なかなか進まない「20世紀のロック・アルバム:シーズン2」。今月は珍しく、一月で2つめの記事アップです。今回取り上げますのは、60年代のUKロック・シーンを代表するグループ、クリームの2枚組アルバム。1枚が新曲によるスタジオ・アルバム、もう1枚がライヴ・アルバムという変則2枚組です。

 

Wheels of Fire / Cream
68年発表

エリック・クラプトンがギター、ジャック・ブルースがベース、そしてジンジャー・ベイカーがドラムスというトリオ編成。66年に結成され、その年にデビュー・アルバムを発表。ブルーズ・ロックとサイケデリック・ロックを融合させたサウンドで、UKロック・シーンの隆盛をけん引しました。

67年に発表した2ndアルバムからプロデュースを担当した、フェリックス・パパラルディが、3rdアルバムとなるこのアルバムでも引き続き担当。ディスク2のライヴ曲の選定は彼の手によるものだそうです。

サイケ色の強いスタジオ・ナンバーと、3人の火花を散らすようなパフォーマンスを堪能できるライヴ・ナンバーが一緒に楽しめ、クリームの魅力を最大限に詰め込んだ作品。まさに、邦題の「クリームの素晴らしき世界」そのものです。


① White Room
オープニングは彼らの代表曲の1つである①。サイケなナンバーですが、ラストではクラプトンのギター・ソロもたっぷり味わえます。作はブルースと詩人のピート・ブラウン。ヴォーカルもブルースですが、クラプトンのソロ・ライヴでも定番です。
https://www.youtube.com/watch?v=gXUHb_l-1HU

② Sitting on Top of the World
③ Passing the Time
④ As You Said 

②はミシシッピ・シークスの戦前の曲がオリジナルですが、ハウリン・ウルフが57年に取り上げたヴァージョンを元にしていると思われます。③はベイカーとジャズ・ミュージシャンのマイク・テイラーによる曲。ちょっと牧歌的な雰囲気です。④は再びブルースとブラウンの作。アコースティック・ギターとストリングスによるサイケな雰囲気満載のナンバー。この曲、レッド・ツェッペリンの"Friends"に影響を与えていると思いますが、どうでしょう。

⑤ Pressed Rat And Warthog
⑥ Politician

ディスク1のB面に入ります。⑤はベイカーとテイラーの作で、ベイカーのモノローグ・ヴォーカルと、パパラルディのトランペットが異彩を放ってます。タイトなリズムと、kキャッチーなリフが印象的な⑥は、ライヴでも映えます。ブルースとブラウンの作。
https://www.youtube.com/watch?v=vlvA0sMvnqo

⑦ Those Were the Days
⑧ Born Under a Bad Sign
⑨ Deserted Cities of the Heart

⑦もベイカーとテイラーの作ですが、こちらはブルースがヴォーカルをとっています。彼らにしては軽めでポップな曲です。そしてアルバート・キングのコテコテ・ブルーズ・ナンバー⑧。67年の作品で、ほぼ同時期の曲のカヴァーです。クラプトンがギターを弾きまくります。ディスク1のラストとなる⑧は、"Live Cream Volume II"のオープニングにも収録された曲。煽るようなスピード感のあるナンバー。
https://www.youtube.com/watch?v=_Vyovd0dnDY

⑩ Crossroads
ここからディスク2に入ります。まずは、ロバート・ジョンソンの⑩を、かなりテンポ・アップしてカヴァー。3人の演奏はまさにバトル。彼らの名演に1つです。
https://www.youtube.com/watch?v=jnJn8XbPeKc

⑪ Spoonful
⑪もハウリン・ウルフのナンバーで60年にシングルとして発表されています。作はウィリー・ディクソン。17分近くに及ぶ大作。デビュー・アルバムでも取り上げていました。ミディアム・テンポのナンバーですが、3人の演奏は、これまた火花を散らしています。


⑫ Traintime
⑬ Toad

ここからは最終面D面。⑫はブルース作の曲で、彼のハープを全面的にフィーチャーしたナンバー。汽笛を思わせるハープが印象的です。ラストの⑬はベイカーのドラム・ソロを大々的にフィーチャーした、これまた16分を超えるナンバー。これだけ長いドラム・ソロはなかなかないですね。


彼らのスタジオ・アルバムは、サイケデリック色が強くて、ともすればそっち方面のバンドと思われがちでしたが、このライヴでは、彼らの本領発揮といった感じ。特に彼らのライヴに触れることのできない日本では、非常にありがたい作品であったのではないでしょうか。