毎月の「20世紀のロックソング」の投票の方は順調に進めさせていただき、みなさんに選んでいただいた「20世紀のロックソング」が、おかげさまで、どんどん増やさせていただいております。38回の投票まで終わっておりますので、一部の重複はありますが、既に190曲がエントリーされております。

一方、その「20世紀のロックソング」をご紹介するこの書庫、2年以上もの間、開店休業状態が続いておりました。が、最近、アルバム1枚のレビューがだんだん疲れてきたので、こういう1曲だけの記事も、たまにやって行かないとな!ってことで、突然の復活です。(どれだけ続くかわかりませんが。)

まずは、この投票の記念すべき第1回、ビートルズ編で見事1位を獲得しましたこの曲を取り上げました。

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Let It Be / The Beatles

70年発表

20世紀最大の音楽集団、ザ・ビートルズの最後期の作品です。険悪な雰囲気のバンドの姿を、カメラが撮り続けたことで、余計、険悪な雰囲気になり、結果、バンドの歴史上、最も悪い状態を記録に残してしまった彼らの(リリース順から言えば)ラスト・アルバムであり、ラスト映画となった作品のタイトル曲。UKでは彼らのラスト・シングルでした。

ただ、録音は「Abbey Road」よりも半年ほど先に録音されていたものがほとんどで、今ではこの作品を彼らのラストと捉えられることは、ほとんどなくなりました。

そんな状態でも、その残した楽曲の素晴らしさには目を見張るばかりで、ビートルズならば、クズでも宝ということを、皮肉にも世に知らしめた作品でもありました。

その中でも、この曲はテレビCMにも使われたこともあって、当時の小学校高学年や中学のガキが、最も知っているビートルズ・ソングになりました。第1回の投票で1位を獲ったのも、そんなことが影響しているのだと思います。

ただ、今、聴くと、メロディや歌詞が、明らかにゴスペルを意識している事がわかりますし、そもそもこの曲は、作者であるポール・マッカートニーが黒人女性ソウル・シンガー、アリーサ・フランクリンに歌ってもらうために作った曲であると、後年になって知りました。ポールは実際に、アリーサに、頼まれもしないのに、この曲を送ったのだそうです。結局アリーサが取り上げるのは、ビートルズ・ヴァージョンが発表されてからとなり、なんか良くわからない形になりました。

映画からの映像で、まずはどうぞ!



困った時にマリア様がやってきて
知恵ある言葉を話してくれた
「流れにまかせよ」

オレの暗黒時代にもマリア様は
目の目に立ってこう言った
「流れにまかせよ」

知恵ある言葉 「流れにまかせよ」

実はポールのお母さんの名前はメアリー(Mary)なので、この歌詞の「Mother Mary」は「母ちゃん」と訳すことも可能なんですが(「ケ・セラ・セラ」もお母さんから教えてもらった言葉でしたね)、まあ、アリーサに送った曲なので、普通に「マリア様」と訳すのが正解でしょう。

イントロの荘厳なピアノ・ソロ、ビートルズの終盤を飾るに相応しい雰囲気があります。

この世の打ちひしがれた人たちも
答えがあると信じてる
「流れにまかせよ」

別れてもまた会えるかも
そこに答えがあるんだろう
「流れにまかせよ」

そこに答えが 知恵ある言葉
「流れにまかせよ」

当然、ドラムはリンゴ・スターで、ジョージ・ハリスンがリード・ギター。ここの間奏では、なかなかツボを得たソロを弾いてます。珍しいところでは、ジョン・レノンが6弦ベース(このセッションでは、ライヴ感を出すために、ポールがピアノを弾くときはジョンとジョージのどちらかがベースを担当してました)、そして険悪な雰囲気を和らげようと呼ばれたビリー・プレストンがオルガンを弾いてます。

夜の闇でも私に降り注ぐ光
明日へと輝く光
「流れにまかせよ」

音楽に目覚めるとマリア様がやって来て
知恵ある言葉を話してくれた
「流れにまかせよ」

「流れにまかせよ」

サイケの時代も過ぎ、ダウン・トゥ・アース路線にロック・シーン全体が急展開していく中、「White Album」でビートルズも舵を切り、それをさらに推し進める作品となるはずだったアルバムだったことをが、この曲などから感じとることができます。録音時に一気に完成まで行けなかったことが心残りとなるアルバムでした。

それにしても「Let It Be」という知恵ある言葉、27年サラリーマン生活をやって来た、今、身に沁みていい言葉だなと思います。自分や自分の部下を通じて経験して来たことなんですが、人間、できもしないことをやらなければいけない状態に追いやられることが、一番、精神的にキツイ状態になるんですよね。この精神状態を乗り越えることができるか、できないかが、幸せなサラリーマン生活を送るか否かの分かれ道だと、つくづく思います。40年近く聴いて来た詩が、作った頃のポール以上に、今すごく理解できるような気がします。

それでは最後に、アリーサ・フランクリンのヴァージョンどうぞ!