今年も残すところ、あと3日となりました。世の中では、金利がマイナスになったり、UKがEUを離脱することになり、そしてトランプ氏がアメリカ大統領になることになり、まさに「ビックリポン」の相次いだ1年でした。

 ロックの世界では、大物アーティストの訃報が相次ぎ、ブルーズやソウルの世界みたいになって来たことを強く感じた1年でした。個人的には、気に入った新人もそれなりに出て来たし、油の乗った中堅どころも力作を発表しましたし、ベテランも存在感を見せつけてくれ、充実したミュージック・ライフを過ごすことができました。ただ、従来に比べ、買いたいと思う作品が減って来たような気がしており、腹ふくれるとまでには至りませんでした。

 そんな2016年のロック・シーンを、恒例によりまして振り返ってみたいと思います。

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【新人】
 さて、毎年、懲りずに新人発掘を続けておりますが、今年もアルバム購入に至った新人が4組おりました。そのうち3組は、BBCの「Sound of 2016」にノミネートされたアーティストでした。 UKバンド、ブラッサムズはサマソニでもライヴに触れることができました。ソウル系女性シンガー、イジー・ビズは懐かしのソウル・サウンドを感じさせる洋楽ヒット風ナンバーが印象的でした。UKトラッド系女性シンガー、ビリー・マーテンは弱冠17歳ながら、心癒されるヴォイスを聞かせてくれました。
 そして、YouTubeでたまたま見つけたザ・レコード・カンパニーは、コテコテのブルーズ・ロックを現代に蘇らせてくれました。シングルやEPは既にリリースしていたようですが、今年1stアルバムを発表したようです。個人的には、今年のブライテスト・ホープと言えましょう。

それでは、そのザ・レコード・カンパニーで、「Feels So Good」です。
https://www.youtube.com/watch?v=M_z8ZCIRiic

【中堅】
 続いて、現代のロック・シーンをけん引する中堅どころの活躍を振り返りましょう。アークティック・モンキーズのアレックス・ターナーマイルズ・ケインとコラボしたユニット、ザ・ラスト・シャドウ・パペッツを8年ぶりに復活させ、2ndアルバムを発表しました。90年代から活躍しているUKバンド、トラヴィスプライマル・スクリームの新作もあれば、USのオルタナ系バンド、ピクシーズウィルコの新作もありました。いずれも、彼ららしさを感じさせる安定感のある作品でした。
 そして、中堅というより、現代ロックを代表する大物と言っていい、レッド・ホット・チリ・ペッパーズグリーン・デイウィーザーレディオヘッドらも期待の新作を披露。新たな境地を拓いたバンドもいれば、原点回帰を図ったもの、相変わらずの路線を踏襲したもの、それぞれの方向性を模索しながらの新作でした。ウィーザーとレディオヘッドは、この夏のサマソニも出演。私も初めて彼らのライヴを楽しむことができました。 

それでは、レディオヘッドで「Daydreaming」です。


【女性シンガー】
 00年代以降にデビューし、デビュー当初から高い評価を得ている高い女性シンガーが相次いで新作を発表したのも今年の特徴。寡作で有名なコリーヌ・レイリー・レイがデビュー10周年にして、やっと発表した3rdアルバムは、期待通りの素晴らしい出来でした。ここのところ音楽的方向性が迷走気味だったノラ・ジョーンズは、久々の感があるジャズ・アルバムを発表し、原点回帰を果たしました。そして現役最高の女性ソウル・シンガー、アリシア・キーズの新作も、彼女の個性を十分に発揮した作品でした。

それではコリーヌ・ベイリー・レイで「The Skies Will Break」です。
https://www.youtube.com/watch?v=c-1u2h5ScuU

【ベテラン】
 そして、そんな中堅どころに負けじと、ベテラン勢も新作を発表してきました。グラハム・ナッシュポール・サイモンの新作がありましたし、イギー・ポップは若手ミュージシャンと組んだアルバムを発表。ニール・ヤングは今年も、ライヴ・アルバムとスタジオ・アルバムの2枚
の新作を発表。サンタナは45年前の3rdアルバムを制作した時のメンバーが再集合して、新作を作り「IV」というタイトルをつけました。
 UKでは、デヴィッド・ボウイの遺作に始まり、ペット・ショップ・ボーイズヴァン・モリソンの新作、若手女性ミュージシャンと組んだジェフ・ベックの新作、そしてザ・ビートルズのハリウッド・ボウルでのライヴの再発などがありました。
 カヴァー・アルバムではザ・ローリング・ストーンズのブルーズ・カヴァーに、ボブ・ディランの2年連続となるスタンダード・カヴァー集が話題となりました。そのディランが、ノーベル文学賞を受賞したことも、その後のディランの対応を含め、たいへん話題になりました。

 そんなわけで、ノーベル賞授賞セレモニーでの、パティ・スミス「A Hard Rain,s A-Gonna Fall」をお聴きください。ジョーン・バエズならわかるが、なんでパティだったんでしょうね。
https://www.youtube.com/watch?v=941PHEJHCwU

【墓碑銘】
 冒頭に触れましたように、今年は多くのロック・ミュージシャンが亡くなりましたので、今回から新たにこの項を追加し、生前の彼らの功績を称えたいと思います。

 デヴィッド・ボウイ(1月10日、享年69歳)
 グレン・フライ(1月18日、享年67歳)
 モーリス・ホワイト(2月3日、享年74歳)
 ジョージ・マーティン(3月 8日、享年90歳)
 キース・エマーソン(3月10日、享年71歳)
 プリンス(4月21日、享年57歳)
 レオン・ラッセル(11月13日、享年74歳)
 グレッグ・レイク(12月7日、享年69歳)

 それではラストにボウイの「Starman」で追悼したいと思います。みんなお星さまになられました。R.I.P.