新型コロナウィルスの感染拡大により、ミュージシャン達もその活動を制限され、今年、2020年は、皆、当初、思っていたよう活動ができなくなってしまいました。それでも、彼らの湧き出る創造力は留まるところを知らず、YouTubeを始めとしたネット上に、表現の場を見い出し、これまでなら考えられなかった成果を、様々な形であげてきた1年となりました。

グリーン・デイのビリー・ジョー・アームストロングは、ロックダウンとなった3月後半から5月にかけて、毎週月曜日に"No Fun Mondays"と称して、過去のお気に入りナンバーを演奏している様子を、YouTubeにアップしておりました。そして、先般、それらの音源をCDとして発表しました。まさに、コロナ禍の産物となった作品です。



No Fun Mondays / Billie Joe Armstrong
20年発表

私も、在宅勤務で閉塞感が溜まっていた時期に、毎週、どんな曲がアップされるのか楽しみしていました。結構、好きな曲の傾向が似ていることもあって、私がグリーン・デイのサウンドに好感を持つのも、無理はないのだなぁと改めて感じた楽しい企画でした。

今回のアルバムには14曲が収録され、ロックダウン当時には、YouTubeにアップされていなかった曲も含まれる拡大版となっております。基本的に、全ての楽器をアームストロングが担当しており、グリーン・デイのアルバムに主にエンジニアとして参加しているクリス・ダガンが参加しています。

① I Think We're Alone Now
このシリーズの第1弾となった、トニー・ジェイムズ&ザ・ションデルズの67年のナンバー。87年には女性シンガーのティファニーがカヴァーし、全米No.1になったナンバーです。

 

② War Stories
③ Manic Monday

②は70年代に活動していた、北アイルランドのパンク・バンド、ザ・スタージェッツが79年に発表したナンバー。当時のパンク・シーンを追いかけていた私でも、知らなかったバンドです。そして、バングルズの大ヒット・ナンバー③もカヴァー。作者はクリストファーと言う変名を使ったプリンス。(昨年、彼自身のヴァージョンも発表されてましたね。)YouTubeではスザンヌ・ホフスも参加していました。

 

④ Corpus Christi
⑤ That Thing You Do!
⑥ Amico

④はカリフォルニアのパンク・バンド、アヴェンジャーズの83年のアルバムに収録されていたナンバー。このバンドも知りませんでした。⑤はトム・ハンクスが監督した96年の同名映画(邦題:「すべてをあなたに」)のサウンド・トラックで、映画の中のバンド、ザ・ワンダーズがオリジナルとされています。⑥はイタリアのシンガー、ドン・バッキーの曲。63年にEPで出されているようです。オリジナルは、バート・バカラック作で、ヘレン・シャピロが62年に発表した"Keep Away from Other Girls"のようです。なんでこの曲をカヴァーしたのかはわかりません。家にレコードでもあったのでしょうか。

⑦ You Can't Put Your Arms around a Memory
⑧ Kids in America

⑦は、ニューヨーク・ドールズやハートブレイカーズ等で活躍したジョニー・サンダースの78年のソロ・アルバムからのナンバー。元祖パンクとも言えるサンダースのカヴァーは納得ですね。そして、UKのニューウェイヴ系女性シンガー、キム・ワイルドのデビュー曲をカヴァーした⑧。この曲も当時、大好きだった曲です。

 

⑨ Not That Way Anymore
⑩ That's Rock 'n' Roll
⑪ Gimme Some Truth

⑨はデッド・ボーイズの中心人物だったスティーヴ・ベイターが、ソロ名義で80年に発表したシングルをカヴァ-したもの。これはグリーン・デイのオリジナルと言われても信じてしまう感じの曲です。⑩も、ラズベリーズの中心人物だったエリック・カルメンの75年の初のソロ・アルバムに収録されていたナンバー。ラズベリーズの曲もやって欲しかったな。そして、ジョン・レノンのアルバム"Imagine"に収録されていた⑪は、パンク・アレンジで新たな息吹を吹き込まれた感じです。

 

https://www.youtube.com/watch?v=wB28KkGUg2o

⑫ Whole Wide World
⑬ Police on My Back

77年にスティッフ・レコードからシングルとして発表された⑫は、レックレス・エリックというシンガーがオリジナル。聞いたことのない人でしたが、同レコード会社のコンピにはしっかり収録されていました。そして、ザ・クラッシュでお馴染みの⑬もカヴァー。オリジナルはUKバンド、ジ・イコールズが67年に発表したものですが、ザ・クラッシュのヴァージョンでカヴァーしています。

 

⑭ A New England
ラストに収録したのは、UKのパンク系シンガー・ソングライター、ビリー・ブラッグの83年のナンバー。ラストもテンポの良いパンク・ナンバーで締めくくります。


久々にパンク魂を揺さぶられる作品でした。ストロングは72年生まれなので、70年代後半のパンクは、たぶん後追いであろうと思いますが、リアルタイムでもあまり知られていないバンドの曲をカヴァーしているあたり、結構、探求心旺盛なパンク野郎であったことを明らかにした選曲であったと思います。