長らく続けて来ましたこのコーナー、遂に昭和30年代に入ってきてしまいました。ロックの歴史もほぼ源流にまで遡ってきたことになります。今の中国みたいに日本に勢いがあった1964年を振り返ってみましょう。

この年はなんと言っても、東京オリンピックが開催されたことが最大のニュースでしょう。東海道新幹線や東京モノレールも開業。ニューオータニや東京プリンスなどの大型ホテルも相次いで開業しています。戦後を脱し、高度成長期をひた走る日本の勢いが最高潮に達した感じがいたします。日本人の海外観光渡航が自由化され、OECD(経済協力開発機構)にも正式加盟しています。

政治面では、オリンピック閉会式の翌日に池田首相が退陣を表明。11月には佐藤栄作氏が総理に就任し、首相交代の年でもありました。公明党が正式発足したのもこの年だそうです。

アメリカではジョンソン大統領が再選されています。また、中東ではPLO(パレスチナ解放機構)が設立されています。

コンピューター関係もどんどん発展し、IBMが汎用コンピュータを発表。BASIC言語(これも死語ですね)のコンピューター・プログラムが初めて実行されてます。シャープ(当時は早川電機)がトランジスタを、ソニーがダイオードを用いた電子式卓上計算機を完成したと発表しています。

この他、日本武道館が開館したのがこの年。一方、アメリカではニューヨークにシェイ・スタジアムが開業しています。どちらもあのバンドが演奏した場所です。

「平凡パンチ」が創刊され、ライオン歯磨きが「デンター」を発売したのもこの年。アニメでは「サイボーグ009」や「オバケのQ太郎」が放送を開始しています。

プロ野球は、阪神タイガースがセ・リーグを制覇するも、大阪対決となった日本シリーズは、南海ホークスが制しています。大相撲は大鵬の時代で、1年に4回優勝しています。競馬ではシンザンが三冠馬達成。

映画では「マイ・フェア・レディ」「007ゴールドフィンガー」、そして「東京オリンピック」の記録映画などが公開されています。歌謡界では、日本レコード大賞は青山和子の「愛と死をみつめて」、新人賞は西郷輝彦と都はるみが獲得。美空ひばりの「柔」、ザ・ピーナッツの「恋のバカンス」、ペギー葉山の「学生時代」などがヒットしております。

US音楽界では、なんと言ってもザ・ビートルズのアメリカ上陸が最大のニュースでしょう。1月発表された「Meet The Beatles!」を引っさげて、2月7日にケネディ空港に降り立ち、9日の「エド・サリヴァン・ショー」に出演。一気にUSでのブレイクを果たしました。

そんなわけで、ビルボードの年間チャートのNo.1はザ・ビートルズの「I Wanna Hold Your Hand」。第7回グラミー賞では、最優秀レコードがアストラッド・ジルベルト&スタン・ゲッツの「The Girl from Ipanema (イパネマの娘)」に、最優秀アルバムが同アーティストの「Getz/Gilberto」に、最優秀楽曲はルイ・アームストロングの「Hello, Dolly!」に、そして最優秀新人賞はザ・ビートルズに、それぞれ贈られています。


そんな64年に発表されたアルバムをご紹介していきましょう。(ずいぶん少なくなって来ました。)


The Kinks (1st) (64年発表)

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ザ・ビートルズで騒いでるUSを横目に、UKの中では、その後のブリティッシュ・インヴェイジョンを担う、いわゆるビート・バンドといった感じの新人が、どんどん出てきました。
中でも、このザ・キンクスはその筆頭格。今やロック・リフの代名詞とも言える「グ・ガ・ガ・グガ!」で、大ブレイクを果たし、その後もUKを代表するバンドとして長く活動しておりました。
このデビュー・アルバム、彼らにしてはカヴァー曲も多いのですが、レイ・ディヴィスのコンポーザーとしての能力も十分に発揮されています。まだまだ真っ黒けだったストーンズよりも、ロックらしさを感じる作品です。

それでは、泣く子も黙る「You Really Got Me」をお聴き下さい。



Where Did Our Love Go / The Supremes (64年発表)

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さて、ビートルズに対抗できたUSアーティストというと、ビーチ・ボーイズや、モンキーズが思い出されますが、実際にチャート・アクションなどを見てますと、このモータウンの三人娘、ザ・シュープリームスが筆頭であったように感じます。
ビートルズがUSチャートに現れて後の2~3年、ビートルズとシュープリームスが入れ替わるようにチャート・トップに立っている時期がありました。(時々、隙間を縫ってトップになる曲もありましたが。)
そんな彼女達の初の全米No.1ヒットをタイトルにした2ndアルバムです。
今でこそ、モータウンを代表するグループの「1つ」といった感じですが、当時は断トツの人気があったようです。白人にも受けるポップなメロディとサウンドが、広く受け入れられたのだと思います。
私個人的には、高校・大学時代はそれほどソウルは聴いてなかったのですが、このグループだけは好きでした。

それでは、2曲目のNo.1ヒットとなった「Baby Love」をお聴き下さい。(クリックしてご覧下さい。)



この他、この年発表されたアルバムで、私が持っているものは。。。

【ロック】
 A Hard Day's Night / The Beatles (20世紀のロックアルバム#40
 Beatles for Sale / The Beatles (20世紀のロックアルバム#22
 The Times They Are A-Changin' / Bob Dylan
 Another Side of Bob Dylan / Bob Dylan
 The Even Dozen Jug Band (1st)
 The Rolling Stones (1st) (記事はこちら
 12x5 / The Rolling Stones

【ジャズ】
 Out of Lunch / Eric Dolphy

もうほとんど、大物だけ!って感じになりました。


Wednesday Morning, 3 AM / Simon & Garfunkel (64年発表)

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この年デビューした、もう1組の大物ってことで、サイモン&ガーファンクルのデビュー・アルバムを最後にとりあげました。ただ、このアルバムは全く売れず、寂しいデビューとなったわけですが、後に彼らのブレイクのきっかけとなる「The Sound of Silence」のオリジナル・ヴァージョンも、既に収録されておりました。
ディランのデビュー・アルバムもオリジナルが少なかったですが、ソング・ライターとして力のあるポール・サイモンを擁しながら、こちらもオリジナル曲は全12曲中、半分の6曲。歌い手と作り手が完全に分業制となっていた当時なら仕方ないのかも知れませんが、我々の感覚では、アルバムの重要性を低く感じてしまうのは否めません。
しかし、さすがデュオとしての彼らの魅力は十分に楽しめる内容で、アート・ガーファンクルの高音と、サイモンのつぶやくような歌声が、見事にマッチしています。

それでは、この中から、なんとこの年ボブ・ディランが発表した曲「The Times They Are A-Changin,」を取り上げていますので、お聴き下さい。