昨年11月に久々に復活しました「ピックアップ・アーティスト」のコーナー。今年もしっかり進めて行きたいと思います。今回は、スティーヴ・ウィンウッド率いる、トラフィックを取り上げることにしました。これまで、そんなに深く聴いて来なかったバンドですが、この歳になると、なんかとってもしっくり来ているので、この機会に全アルバム、ディスカヴァーして行きたいと思います。

スペンサー・デイヴィス・グループで活躍していたウィンウッドが、バーミンガム近郊のウォースターという街でバンド活動をしていた、ジム・キャパルディデイヴ・メイソンと、これまたバーミンガムで活動していたクリス・ウッドとともに、67年バーミンガムで結成されました。

後に、"Beggars Banquet"以降のザ・ローリング・ストーンズのアルバムをプロデュースしたことで知られるジミー・ミラーをプロデュースに迎え、67年5月にシングル・デビューを果たします。まずは、そのシングル・ナンバーをお聴き下さい。メイソンによるシタールが印象的なサイケデリックなナンバー、"Paper Sun"です。

 

https://www.youtube.com/watch?v=bEnAft8bpBA

67年と言えば、サイケデリック・ムーヴメントの全盛期。UKでは6月にはザ・ビートルズがあの名盤を、8月にはピンク・フロイドがデビュー・アルバムを、さらには12月にはストーンズですらあの問題作を発表した年。そんなサイケ・イヤーの暮れに、彼らのデビュー・アルバムが発表されました。

 

Mr. Fantsy
67年発表

【収録曲】
 ① Heaven Is in Your Mind
 ② Berkshire Poppies
 ③ House for Everyone
 ④ No Face, No Name, No Number
 ⑤ Dear Mr. Fantasy

 ⑥ Dealer
 ⑦ Utterly Simple
 ⑧ Coloured Rain
 ⑨ Hope I Never Find Me There
 ⑩ Giving to You


曲によっていろいろ楽器を持ち替えているようですが、基本的にウィンウッドがキーボードやベースを含めたギター、メイスンがシタールを含むギター系楽器、キャパルディがドラムス、ウッドがフルートやサクソフォンを担当しています。フルートの音色が聴こえてくると、プログレッシヴ・ロック風なテイストも感じます。

まずは、何やら妖しげなイントロが印象的なオープニング・ナンバー、①"Heaven Is in Your Mind"をお聴き下さい。メイソンを除く3人の曲で、ヴォーカルはウィンウッドとキャパルディが担当しています。
https://www.youtube.com/watch?v=PAIywSUAq4o

続いて、当アルバムから唯一のシングル・カットとなった、④"No Face, No Name, No Number"。美しいバラード・ナンバーで、この時期特有の浮遊感を伴ったナンバー。こちらはウィンウッドとキャバルディによる曲で、ヴォーカルはウィンウッドが担当。彼のソウルフルなヴォーカルが堪能できます。
https://www.youtube.com/watch?v=U8akIdu5YTg

A面ラストに収録されたアルバム・タイトル・ナンバー的な⑤"Dear Mr. Fantasy"。こちらもメイソン以外の3人の作で、ウィンウッドが伸びのあるヴォーカルを聴かせてくれます。Aメロの合間のリフや、間奏のギター・ソロも印象的。
https://www.youtube.com/watch?v=sS_eHdqcrM8

メイソン作でリード・ヴォーカルも自身が担当する⑦"Utterly Simple"は、デビュー・シングルで聴かせたシタールが、当アルバム唯一登場してきます。当時はラーガ・ロックと呼ばれていた部類に入るんでしょうね。
https://www.youtube.com/watch?v=lpqyxOL96QI

ラストにご紹介するのは、B面中盤に配された⑧"Coloured Rain"。個人的にはアル・クーパーが69年に発表した"I Stand Alone"でカヴァーしたヴァージョンで知った曲。調べたらエリック・バードン&ジ・アニマルズも68年のアルバム(アンディ・サマーズが参加)でカヴァーしているようです。ウィンウッドのソウルフルなヴォーカルとサイケなサウンドが見事に融合したナンバーです。こちらもメイソンを除く3人の作で、ウィンウッドがリード・ヴォーカル。



ブラック・ミュージックに強い影響を受けたウィンウッドが、サイケの時代の雰囲気の中で、見事な融合を成し遂げた作品であると思います。