウッドがエリック・クラプトンと結成したブラインド・フェイスも、クラプトンの脱退により短命に終わり、残りのメンバーでジンジャー・ベイカーズ・エア・フォースが結成されます。ところがウィンウッドはこのバンドを3か月で脱退。ウィンウッドはソロ・アルバムの制作に取り掛かります。ここに、トラフィックのオリジナル・メンバーのクリス・ウッドとジム・キャパルディが手伝いに来て、結局、3人によるトラフィック再結成アルバムとして、70年7月に発表されました。
John Barleycorn Must Die
70年発表
サイケ、ルーツ・ミュージックと展開して来た彼らですが、このアルバムでは、ジャズ、R&B、そしてブリティッシュ・トラッドと様々な音楽的要素を取り入れ、ウィンウッドの音楽的素養の深さを余すところなく押し出したアルバムで、彼らの最高傑作とも言われています。基本的に3人による演奏のみで制作されてます。
【収録曲】
① Glad
② Freedom Rider
③ Empty Pages
④ Stranger to Himself
⑤ John Barleycorn (Must Die)
⑥ Every Mother's Son
まずはオープニング・ナンバーの①"Glad"。ジャジーでノリの良いインストゥルメンタル・ナンバー。ウッドのサクソフォーンによるメロディが印象的。
https://www.youtube.com/watch?v=NBLBbNbGzBI
USのみでシングル・カットされたA面ラストの③"Empty Pages"は、後の初期ジェネシスに受け継がれたかのようなサウンド。ウィンウッドに加え、この曲ではウッドもオルガンを弾いています。
https://www.youtube.com/watch?v=5ycyIkcX7zU
そしてアルバム・タイトル・ナンバーの⑤"John Barleycorn (Must Die)"。こちらの方は"Must Die"は括弧つきとなっています。トラッドを基にウィンウッドがアレンジしたアコースティック・ナンバー。ウッドのフルートも郷愁を誘います。いつのものか分かりませんが、ライヴ映像でご覧下さい。
このアルバム発表後、ベースにブラインド・フェイスにいたリック・グレッチ、ドラムスにデレク&ザ・ドミノズにいたジム・ゴードン、パーカッションにガーナ出身のリーバッブ・クワク・バーを招き、6人編成でバンド活動を再開。さらにm71年にほんの一時期、デイヴ・メイスンまでもが復帰します。71年9月にはこのメンバーによるライヴ盤、"Welcome to the Canteen"を発表しています。
そしてメイソンを除く6人で同年9月に録音された、彼らにとって5枚目のとなるアルバムが71年11月に発表されました。
The Low Spark of High Heeled Boys
71年発表
【収録曲】
① Hidden Treasure
② The Low Spark of High Heeled Boys
③ Light Up Or Leave Me Alone
④ Rock & Roll Stew
⑤ Many a Mile to Freedom
⑥ Rainmaker
このアルバム、右上と左下が切り取られた変形六角形アルバムであることも話題になりました。メンバーも増えたことで、バンド・サウンドも広がりを見せた作品でした、前作で見せたトラッド色は後退していますが、幅広い音楽性は前作を踏襲していると思います。
なお、上記の曲順はUS盤で、UK盤は④が③の代わりにA面ラストに入り、B面は⑤③といった感じで並んでいるようです。今回はSpotifyの曲順に合わせて記載しました。USで④がシングル・カットされた影響なのでしょうか。
そのシングル・カット・ナンバー、④"Rock & Roll Stew"(&は'n'で表記されているヴァージョンもあるようです)をお聴き下さい。新加入のグレッチとゴードンの作で、キャパルディがリード・ヴォーカルをとっています。
https://www.youtube.com/watch?v=E2ubpNmSTAU
ラスト・ナンバーの⑥"Rainmaker"は8分弱のドラマティックなナンバー。ウッドのフルートとウィンウッドのしっとりとしたヴォーカルが印象的な曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=B9iZlw6MllM
バンドとして広がりを見せた時期のトラフィック。音楽性の幅広さもあって、安心して聴ける作品を2点、ご紹介させていただきました。