随分と間が空いてしまいました「20世紀のロックアルバム:シーズン2」。前回のテレヴィジョンが昨年5月末でしたから、約8か月ぶりのアップとなります。シーズン2を開始したのが18年9月ですから、2年半かけてやっと10枚となりました。

今回、ピックアップしたのは、サイモン&ガーファンクル(以下、S&G)で60年代に一世を風靡したポール・サイモンのソロ・キャリアの中で、最も高く評価された86年の作品をピックアップいたしました。


Graceland / Paul Simon
86年発表

S&G解散後、精力的にソロ活動を開始したサイモン。70年代には3枚のアルバムを発表し、そのいずれもが大ヒット。シングル・チャートのトップを獲得する曲も生まれました。

80年代に入ると、S&Gを再結成し、セントラル・パークでの大々的なコンサートを大成功させました。しかしながら、83年に発表したソロ・アルバムが商業的に失敗し、サイモンは初の困難に直面します。

このピンチを打開すべく、サイモンは南アフリカへ飛びます。なんでも、彼がプロデュースをしたシンガーからもらったテープを聞いて、それがどんなアーティストのものが調べたところ、ヨハネスブルグのミュージシャンのものであったとのことです。
地元のミュージシャンを集めてレコーディングを行い、ニューヨークに戻って編集、さらに、何人かのミュージシャンを南アから呼んだり、リンダ・ロンシュタットエヴァリー・ブラザーズがコーラスで参加したりなどして、アルバムを制作されました。

この結果、このアルバムは大ヒットを記録し、世界各国で1位を獲得し、グラミー賞の最優秀アルバム賞にも選ばれました。そして、何より、アフリカン・ミュージックを一躍有名にした功績が評価されました。前年に"We Are the World"が大ヒットしたことも相まって、人々の目をアフリカに向けさせた作品でした。

① The Boy in the Bubble
オープニングはアップテンポのナンバーでスタート。アコーディオンとベースの音が独特で、不思議なグルーヴを生み出しています。クレジットの名前を見ると、これらの楽器を弾いてるのは、南アのミュージシャンであろうと思われます。アルバムからの3枚目のシングルとしてカットされています。
https://www.youtube.com/watch?v=Uy5T6s25XK4
 

② Graceland
③ I Know What I Know

アルバム・タイトルの②は、メンフィスのエルヴィス・プレスリーの邸宅をタイトルにしたもの。南ア・ミュージシャンのレイ・フィリのギターが印象的です。エヴェリー・ブラザーズがコーラスで参加。アルバムから2枚目のシングルとしてカットされています。③も、小刻みなリズムから生まれるアフリカンなノリが印象的なナンバー。南アの女性バック・コーラス隊も参加しています。

④ Gumboots
⑤ Diamonds on the Soals of Her Shoes

割とはっきりした4ビート・リズムの④ですが、サイモンの節回しがこれまた独特で、新鮮な雰囲気を醸しています。⑤の冒頭のアカペラ部分は、レディスミス・ブラック・マンバーゾ(以下、LBM)という南アのコーラス・グループのサポートを受けます。曲に入っても、アフリカン・ビート満載で、実にいい雰囲気のナンバーに仕上がっています。4枚目のシングルとしてカットされています。
https://www.youtube.com/watch?v=-I_T3XvzPaM

⑥ You Can Call Me Al
LPではここからB面に入ります。アルバムから最初のシングル・カットとなった曲。こちらも南ア・ミュージシャンが中心になっていますが、エイドリアン・ブリューもギターで参加しているようです。サイモンとそっくりだと噂のコメディアン、チェビー・チェイスとの共演PVも話題になりました。


⑦ Under African Skies
⑧ Homeless
⑨ Crazy Love Vol.II

リンダ・ロンシュタットが参加した⑦は、メロディの美しい曲。アルバムから最後(5枚目)のシングル・カットとなりました。アカペラ・ナンバーの⑧は、LBMのジョセフ・シャバラバがリード・ヴォーカルをとっています。⑨も南アのミュージシャン達による、独特の雰囲気のサウンドをバックに、サイモンが淡々と歌い上げます。

⑩ That Was Your Mother
⑪ All Around the World Or the Myth of Figerprints

オルガンのイントロで始まる⑩も、小刻みなリズムで独特のグルーヴ感が生み出されています。間奏のサックスもいい感じです。ハードなビートに導かれる⑪は、このアルバムの中で最もロックっぽいリズム感を持っていますが、アフリカン・テイストも随所に感じられ、アルバムの締めくくりに相応しいナンバー。


YouTubeでは、ご紹介した3曲以外は、プレミアム会員でないと聞けないようになっており、通常より音源紹介が少なくなりました。

いずれにしても、その後、アフリカをはじめ、ワールド・ミュージックがブームになっていくことに先駆けた作品として、今後も語り継がれていくと思います。