ザ・ローリング・ストーンズのレコード・リリース順や英米盤の違いを、今一度しっかり確認していこうということで、進めております「ディスカヴァー・ストーンズ」のコーナー。昨年9月以来のアップとなります。

ダウン・トゥ・アース路線に立ち返ってから初となる、オリジナル・スタジオ・アルバムをこの時期発表しました。ここから、70年代中頃まで続く、彼らの快進撃が始まります。宿敵ビートルズは、2枚組アルバム、通称「ホワイト・アルバム」を発表した時期に当たります。

UKL-08, USL-12 Beggars Banquet

 

この年5月に発表されたシングル"Jimpin' Jack Flash"の録音と同時期から制作に入り、7月までかけて取り組んで来たアルバム。"Street Fighting Man"を8月にUSで先行シングルで発表し、12月6日に英米同時に、収録曲の違いもなく発表されたアルバム。

現在でもライヴの定番となっている曲が収録されており、ストーンズ・サウンドの方向性がようやく固まった時期とも言えましょう。彼らのサウンドのルーツである、ブルーズやR&Bをベースにしながら、前作で試みたサイケデリックなテイストも若干加味された作品です。

ジャケットは、当初、落書きだらけのトイレの写真を使う予定でしたが、レコード会社から拒否され、奇しくもビートルズと似たような、無地にバンド名とアルバム・タイトルが印刷されただけのものになりました。後のCD再発で、そちらに変更されたようです。

まずはA面の5曲。
① Sympathy for the Devil
② No Expectations
Dear Doctor
Parachute Woman
Jigsaw Puzzle


①はストーンズの代表曲の1つ。アフロ風リズムのイントロから小刻みなリズムで高揚感を煽っていく不思議なノリのナンバー。②は⑥のB面としてUSで先行してリリースされています(前回紹介済)。アコースティックなサウンドのカントリー・ブルーズの③では、ミック・ジャガーキース・リチャードのコーラスが印象的。ビートの効いた④は当時のライヴでも披露されていたようです。チャーリー・ワッツが奏でるタイトなビートが印象的な⑤でA面が締めくくられます。

ここで、①の映像をご覧下さい。


続いてB面の5曲。
⑥ Street Fighting Man
Prodigal Son
Stray Cat Blues
Factory Girl
⑩ Salt of the Earth

⑥はこの年8月にUSでシングル・リリースされた曲。こちらも彼らの代表曲の1つ。サイケなアレンジが残っているナンバーです(前回紹介済)。⑦もアコースティック・サウンドによるカントリー・ブルーズ風ナンバー。当アルバムで唯一のカヴァー曲で、オリジナルは、戦前のブルーズ・ミュージシャン、ロバート・ウィルキンスだそうです。当時のライヴでも演奏されていた⑧は、タイトなリズムで攻めて来ます。⑨もまたまたアコースティックなアレンジのアーシーなナンバー。そしてラストは、⑩は聖書からとられたフレーズをタイトルにした厳かな曲。冒頭キースがヴォーカルをとります。


さて、このアルバム発表直後の12月10日から12日にかけて、テレビ映画として企画された"Rock And Roll Circus"の撮影に取り組んでいます。ジェスロ・タル、ザ・フー、タジ・マハール、ジョン・レノンらの豪華ゲストを招いての垂涎もののライヴ映像でしたが、結局、当時はお蔵入りとなり、96年になってようやくヴィデオとCDがリリースされました。

お蔵入りとなった理由は、ミックがストーンズの演奏に満足できなかったことや、ザ・フーの演奏が素晴らし過ぎて、完全にストーンズを喰っていたことと言われています。後にこの映像観たところ、それも納得でした。とにかく、ここで見せたザ・フーの"A Quick One"は彼らのベスト・ライヴの1つではないかと思います。
(こちらについては、このシリーズが96年まで続けば、ご紹介したいと思います。)

①の映像もその映画からなんですが、最後に、この映画のラストを飾った⑩の映像を最後にご覧下さい。なんか、"Hey Jude"を意識している感じがしないでもないです。(監督も一緒ですね。)

 


ということで、ミソをつけた出来事もありましたが、68年のストーンズ、彼ら本来の道をしっかりと歩み始めました。