年初にNHK-FMで放送された、ピーター・バラカン氏がDJを務める「ウィークエンド・サンシャイン」の「ウィンター・スペシャル」。リスナーが選ぶ2020年のベスト・アルバムを中心にとりあげた特集。私が投票した、ボス、ダン・ペン、プリテンダーズの3枚も全部取り上げていただきました。

その特集の中で、これは聞き逃してしまった!しまったぁ!と思ったのが、本日、ご紹介する、ドン・ブライアントのソロとしては、3枚目となるアルバムです。



You Make Me Feel / Don Bryant
20年発表

3枚目のアルバムといっても、本人は60年代から活躍している大ベテラン。このアルバム発表時点で78歳でした。テネシー州メンフィス生まれで、地元のレコード・会社で、名門ソウル・レーベルとなるハイ・レコードからソロ・シンガーとしてレコードをリリース。

しかし、70年代は、ソングライターとしてハイに貢献し、アン・ピーブルズ(のちに、結婚)やオーティス・クレイなどに曲を提供します。私なんかは、ピープルズのダンナとして知っている名前でした。その後、ゴスペル・シンガーとして活動していたそうなのですが、20世紀に入ってほとんど活動休止していたようです。そんな彼が、16年に活動を再開し、17年に2ndアルバムを、そして、昨年、3rdアルバムを発表するに至ったようです。

このアルバムは、新曲だけでなく、彼自身の曲や彼が提供した過去の曲を再録して収録しています。バックには、ハイ・サウンドを支えた、チャーリー・ホッジス(キーボード)やハワード・グリムズ(ドラムス)も参加し、まさに往年のハイ・サウンドが再現されている、骨太のソウル・ナンバーの目白押しです。


① Your Love Is to Blame
まずは、新曲からスタート。ブライアントの現在の片腕とも言われる、ベーシストのスコット・ボマーとの共作。ホーン・セクションもフィーチャーされた分厚いサウンドに、ブライアントのパワフルなヴォーカルが応えます。
https://www.youtube.com/watch?v=5Pdsl7ijBAA

② 99 Pounds
②は71年にアン・ピ-ブルズに提供したナンバー。このアルバムでは、最もポップで印象的な曲です。タイトルはピーブルズの体重ではないかと言われているそうです。
https://www.youtube.com/watch?v=qM-w6VwGjSA

③ Is It Over
クレイの曲に同名のタイトルがあるようですが、それとは異曲。正統派のソウル・バラードで、これが21世紀の曲?と思うほど、どっぷりのR&Bナンバーです。

 

④ I Die a Little Each Day
④はこちらこそ、オーティス・クレイに提供したナンバー。クレイの72年のアルバムに収録されています。こちらも極上のR&Bナンバーです。
https://www.youtube.com/watch?v=FMNWMrbzB4M

⑤ Don't Turn Your Back on Me
⑥ Your Love Is Too Late
⑦ I'll Go Crazy

このアルバムで最も古い、65年にブライアントが発表したシングル・ナンバーの⑤。①と似たようなタイトルの⑥は新曲。とはいえ、60年代の雰囲気満載のナンバー。⑦もブライアント本人による68年のシングル・ナンバー。こちらもコテコテのソウル・バラード。

⑧ Cracked Up Over You
⑨ A Woman's Touch

⑧も古い曲で、60年代後半に他のアーティストに提供した曲。当時としては、ちょっと古めで軽めのロックンロール調ナンバーです。そして、新曲の⑨も、ブライアントの伸びのある歌唱が印象的。
https://www.youtube.com/watch?v=EfQUzmpObEg

⑩ Walk All Over God's Heaven
ラストは新曲ながらゴスペル・ナンバーと言っても良い曲。日本盤ライナーの鈴木啓志氏の弁によれば、ベテランのアルバムには良くある終わり方だそうです。(各曲紹介に記載の内容は、鈴木氏のライナーからの情報も多々含まれております。)


ソウル、R&Bというだけでなく、これらを取り入れた、ブルーズ・ロック、スワンプ・ロックに通ずるものがあり、この時代にこのようなサウンドを披露してくれたブライアント氏、敬意を表したいと思います。名盤です。