さて、今年も通勤時に聴いたジャズ・アルバムをご紹介する"Friday Jazz Club"(いつ、こんな名前ついたんや?!)。昨年はだんだんじり貧になっておりましたが、今年はなんとかコンスタントに進めて行きたいと思います。

本年第1弾は、リリース60周年記念ということで、64年6月に亡くなったエリック・ドルフィーが、その死後、同年8月にブルーノートから発表された、名作との誉れも高い1枚を取り上げさせていただきました。

 

Out to Lunch! / Eric Dolphy
64年発表

こんな時計見せられても、一体、いつ帰ってくんねん!!と突っ込みたくなるジャケットですね。

28年にロスアンゼルスで生まれたドルフィーは、40年代後半から様々は楽団に参加し、全米を演奏旅行します。その後、チャールス・ミンガス、ジョン・コルトレーン、オーネット・コールマンらのアルバムに参加するとともに、60年からはリーダー・アルバムも発表しています。

このアルバムは64年2月に録音されたものですが、同年6月にミンガスのバンドのヨーロッパ・ツアーに帯同していたところ、糖尿病の発作からベルリンで亡くなりました。享年38歳。そんなわけで、このアルバムが遺作となったわけです。

共演したミュージシャンの名前を見ていると、フリー・ジャズ系が多いなと感じますが、このアルバムも、そんな斬新なスタイルを提供してくれる作品でした。フリーを通り越して、アファンギャルド・ジャズの名作とも称えられているようです。

【パーソネル】
 エリック・ドルフィー:バスクラリネット、フルート、アルト・サクソフォン
 フレディ・ハバード:トランペット
 ボビー・ハッチャーソン:ヴィヴラフォン
 リチャード・デイヴィス:ベース
 トニー・ウィリアムス:ドラムス


ドルフィーが吹くバスクラリネットは、たぶんジャズ・アルバムの中では、初めて聴く楽器でした。ハバート、ハッチャーソン、デイヴィスとは、過去に共演の経験があったそうで、気心の知れた仲間といった感じでしょうか。その中で、若干18歳でマイルス・デイヴィスのバンドに参加して注目を浴びていたウィリアムスが初共演。素晴らしいドラミングを聴かせてくれます。

【収録曲】
 ① Hat And Beard
 ② Something Sweet, Something Tender
 ③ Gazzelloni

 ④ Out to Lunch
 ⑤ Straight Up And Down


この中から3曲ほどご紹介していきましょう。①と②ではドルフィーはバスクラリネットを吹いてます。①"Hat And Beard"は、「帽子と髭」ということでルイ山田53世みたいな感じですが、セロニアス・モンクの事をイメージしているのだそうです。各楽器の奏でるインプロヴィゼイションが、緊張感に溢れゾクゾクとして来ます。ストリングスのように聞こえるのは、デイヴィスによるボウを使ったベースです。
https://www.youtube.com/watch?v=u1lWpLFGhjE


A面ラストの③"Gazzelloni"では、ドルフィーはフルートを披露。タイトルはクラッシックのフルート奏者、セヴェリーノ・ガッゼローニから取られているようです。ドルフィーが「このアルバムは全員がリーダーだ」と言ったことが頷けるような、各楽器のパフォーマンスが素晴らしいです。
https://www.youtube.com/watch?v=l61FRMjGSPA

B面の2曲でドルフィーはアルトサックスを吹いてます。アルバム・タイトルの④"Out to Lunch!"は12分を超える、当アルバム最長の曲。冒頭はテーマに沿ったオーソドックスなフレーズを聴かせますが、ソロ・パートはフリーキーな感触で進められ、緊張感に溢れる演奏が展開されています。


 

早過ぎた死が悔やまれる傑作でした。