デヴィッド・ボウイの突然の逝去により、急遽、お送りしてきました、「ピックアップ・アーティスト」のコーナーにおけるボウイの第2集。75年の「Young Americans」から、時系列でスタジオ・オリジナル・アルバムをご紹介して参りましたが、80年の今回のアルバムを以て、第2集の最終回としたいと思います。大ヒットしたあのアルバムを前にして、たいへん恐縮ではありますが、個人的には、ボウイの音楽史はここで一度、区切るべきだと思っております。

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Scary Monsters / David Bowie

80年発表

パンクの嵐によって、UKのロック・シーンは、言わば焼野原のような状態になってしまいましたが、その中からニューウェイヴという新しいサウンドが芽を出し、やがて第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンを生み出す、その萌芽期と、80年代の始まりが見事シンクロして、時代にワクワク感が漲っていたこの時期。そんな時代の雰囲気を現すかのように、ボウイが新作を発表して来ました。

前作に、なんとなく欲求不満を感じていた私は、この作品を聴いて、ボウイの復活を感じました。サイケデリック・フォーク、グラム・ロック、ブルー・アイド・ソウル、そしてヨーロピアン・ロックと、これまでのボウイが取り組んで来たサウンドを、時代の雰囲気を取り入れた新しい感覚で統合した、ボウイ・ミュージックの集大成であると感じました。

冒頭には邦人女性による日本語のナレーションも挿入されていて、当時、仲間たちの間で、随分話題となったものでした。

① It,s No Game (No.1)
オープニングは、曲の歌詞を日本語にしたナレーションが流れて来て、ビックリさせるナンバー。ベルリン録音のアルバムのような、インダストリアルな硬質サウンドで、カオティックに盛り上がります。
https://www.youtube.com/watch?v=F_XoOe51QpM

② Up the Hill Backwards
③ Scary Monsters (And Super Creeps)
④ Ashes to Ashes
デビュー当初のフォーキーな雰囲気の②は、みんなでピックニックをしながら歌ってる感じがします。アルバム・タイトル・ナンバーの③は、この時期流行っていたニューウェイヴのボウイなりの解釈ではないかと思います。テンポの速いカオティックなサウンドが痛快です。自身のブレイク曲となった「Space Oddity」のセルフ・アンサー・ソングとも言われる④は、陰影のある心に沁みるメロディが印象的。シングル・カットもされました。


⑤ Fashion
ファンキーな⑤は、「Fame」や「Golden Years」の続編とも言える、ダンス・ナンバー。こちらもシングル・カットされています。
https://www.youtube.com/watch?v=GA27aQZCQMk

⑥ Teenage Wildlife
B面トップの⑥は、イントロのギターからして「Heroes」を彷彿とさせるナンバー。ゆったりとした雰囲気は変わりませんが、音はややチープな感じで、時代を反映しています。
https://www.youtube.com/watch?v=_myArN2GO40

⑦ Scream Like a Baby
⑧ Kingdom Come
⑨ Beacause You.re Young
⑦もベルリン時代を思わせる硬質なサウンドをバックにボウイが凛々しく歌い上げるナンバー。テレヴィジョンのトム・ヴァーラインの79年のソロ・アルバムに収録されていた曲を、なぜかボウイがカヴァーしたのが⑧。個人的には嬉しい組み合わせです。そして、B面のクライマックとも言うべき⑨は、ドラマテイックに展開するナンバーで、「Station to Station」の姉妹曲のようです。
https://www.youtube.com/watch?v=Rvi1uNrLERE

⑩ It,s No Game (No.2)
ラスト・ナンバーの⑩はオープニングのリプライズ的ナンバー。こちらは、淡々としたバンド・サウンドで、エピローグのように幕を閉じて行きます。


ヴァラエティに富んだ、カラフルな内容のアルバムで、かつ耳に馴染みやすいメロディの楽曲も多かったため、UKでは「Diamond Dogs」以来のアルバム・チャートのNo.1を獲得しました。