私がもっと若かった頃、今よりもずっと若かった頃(Help!か!)、カントリーという音楽は、アメリカの田舎もんが聴く音楽で、日本で言えば「素人民謡名人戦」(キンカンの提供でしたね)に出てくるような人達が聴いている音楽という認識でした。

UKトラッドともつながりがあり、多くのロック・ミュージシャンにも陰に陽に影響を与えていたことも知らなかった頃、パンクスの英雄であったエルヴィス・コステロが、カントリー・アルバムを発表したことは、かなり大きなショックでした。

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Almost Blue / Elvis Costello And The Attractions

81年発表

81年というと、パンクの嵐がやや落ち着いて、ニューウェイヴやら、ポスト・パンクとやらが、大きなうねりになっている時期でした。ザ・ポップ・グループや、ジョイ・ディヴィジョンと言ったところが最先端のロックをやっていると評判になっていた頃でした。

元々はパブ・ロックの系譜から出て来たコステロも、パンクの嵐の中で、攻撃的なシンガーとなって怒れる若者の代弁者として、ソロ・シンガーとしては、80年前後は最も高い人気を誇っていました。

そんなコステロがいきなりカントリー・アルバムを発表したものですから、これは一体どうなってしまったのだろうと、とっても残念な気持ちになったものです。同年に発表された前作「Trust」も、デビュー当初の勢いがずいぶん失速した感じがして、遂にコステロさんと袂を別ってしまった作品でした。

アルバムには「ウォーニング!」として「このアルバムにはカントリー&ウェスタンの音楽が入ってます。心の狭い人たちは拒否反応を起こすかも知れません」と言うステッカーが貼られており、まさに当時の私は心の狭い人間でありました。

ようやくカントリーに対する偏見もなくなり、昨年暮れに、30年以上の時を経て、このアルバムを楽しんで聴ける人間になった自分を愛おしく思います(笑)。

① Why Don,t You Love Me (Like You Used to Do)?
② Sweet Dreams
オープニングの①はハンク・ウィリアムスのナンバーですが、ちゃんと聴けば、それまでのコステロとなんの違和感もないアップテンポのご機嫌なナンバー。続く②はドン・ギブソンのカントリー・バラード。ペダル・スティール・ギターが、いかにもと言った雰囲気を醸しています。シングル・カットもされました。


③ Success
④ I,m Your Toy
⑤ Tonight the Bottle Let Me Down
ジョニー・マリンズという人のクレジットがある③は、これまたテンポはいいものの、とっても穏やかなカントリー・ナンバー。グラム・パーソンズによる④も、とっても落ち着いた雰囲気のカントリー・バラード。明るい雰囲気の⑤は、マール・ハガード66年のシングル。とっても楽しい気分にさせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=LyxVahBPYts

⑥ Brown to Blue
A面ラストは、ジョージ・ジョーンズジョニー・マティスの名がクレジットに見える、テンポの良いカントリー・ナンバー。
https://www.youtube.com/watch?v=vqp70h-bI1o

⑦ Good Year for the Roses
B面トップは、第1弾シングルとしてカットされ、全英チャートトップ10に入った、ジェリー・チェスナット作でジョージ・ジョーンズが歌ったナンバー。この今日もとっても心温まる感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=ySQlU3hussQ

⑧ Sittin, And Thinkin,
⑨ Colour of the Blues
⑩ Too Far Gone
テンポの良い⑧はチャーリー・リッチのナンバー。コステロらしい曲にアレンジされています。またまたジョージ・ジョーンズのナンバー⑨は。アルバム・タイトルに呼応するようなタイトル。⑩はビリー・シェリルというプロデューサーの作で、エミルー・ハリスのカヴァーでも有名。心に沁みる美しい曲です。

⑪ Honey Hush
⑫ How Much I,ve Lied
ロックン・ロール・シンガー、ビッグ・ジョー・ターナーの曲⑪は、このアルバムでは異色の雰囲気。そして、ラスト・ナンバー⑫は、再びパーソンズの曲。心打つメロディが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=Q52Aen73vAE


その後のコステロの音楽を聴いていると、全く違和感のない作品なのですが、当時はなかなか素直に聴けないアルバムでした。今はとっても心地よく聴かせていただきました。