え~、1枚のアルバムを2部構成で記事にしたのは初めて(だと思います)のことだったので、いかに私めがU2の新譜に入れ込んでるか、多くの人が感づいているのではないかと思います。とにかく、ロックはもうこれで十分。他のアルバムは必要ない。ビートルズも、ZEPもいらん!状態になってまして、通常モードに戻るには、しばらくかかりそうであります。ま、それでも、またまた大物の新譜が続々と控えているのも気にはなっておりますが。。。
そんなわけで、気分はアイルランド。ロックはしばらくU2に任せておいて、ちょっと毛色の変わったのを聴いてみましょう!ってことで、今晩ピック・アップするのは、アイリッシュ・トラッドの老舗バンド、ザ・チーフタンズです。
このアルバムも、先日の中古屋漁りの成果、750円-200円でゲットしたアルバム。ナッシュヴィル録音をメインとした、アメリカン・カントリーとのコラボ・アルバムです。
タイトルは「もう一つのカントリー」ということで、彼ら自身のルーツ・ミュージックであるアイリッシュ・トラッドとは異なる、もう一つのカントリーとしてアメリカのカントリーを捉えていることが分かります。そもそも、アメリカへの移民は、アイルランドやスコットランド等のケルト系の民族が多く、アメリカ南東部の音楽には彼らの影響が色濃く出ているのだそうです。そんなわけで、このアルバム、レコード会社の担当マネージャーは、「アイルランド音楽の本家と分家の再会」と説明しているそうです。
アルバム・ジャケットに記載の参加ミュージシャンを並べてみますと、チェット・アトキンス、エミルー・ハリス、コリン・ジェームズ、ウィリー・ネルソン、ニッティ・グリッティ・ダート・バンド(以下、NGDB)、リッキー・スキャグス、ドン・ウィリアムスという面々。私でも名前を知ってる、カントリー界の超大物が名を連ねています。
このチーフタンズは、62年にバンド結成ということで、ビートルズやボブ・ディラン、ビーチ・ボーイズと同期生という長いキャリアを誇るバンド。アイリッシュ・トラッド・バンドとして、伝統的音楽を追求する一方、ヴァン・モリソンはもちろんのこと、英米のロック・アーティストとのコラボも多く、中には中国民族楽団やクラシック音楽のアーティストとのコラボもあるそうで、この伝統音楽の普及に積極的に取り組んでいるバンドです。
今回も、ナッシュビルをライヴのために訪れた際、上述のミュージシャン達と交流したことがきっかけとなって、その後再度ナッシュビル訪問し、1週間ほどでレコーディングされたものであると、リーダーのパディ・モロニー自身によるライナーに書かれています。
基本的にアルバムのほぼ全編、NGDBとの共演で、曲によって、ヴォーカルやギターで、上記のアーティストが参加しているというスタイルです。
オープニングのインスト・ナンバー、「Happy to Meet」は、本家と分家の再会を祝うようなモロニーによるナンバー。「ドラゴン・クエスト」のようなロール・プレイング・ゲームで、市場が立っているような街に入った時に流れてくるような曲です。(わかる人にはたぶん良くわかる表現だと思います。)そして、レイ・チャールズが取り上げた事でも有名なカントリーの名曲、「I Can,t Stop Loving You」を、ドン・ウィリアムスのヴォーカルで披露。バックに流れるパイプの音色が、この曲にアイリッシュ風味を加えています。
「Wabash Cannonball」はトラッド・ナンバーをはさみながらの曲。ブルーグラス出身のリッキー・スキャッグスのヴォーカル。フィドルが、カントリー・ソングのようでもあり、アイリッシュ・トラッドのようでもあります。エルヴィス・プレスリーの「Heartbreak Hotel」では、チェット・アトキンスのギターをフィーチャー。まるで、アイリッシュ・トラッドみたいな仕上がりです。
そして、アメリカン・フォーク・スタンダードで、レッドベリーが取り上て以来、実に多くのアーティストが取り上げている「Goodnight Irene」。大御所ウィリー・ネルソン登場。ネルソンとハイウェイメンの面々が、ツアーでダブリンを訪れた時に録音されたものだそうです。ハイウェイメンには、クリス・クリストファーソンに加え、日本語ライナーによれば、ウェイロン・ジェニングス、ジョニー・キャッシュも参加している豪華版です。
コリン・ジェイムズという人のヴォーカルによるトラッド・ナンバー「Cunla」も、カナダはトロントでの録音。そして、出ました、ザ・バンドの「The Last Waltz」でもフィーチャーされていたエミルー・ハリスは、ジミー・デイヴィスの名曲(だそうです)、「Nobody,s Darlin, But Mine」(邦題「私だけのもの」)を披露。これも実に心落ち着く名演だと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=d0dhLD9F0Pk&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=d0dhLD9F0Pk&feature=related
またもや先に登場したリッキー・スキャッグスをフィーチャーしての「Cotton Eyed Joe」。アイリッシュとテキサスのフィドルの応酬です。さらにチェット・アトキンスも再登場し、インスト・ナンバー「Tahitian Skies」。先にチェットがダイアー・ストレイツのマーク・ノップラーとコラボした作品だそうです。
http://www.youtube.com/watch?v=KBrW9kAqB00
http://www.youtube.com/watch?v=KBrW9kAqB00
このアルバム制作のきっかけとなった、ナッシュビルでのライヴ時に録音された「Killybegs」。NGDBとの共演で、ヴォーカルはこのバンドのジミー・イボットソン。とっても楽しい曲です。チーフタンズのメンバー、ケヴィン・コネッフのヴォーカルによる「Paddy,s Green Shamrock Shore」は、アイリッシュ・トラッドらしい本領発揮といった感じ。
ラスト・ナンバーは「Finale」と題された12分にも及ぶ、大団円的作品。このアルバムに参加したミュージシャンが一同に会してトラディショナル・ナンバーのメドレーを歌い奏であげます。このアルバムの録音がいかに充実したものであったかを語る、それでいて実に楽しげな、音楽っていいなぁって思えるナンバーでした。
ビートルズ、レッド・ツェッペリン、ザ・バンドなどを聴いてきた自分にとって、そのいずれもの音楽の底流に脈々と流れていたアイリッシュ・トラッド。こうやってアメリカン・カントリーとの邂逅の瞬間を捉えた作品を聴いてると、知らずのうちに自分の中にどっぷりと入り込んでいたんだぁと、改めて認識することができたアルバムでした。