21世紀に入ってから素晴らしい作品を発表し続けている、元ビーチ・ボーイズのリーダーにして、ソングタイターだったブライアン・ウィルソン。08年に発表された作品では、自らの歴史を振り返る自伝的作品で、深い感動を与えてくれましたが、今回はなんと、自らの、いやいやある程度の年代のアメリカ人にとっては、音楽の原体験的な数々のスタンダード・ナンバーの作者、ジョージ・ガーシュインの作品ばかりからなる新作を発表いたしました。

日本で言えば「加山雄三、古賀メロディーを歌う」といった感じなんでしょうか、アメリカ人の心に訴えかける作品であるような気がいたします。

イメージ 1

Brian Wilson Reimagines Gershwin / Brian Wilson

10年発表

「Reimagines」という表現がとってもいいですね。素材は間違いなくガーシュインの曲で、私みたいなもんでも耳にしたことのある曲が数多く取り上げられているのですが、美しいコーラスのおかげなのか、浮遊感のあるバンド演奏のためなのか、ウィルソンの新曲と言ってもおかしくないほど、ぴったりとハマってます。多少、ジャジーな感じは残りますが、ウィルソン・ファンにとっては、これまでのアルバムとなんら変わることのない、彼らしさを感じるアルバムで、ある意味、ホッとしております。

私は、たぶん、ジャニス・ジョプリンの「Summertime」が、最初に聴いたガーシュイン作品であると思いますが、こうやって彼の作品を聴いていると、映画やBGMなどで、彼の曲に触れていたのではないかなぁと思うくらい、昔から慣れ親しんできたような雰囲気のある曲も多かったです。

私、恥ずかしながら、ガーシュインの存在は、このブログを始めるようになって、borninさんや、駅前さんに教えてもらって知ったくらい無知でありました。全く意識して来なかったアーティストではありますが、ここで取り上げられている曲の多くは、聴いたことあるなぁと思われる曲でした。

まずは、字幕なしですが、このアルバムのトレイラーをご覧下さい。



① Rhapsody in Blue / Intro
② The Like in I Love You
 ①はウィルソンが最初に経験した音楽的記憶であり、一生音楽を愛するきっかけになった曲とのこと。アカペラのコーラスでアルバムは幕を開けます。そして、この企画の1つの目玉である、ガーシュインの未完の作品2曲をウィルソンが完成させるという試みの1曲目、②は時空を超えてアメリカン・ポップ・ミュージックの2つの大きな才能が邂逅する素晴らしい瞬間を味わえます。
http://www.youtube.com/watch?v=a6P_FNQyDSY

③ Summertime
 ③から⑥は有名曲をメドレーでやってみましたって感じ。まずは、たくさんのシンガーにカヴァーされてる「Summertime」から始まります。
http://www.youtube.com/watch?v=Ud2o38cJtDY&feature=related

④ I Loves You, Porgy
⑤ I Got Plenty O, Nuttin,
⑥ It Ain,t Necessarily So
 ④も有名なナンバーですね。間奏のサックスも実にいい雰囲気です。インストの⑤を聴いてると、「Pet Sounds」や「Smile」を思い出すようなアレンジがなされています。⑥はレイジーな感じのナンバー。ここでは④をお聴き下さい。
http://www.youtube.com/watch?v=zbqQ4jSygx0&feature=related

⑦ ,S Wonderful
⑧ They Can,t Take That Away from Me
⑨ Love Is Here to Stay
⑩ I,ve Got a Crush on You
 ⑦はちょっとボサノバっぽいアレンジになってますね。⑧は初期のビーチ・ボーイズを彷彿とさせるナンバー。流麗なストリングスに導かれる⑨は実に美しくお洒落です。オールディーズ・ナンバー風のアレンジがなされた⑩も、実に親しみ深いナンバーに仕上がってますね。
http://www.youtube.com/watch?v=QAgD3Z_uQeI&feature=related

⑪ I Got Rhythm
⑫ Someone to Watch Over Me
⑬ Nothing But Love
⑭ Rhapsody in Blue / Reprise
 実に楽しくて明るい雰囲気の⑪、前奏にストリングスを使った美しいバラード・ナンバーの⑫と続き、ロックン・ロール調の⑬はもう1曲のガーシュイン未完ナンバー。②も⑬も、まるでウィルソンの曲という感じなんですが、ガーシュインに対するリスペクトがひしひしと感じられます。ラスト⑭は①のリプライズで、ウィルソンらしいコーラスで幕を閉じていきます。


正直、ガーシュインの音楽ってのは、オリジナルよりも、60年代以降のアーティストがカヴァーしたものを、ポツポツと聞いているだけで、半分以上は知らない、または聞いたことあるけど意識していない曲ばかりでした。

最初、ウィルソンがガーシュインのカヴァー集と出すというので、私なんかが楽しめる作品なのかなぁと不安になっておりましたが、さすがの出来でした。ウィルソンの作品として十分に満足できる1枚でした。