断片的には気に入っているんですが、なんだか怖くてその世界にどっぷりハマることなく今に至っているアーティストってのがたまにいます。本日ピックアップいたしましたシド・バレットも、私にとってはそんな1人です。

ピンク・フロイドのオリジナル・メンバーで、デビュー当時のリーダーかつメイン・ソングライターかつリード・ヴォーカリストであった彼。当時のピンク・フロイドは実質的に彼のバンドでした。ところが、ストレスや麻薬中毒のため精神に変容をきたし、1枚のアルバムと数枚のシングルをフロイドを残し脱退。その後70年にソロ・アルバムを2枚発表しますが、70年代半ば以降は、完全に狂気の世界の住人となってしまいました。

2枚のソロ・アルバムはそういった狂気性を感じるものであったため、これまで購入・聴取をためらっておりましたが、そんな彼の残した作品をリマスターしたベスト・アルバムが発表されましたので、これを機会に彼の世界に誘われてみることにいたしました。

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An Introduction to Syd Barrett

10年編集

フロイドのメンバーの中でバレットの最も親しかったのは、彼の後釜としてフロイドに加入したデイヴ・ギルモアだったようで、今回のベストでも5曲の新ミックス(うち1曲はリミックスと表示されてます)に携わっているようです。

また、フロイドの諸作品のジャケットを飾ったヒプノシスのメンバー、ストーム・ソーガソン(クレジットはストーム・スタジオ名義)によるカヴァー・デザインも購買意欲を掻き立てますね。

さて、まずはピンク・フロイド時代の作品から入って行きます。

① Arnold Layne
② See Emily Play
③ Apples And Oranges (Stereo Version)
 まずはオリジナル・アルバムに収録されていないシングル曲を3曲。①は記念すべきフロイドのデビュー曲。続く2ndシングルの②はUKでトップ10入りするヒットとなりました。デビュー・アルバム発表後にリリースされた3rdシングルの③は、ステレオ・ヴァージョンで収録されています。いずれも、サイケデリックな彩りのサウンドと、バレットの才能溢れるソングライティングを堪能できるナンバーです。

 ①のPVご覧下さい。
 

 ②の映像はこちら。
 http://www.youtube.com/watch?v=wH3pqYwDBdQ

④ Matilda Mother (2010Mix)
⑤ Chapter 24
⑥ Bike
 続いてフロイドのデビュー・アルバム「The Piper at the Gates of Dawn」(67年発表)から3曲。④は新ミックス。後半のインスト部分が1分程長く収録されています。⑤も⑥も、バレットの奇妙な音世界が展開される独特のナンバー。演奏中心の曲でなく、バレットの魅力が明確に表れる歌中心の曲を敢て選曲しているような気がします。

 ⑥の映像です。
 http://www.youtube.com/watch?v=mBCctL88dRk

⑦ Terrapin
⑧ Love You
⑨ Dark Globe
⑩ Here I Go (2010 Remix)
⑪ Octopus (2010 Mix)
⑫ She Took a Long Cool Look (2010 Mix)
⑬ If It,s in You
 バレットの1stソロ・アルバム「The Madcap Laughs」(70年発表)からは7曲が収録されています。全13曲ですから半分以上が収録されました。基本的にはバレットによるアコギ弾き語りナンバーばかりですが、バレットの声で歌われる不思議な旋律は、それだけでサイケデリックな雰囲気を醸し出してしまいます。この妙にためのあるリズム感も実に心地よいですね。3曲が新ミックスですが、リミックスと表示されている⑩にはギルモアのベースが付け加えられています。

 この中から、⑪の映像をご覧下さい。
 http://www.youtube.com/watch?v=pL36NuJJLIQ&feature=related

⑭ Baby Lemonade
⑮ Dominoes (2010 Mix)
⑯ Gigolo Aunt
⑰ Effervescing Elephant
 2ndソロの「Barrett」からは4曲。こちらはギルモアとリチャード・ライトのプロデュースによるもので、ベース、ドラム、キーボードが入ったバンド編成による曲が多いようです。こちらも演奏・サウンドはそれほどでもないんですが、バレットのヴォーカルにより、1st同様、サイケな雰囲気に溢れています。バンド・サウンドのためか、サイケデリック・ロックとしても十分に楽しめる曲が並んでいます。

 この中からは、アルバム・オープニング・ナンバー、⑭の映像をご覧下さい。冒頭のギター聴いてると、ギタリストとしても相当の腕前だったのだなぁと思います。
 http://www.youtube.com/watch?v=_HK6-vE3jHk&feature=related

⑱ Bob Dylan Blues
 そしてラスト・アンバーは01年のベスト・アルバムで初めて陽の目をみた、ボブ・ディランに触発されバレットは63年に書いたとされる⑱。ギターのストロークやメロディ・ラインなど、いかにもディランらしいナンバーです。バレットもディランのファンだったんですね。
 http://www.youtube.com/watch?v=Hql7YfEDlSI&feature=related

当時のバレットのソロ・アルバムを支配していると思ってた毒々しさや閉塞感を、今回のベストではあまり感じなかったのですが、それは、リマスターの所為なのか、キチガイのレコードと思ってた当時の私の偏見の所為だったのか、定かではありません。

いずれにしても、シド・バレットをかなり身近に感じることのできる、なかなか良いコンピでした。