なんとなく今年は休日記事として行こうかなぁと思っている、アトランティック・レコードの27年にわたるR&Bコンピのご紹介。建国記念の日を迎え、第5巻をピックアップさせていただきます。

今回は61年から65年ということで、ビートルズやボブ・ディランが登場して来る時期にあたり、ブラック・ミュージックではシュープリームスを始めとするモータウン勢も隆盛を極める時期にあたります。

アトランティックのR&Bも、レイ・チャールズをABCに獲られながらも、自らの嗅覚によって、メンフィスのスタックスを取り込んで、R&Bの新たな展開を仕掛けていった時期にも当たります。

また、この時期の曲には、ロックの世界でカヴァーされた曲も多く、馴染みのある曲が、どんどん出て来ます。


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Atlantic Rhythum & Blues 1947-1974 Disc5 (1961-1965)

85年編集

① Little Egypt (Ying-Yang) / The Coasters
② Amor / Ben E. King
③ Last Night / The Mar-Keys *
④ I,m Blue (The Gong Gong Song) / The Ikettes *
⑤ You Don,t Miss Your Water / William Bell *

⑥ I Found a Love / The Falcons *
⑦ Cry to Me / Solomon Burke
⑧ Don,t Play That Song (You Lied) / Ben E. King
⑨ Green Onions / Booker T. & The MG,s *
⑩ Up on the Roof / The Drifters

⑪ See See Rider / LaVern Baker
⑫ I (Who Have Nothing) / Ben E. King
⑬ If You Need Me / Solomon Burke
⑭ These Arms of Mine / Otis Redding *
⑮ Hello Stranger / Barbara Lewis *

⑯ On Broadway / The Drifters
⑰ Just One Look / Doris Troy *
⑱ (Do the) Mashed Potatoes / Nat Kendrick & The Swans *
⑲ Land of 1000 Dances / Chris Kenner *
⑳ Walkin, the Dog / Rufus Thomas *

(21) Release Me / Esther Phillips *
(22) Mercy, Mercy / Don Covey *
(23) Under the Boardwalk / The Drifters
(24) And I Love Him / Esther Phillips
(25) Hold What You,ve Got / Joe Tex *

(26) Mr. Pitful / Otis Redding
(27) Baby I,m Yours / Barbara Lewis

(*は当シリーズ初登場)

恒例によりまして既出アーティストから、ご紹介して参りましょう。2大コーラス・グループは、この巻にも登場して参ります。ザ・コースターズは①、1曲のみですが、ザ・ドリフターズは⑩⑯(23)の3曲を収録。(23)はザ・ローリング・ストーンズのカヴァーでもお馴染みの曲。まずは、この中から、ジェリー・ゴフィン&キャロル・キング作の⑩をお聴き下さい。この時代には珍しいPV風映像です。
⑩ Up on the Roof / The Drifters


そして、そのザ・ドリフターズから独立したベン・E・キングも前巻に引き続き登場。②⑧⑫の3曲が収録されています。第2巻から登場しているラヴァーン・ベイカーはこの巻にも⑪を収録。戦前ブルーズ・ナンバーで、このシリースでは第3巻にチャック・ウィルス・ヴァージョンも収録されています。後にジ・アニマルズがカヴァー。そして、ソウル界の大御所となるソロモン・バークも、⑦⑬が収録されています。いずれもストーンズのカヴァーでお馴染の曲。ここでは、「Out of Our Heads」に収録された⑦をお聴き下さい。ストーンズ・ヴァージョンよりは、軽い感じです。
⑦ Cry to Me / Solomon Burke
http://www.youtube.com/watch?v=Kv6jdELQPkc

R&Bの全盛時へと向かっていく時代の作品集だけあって、ここから後は、初登場アーティストが続きます。メンフィスのスタックス・スタジオと、そのハウス・ミュージシャン達が創りだすサウンドが、50年代後半から注目され始め、アトランティックもそれを積極的に活用するようになります。そんなハウス・バンドによるインスト・ナンバーも録音され、発表されるようになります。ザ・マーキーズの③がその走り。このバンドにいたスティーヴ・クロッパー、同じスタジオのキーボード・プレイヤー、ブッカー・T・ジンズらとジャム・セッションを行いブッカー・T&ザ・MGズ発表されたのが⑨。ポップ・チャートで3位にまで上がるヒットとなったそうです。
⑨ Green Onions / Booker T. & The MG,s
http://www.youtube.com/watch?v=L3MWu6LhWQ8

アイク&ティナ・ターナーのバック・コーラスを努める3人、ジ・アイケッツの④が、なぜかアトランティックから発売されていました。後に人気シンガーとなるエディ・フロイドやウィルソン・ピケットが在籍したザ・ファルコンズも⑥で初登場。ジェイムズ・ブラウンのバック・バンドが、ナット・ケンドリックス&ザ・スワンズという名義で発表した⑱も収録。JBが自らのバンドとレコーディングすることを当時在籍していたレコード会社が認めないことに抗議する形で、アトランティックから発表されたそうです。

40年代後半にリトル・エスターとして脚光を浴びた女性シンガー、エスター・フィリップスは、カントリー・ナンバー(21)とビートルズ・ナンバー(24)を収録。デトロイト出身の女性シンガー、バーバラ・ルイスは、ほんわかとしたティーン・ポップ風のナンバー⑮(27)の2曲を収録。ソロモン・バークのバック・シンガーだったドリス・トロイのヒット曲⑰も収録。リンダ・ロンシュタットのカヴァーでお馴染のナンバー。
⑰ Just One Look / Doris Troy
http://www.youtube.com/watch?v=xaL-IqGW9Y4

メンフィス出身の男性シンガー、ウィリアム・ベルは、デビュー・シングルにして代表曲⑤を収録。ルイジアナ州出身のクリス・ケナーは、後にウィルソン・ピケットによりヒットする⑲を収録。それほど活動歴はないものの、何曲がソウル史に残る名曲を歌ったドン・コヴェイは、ストーンズのカヴァーでお馴染の(22)を収録。アトランィックには珍しくマッスル・ショールズで活動していた男性シンガー、ジョー・テックスは (25)を収録。既に娘が前巻で登場した、スタックス草創期の人気シンガー、ルーファス・トーマスが、ここに来てようやく⑳で登場。エアロスミスのカヴァーで知られる曲で、当時の邦題は「犬も歩けば」だったそうです。(ハァ~?)

そして、ラストにご紹介しますのは、アトランティックのみならず、60年代を代表するR&Bシンガー、オーティス・レディングです。デビュー曲の⑭と65年のシングル(26)が、ここでは収録されています。レイ・チャールズと入れ替わるように現れたこのシンガーの存在は、このレーベルに歴史的価値を与えたと思います。
⑭ These Arms of Mine / Otis Redding
http://www.youtube.com/watch?v=jqVrNK4uiB4


ストーンズのカヴァー曲が3曲も収録されており、当時の彼らがどれだけ、アトランティックのR&Bに精通していたのか、良くわかると思います。真面目にソウル、ブルーズに取り組んできた彼らのセンスが光ります。