アトランティック・レコードと言えば、70年代前半にロックを聴いていた私のような世代にとっては、レッド・ツェッペリンやイエスなどの名盤を配給していたレコード会社というイメージが強いですね。

レコードのレーベルになっている、緑と赤の半円形を見ていると、未知のサウンドにワクワクして聴き込んで行った、あの時の気持ちが蘇って来ます。

ところが、大人になってロック以外の音楽を聴くようになると、ロックのアトランティックというのは、その一面、しかもマイナーな一面でしかないことを知らされます。初期のレイ・チャールズ、オーティス・レディング、アレサ・フランクリン、ロバータ・フラックといった、ソウルの大物の数多くが、このレコード会社から世に出ていったことを知り、それまで考えていた以上に、凄いレコード会社なのだと思い知った次第です。

そんなアトランティックのソウル、というかリズム&ブルーズの名曲を集めたコンピレーションが私が20代の時に発表されました。2枚組LP7セットという物凄いヴォリューム。そのうち、レイ・チャールズとか、ドリフターズの全盛期を収めたVol.4のみ持っていたのですが(記事はこちら)、結局その1枚のみになってました。CD化もされてて、何度も全部揃えようと思っていたのですが、なんとなく機会を失しておりました。

その全集が今年、新たに再発されました。CDでは8枚セットになっていたのですが、今回は鈴木啓志氏の監修で、さらにCD2枚が追加された拡張盤。パッケージ・デザインもノスタルジックな、素晴らしいセットに生まれ変わりました。またまた宝物が増えました。

そんなわけで、今後、10回にわたって、このコンピをご紹介していきたいと思います。

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Atlantic Rhythum & Blues 1947-1974 Disc1(1947-1952)

85年編集

① Lowe Groovin, / Joe Morris
② That Old Black Magic / Tiny Grimes
③ Annie Laurie / Tiny Grimes
④ Midnight Special / Tiny Grimes
⑤ The Applejack / Joe Morris

⑥ Cole Slaw / Frank Culley
⑦ Drinkin, Wine Spo-De-O-Dee / Stick McGhee
⑧ So Long / Ruth Brown
⑨ I,ll Get Along Somewhere / Ruth Brown
⑩ Hey Little Girl / Professor Longhair

⑪ Mardi Gras in New Orleans / Professor Longhair
⑫ Tee-Nah-Nah / Harry Van Walls
⑬ Danny Boy / Al Hibbler
⑭ Anytime, Anyplace, Anywhere / Joe Morris
⑮ Teardrops from My Eyes / Ruth Brown

⑯ One Monkey Don,t Stop No Show / Stick McGeeh
⑰ Don,t You Know I Love You / The Clovers
⑱ Shouldn,t I Know / The Cardinals
⑲ The Chill Is On / Joe Turner
⑳ Chains of Love / Joe Turner

(21) Fool Fool Fool / The Clovers
(22) One Mint Julep / The Clovers
(23) Wheel of Fortune / The Cardinals
(24) Sweet Sixteen / Joe Turner
(25) 5-10-15 Hours / Ruth Brown
(26) Gator,s Groove / Willis Jackson

47年に設立されたアトランティックレコードは、48年1月に初のレコードをリリースします。最初のリリースの中には、①⑤⑭のジョー・モリスや②③④のスティック・マッギーの作品が含まれておりました。当時は、完全にスウィング・ジャズで、まだR&Bのスタイルは確立されておりませんでした。古畑任三郎のテーマみたいな⑤をどうぞ。
⑤ The Applejack / Joe Morris
http://www.youtube.com/watch?v=1kOe3GyKNto

49年以降の⑦⑯のスティック・マッギーや、⑧⑨⑮(25)の女性シンガー、ルース・ブラウン辺りからヴォーカル入りナンバーが出て来るようになります。この辺がR&Bのスタート地点と考えると良いのでしょうか。
⑧ So Long / Ruth Brown


ニュー・オーリンズの顔役、プロフェッサー・ロングヘアーも、50年に⑩⑪をアトランティックからリリースしていたようです。ファッツ・ドミノやドクター・ジョンらに大きな影響を与えたアーティスト。
⑪ Mardi Gras in New Orleans / Professor Longhair
http://www.youtube.com/watch?v=LR82f0GJgXg

51年になると、コーラス・グループも複数登場して来ます。⑰(22)(23)のザ・クローヴァーズや、⑱(23)のザ・カーディナルズで、彼らもR&Bコラース・グループの原型を型づくったと言えましょう。クローヴァーズの代表作と言われている(22)をお聴き下さい。
(22) One Mint Julep / The Clovers
http://www.youtube.com/watch?v=2rNoR8jnPRU

当時としては新しい感覚の音楽が、一般に大きく知られるには、やはりスターの存在は欠かせません。ブルーズ・シンガーの間では神様のような存在だった⑲⑳(24)ジョー・ターナーが51年にアトランティックと契約。チャートのトップ5にまであがるヒットが飛び出します。そんなターナーの名演(24)をラストにお聴き下さい。
(24) Sweet Sixteen / Joe Turner
http://www.youtube.com/watch?v=mNHQD79gkEc


ということで、まだ私の親ですら10代だった頃の音楽をご紹介させていただきました。ルース・ブラウンと長髪教授以外は、全く知らない名前ばかりでしたが、栄光の歴史の序章という感じがいたします。次回からはもう少しメジャーどころが登場する予定です。