基本的にインストゥルメンタルの長尺ナンバーというのは、ハードロックやプログレを聴いていた時から苦手でありまして、やはり歌がないとダメな人間でありました。

そんなわけで、70年代中頃から流行っていたクロスオーヴァー(今で言うフュージョン)というのも、一応知識としては知っていたものの、なんか違和感を感じるものであり、そんな反動でパンクロックが出てきた時に、思わずそちらの方に飛びついてしまったものです。

その流れで、クロスオーヴァーの源流にあったジャズという音楽に対しても、それほど好意的な印象は持ってなくて、ウェザー・リポートやスタンリー・クラークと言った当時の新感覚的な作品を発表していたアーティスト以外については、聴きもせず毛嫌いしておりました。

それでも、このブログを始めてから、友人のみなさんから教えていただいたり、スウィング・ジャーナルの編集長だった中山康樹さんの著作をいろいろ読んでいるうちに、ジャズに対する認識が少しずつ変わって来て、一部のアーティストのアルバムを聴いてるうちに、そのサウンドの持つスリリングかつ革新的な世界に、徐々に惹かれていくようになりました。

そんなわけで、「50になったらジャズ」と、昔から自分の中で思っていた線引きに従い、このブログでも新たに「ジャズ日記」を開設して、ジャズのアルバムも取り上げて行きたいと思います。

ロック評論は中学生の時から目に触れているので、なんとかそれなりの形をつくって今日に至っておりますが、ジャズ評論は全くの素人でありまして、通の方には中身の薄い記事になりますが、ロック屋の視線によるジャズ・アルバムの感想といった感じで、軽いたわ言と読み流していただければ幸いです。


前置きが長くなってしまいました。過去のジャズ関連の記事もこの書庫に移動いたしますが、開設第一弾を記念して取り上げましたのは、モード・ジャズの金字塔と言われるこのアルバムです。

イメージ 1

Kind of Blue / Miles Davis

59年発表

やはりロックの世界でビートルズを外せないのと同様、ジャズの世界ではこのマイルス・デイヴィスを外してジャズは語れないと思います。先述の中山氏も「ジャズを理解したかったら、マイルスのアルバムを100枚聞けば良い」という極論を仰るくらい、ジャズ史において、最も重要なアーティストであると思います。

私もマイルスに関しては、まだ10枚くらいしか聴いてないのですが、彼の最初のリーダー・アルバムと言われる50年の「Birth of the Cool」から72年の「On the Corner」までの重要アルバムを所々聴いてますと、それだけで、ジャズ史の変遷を目の当たりにできる感じがしますね。

そんな中でも、彼の現代における評価を最大限に導いていると思われるのがこのアルバム。ビー・バップハード・バップも正直ようわかりませんが、そういった和音主体の演奏から自由になり、いわゆる旋律(モード)主体の演奏に切り替わった歴史的にも重要なアルバムと言われているのがこの作品。

ロック屋の視点(聴点?)からは、なんと言っても69年の「Bitches Brew」が彼の最高傑作と思っておりますが、ジャズ・アーティストとしては、これを最高作に掲げる方も多いのではないかと思います。

中身の音楽そのものも勿論ですが、とにかくこのアルバムに参加したメンバーが凄い!

マイルス・デイヴィス:トランペット
ジョン・コルトレーン:テナー・サックス
キャノンボール・アダレイ:アルト・サックス(③除く)
ビル・エヴァンス:ピアノ(②除く)
ポール・チェンバース:ダブル・ベース
ジミー・コブ:ドラムス
ウィントン・ケリー:ピアノ(②のみ)

ジャズ史に残るアーティストが勢ぞろい。ロックの世界で言えば、ジョン・レノンとミック・ジャガーとブライアン・ウィルソンとボブ・ディランが共演したような、当時のシーンの中心にいた人たちです。

① So What
 このアルバム以降もマイルスのライヴなどではしょっちゅう登場する、マイルスの代表的ナンバーの一つ。オープニングのチェンバースのベース・ラインが実にクール。マイルス、コルトレーン、アダレイと回すソロも最高に格好いいですね。マイルスとコルトレーンが登場する映像がありました。


② Freddie Freeloader
 この曲のみピアノはウィントン・ケリー。冒頭でいかしたピアノソロを聴かせてくれます。もちろん、これに続き金管3人のソロ回しもゆったりとしたテンポで満喫できるナンバー。ただでマイルスらの演奏を見ていたフレディという人にちなんでつけられたタイトルだそうです。

③ Blue in Green
 そして、実に美しいバラード・ナンバーのこの曲がA面ラストを飾ります。エヴァンスのピアノに乗ってくる、マイルスの伸びのあるペットが心を揺さぶるナンバー。
http://www.youtube.com/watch?v=TNsAZcmbmbo&feature=search

④ All Blues
 オープニングのざわざわしたピアノに導かれ、スリリングな旋律を奏でる金管類で、なんとも言えない焦燥感を煽るような冒頭部。マイルスのメロディは、このアルバムに続く「Sketches of Spain」にも通ずるものがあります。ブルーズのスタイルをとったこの曲、中間部からはマイルスの伸びのあるソロが楽します。

⑤ Flamenco Sketches
 ③と並ぶバラードで、実に穏やかなクロージングへと導いてくれます。これも③と同様エヴァンスとの共作。3つの金管楽器の良さを存分に活かしているのではないかと思われる、美しくも物悲しいソロが圧巻です。
http://www.youtube.com/watch?v=Tpvpyb-PXM0&feature=search


いわゆるモード・ジャズを確立した歴史的意義と、この素晴らしい布陣、そしてもちろん、このアルバムの楽曲それぞれの素晴らしさのためでしょか、ウィキペディアによれば、マイルスではもちろん、全ジャズ・アルバムの中で、最も売れた作品(USで400万枚以上)の記録を持っているそうです。