昨年12月にポール・マッカートニーのアーカイヴ・シリーズの新作が発表されました。今回は、ポールがウィングスを結成してからの、最初に2枚。すなわち、「Wild Life」と「Red Rose Speedway」の再発。リマスターのうえ、デラックス版、スペシャル版と、またまたコレクターを悩ませる商品が発表されました。

その中で、73年に発表された「Red Rose Speedway」が、当初の計画では2枚組で発売されることが企画されており、それを再現したディスクをデラックス版に収録しています。私は2枚組スペシャル版を購入したのですが、そのボーナス・ディスクに旧本編の1枚アルバムに収録されていない曲が全て収録されており、iTunesのプレイリスト機能を使えば、2枚組ヴァージョンを再現できるようになっております。

そんなわけで、このアルバムの2枚組ヴァージョンを再現してみました。

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Red Rose Speedway (Double Album Version) / Paul McCartney And Wings

73年企画(18年編集)

そもそも、このアルバムは、ポールがようやくポールらしさを発揮して、ビートルズにも遜色ないヒットを飛ばし始めた時期にあたり、アルバムもUSではチャートの首位にまで上がったのですが、今一つアルバム構成がうまくなく、後のウィングスのアルバムに比べ、評価が低かった作品でした。10年から始まったアーカイヴ・シリーズの9年目の発表という位置づけを見ても、ポール自身の思い入れも低いのかなと思ってしまいます。

もともと、ポールは2枚組で発表することを主張していたのですが、レコード会社が、いくらポールとはいえ、まだ実績のないバンドでは、2枚組ではダメということで、これまで知られている1枚アルバムとなったのだそうです。ところが、今回のこの2枚組ヴァージョンでこのアルバムを改めて聴いてみると、凄く良いのですね。この形で当時発表されていたら、ウィングスの評価は、もっと早く高まっていたのではないかと感じさせます。

① Night Out
② Get on the Right Thing
③ Country Dreamer
曲のタイトルを叫ぶだけの、ほとんどインスト・ナンバーのような①は、アルバム・オープニングの前奏曲的な感じでノリ良く入って来ます。オリジナルでは3曲目に収録されていた②が、実質的なオープニング・ソングとしていい感じを出しています。そして、後に「Helen Wheels」のB面として発表される③は、ポールらしさを感じるメロディが印象的なカントリー・ナンバー。
https://www.youtube.com/watch?v=BvBpf7e_20Q

④ Big Barn Bed
⑤ My Love
オリジナル版のオープニングの2曲は、本来A面ラストの2曲だったようです。④もこの位置が納まり良いですね。大ヒット曲の⑤も、曲調的にはA②よりは、A面ラストに置いておく方がしっくり来ます。


⑥ Single Pigeon
⑦ When the Night
⑧ Seaside Woman
⑨ I LIe Around
⑩ The Mess (live)
B面冒頭の2曲⑥⑦は、オリジナルでもB面トップに収録されていました。今回初出の⑧はリンダ・マッカートニー単独名義のナンバー。カリプス風味の楽し気な曲。後に「Live And Let Die」のB面として発表された⑨も収録予定でした。さらに⑤のB面として発表された⑩も、もともとアルバムに収録される予定だったようです。
https://www.youtube.com/watch?v=om5xcVhR1c8

⑪ Best Friend (live)
⑫ Loup (1st Indian on the Moon)
⑬ Medley: Hold Me Tight/Lazy Dynamite/Hands of Love/Power Cut
ここでディスク2に入ります。⑩に続くライヴ・ナンバーの⑪は初出。ブルーズ調のロック・ナンバー。オリジナルのB面に収録されていたほとんどインスト・ナンバーといった感じの⑫をここに収録。そして、オリジナルのラストを飾った⑬は、こちらではC面ラストに収録されています。いかにもポールといったメロディアスな曲を4曲を、メドレー形式でまとめており、「Abbey Road」のB面を彷彿とさせるものがあります。
https://www.youtube.com/watch?v=3-gHWybHDK4

⑭ Mama,s Little Girl
⑮ I Would Only Smile
⑯ One MOre Kiss
⑰ Tragedy
⑱ Little Lamb Dragonfly
最終面となるD面には、当時未発表の⑭と⑮で始まります。アコースティックな感触の⑭、デニー・レイン作のカントリー・ポップ調の⑮と、こちらもお蔵入りされたのが不思議なくらいの充実ぶりです。オリジナルではA面4曲目だった、ポップなラヴ・ソング⑯も、このラスト面に置くと、かなりしっくり来ます。そして初出の⑰も、美しいメロディが印象的なナンバー。トーマス・ウェイン&ザ・デロンズ59年の曲。そして、オリジナルではA面ラストに収録された⑱も、アルアム全体のラストとして聴くと、さらに感動が高まる気がします。
https://www.youtube.com/watch?v=uy2q9eNecEM


実に全ての曲のあるべき位置が明確に意識されており、こちらの方が正規版といった印象を受けました。もともとA②の「My Love」に違和感を感じていた私は、妙に腑に落ちたアルバムでありました。