前作「Beggars Banquet」で、それまでの迷いから完全に抜け出し、ダウン・トゥ・アース路線で自らのアイデンティテーを確立した「ブライアン・ジョーンズ抜き(?)」のローリング・ストーンズでしたが、依然としてそれまでのサイケデリックなアレンジや、ビート・バンド的軽さが残ってました。そして、実際にブライアン・ジョーンズが脱退しミック・テイラーが加入する過渡期にあたるこの時期、完全に装飾を排したピュアでストレートなストーンズ・サウンドをこのアルバムにて確立したと言えるでしょう。

「ファンが選ぶ20世紀のロック・アルバム」、いよいよ複数票獲得作品もあと3枚。まずは、ローリング・ストーンズの最高傑作とも言われるこのアルバムです。

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Let It Bleed / The Rolling Stones

当ブログ・ファン投票  第32位
英米の評論家ランキング 第12位(87年)、第8位(77年)
69年発表

ブライアン・ジョーンズがパーカッション等で2曲、ミック・テイラーがスライド・ギター等で2曲、その他、ライ・クーダー(いろいろありました)、アル・クーパー、ニッキー・ホプキンスらの豪華ゲスト陣も参加。固定したメンバーによる作品でないことからも、まさに過渡期。音楽的にもブルース、スワンプ、カントリーと様々なルーツ・ミュージックに刺激を受けた作品を配し、いよいよ世界一のロック・バンドの第一歩を踏み出した感があります。

69年のストーンズと言えば、脱退したブライアン・ジョーンズの死去、オルタモントのフリー・コンサート中に起きた殺人事件等、暗い話題がつきまとわった頃ですが(「Sympathy for the Devil」なんて歌を歌った所為とも言われてますが)、年の終わりに新しい道を拓く作品が完成したというわけです。

オープニングは泣く子も黙る「Gimme Shelter」。イントロの怪しげなギターとスキャットがゾクゾクとして来ますね。ベースとドラムが入ってきて、ミック・ジャガーの貫禄溢れるヴォーカルが入り、ねっとりと絡みつくようなグルーヴ感が最高潮に達します。サビでシャウトしているソウル・シンガーのメリー・クレイトンのパワーがこの曲を特徴づけてます。続く「Love in Vain」は伝説のブルーズ・シンガーロバート・ジョンソンのカバー。最初これ聴いた時は、「アンジー」(私が最初に聴いたストーンズの曲です)の源流かと思った位、美しい曲だなという印象でした。ライ・クーダーがマンドリンで参加。

同時期のヒット・シングル「Honky Tonk Woman」のカントリー・バージョン「Country Honk」は、最初、シングルに近いバージョンを期待して聴いたら全然違ったので、がっかりした次第。今、聴くとこれはこれで好きです。フライング・ブリトー・ブラザーズのバイロン・バーラインのフィドルがこの曲のポイントですね。

一転、ブラック風味に溢れるロック・ナンバー「Live with Me」は、ベース・ラインが実に格好いいのですが、ビル・ワイマンは参加していません。このラインは、バンドの練習の合間に良く弾いてました。間奏のボビー・キーズのサックスが、これまた最高! アルバム・タイトル曲「Let It Bleed」は、ストーンズ流のスワンプ・サウンド。ピアノは6人目のメンバーと言われたイアン・ステュワートで、身内だけによるナンバー。

B面に入ると、当アルバムのハイライト「Midnight Rambler」。たぶん、オリジナル・メンバー5人だけによる最後の作品。ブルーズ感覚溢れる作品で、「Aftermath」収録の「Goin' Home」に似た感触があります。ハイド・パーク・コンサートの映像をどうぞ。


今や恒例となったキース・リチャーズがヴォーカルをとるカントリー・ナンバー「You Got the Silver」は、ちょっと一休みのB-2に相応しい曲。のどかな感じでいいですね。今回、久しぶりに聴いて良かったのが「Monky Man」。ちょっと洒落た感じのニッキー・ホプキンスのピアノと、ソウルフルなミックのヴォーカル、ファンキーなキースのギター。昔、聴いた時は地味な印象持ってたんですが、今の私には実に格好いい曲だと響いてきます。

ラストを飾るは美しいコーラスから入る「You Cant Always Get What You Want」。昔、聴いた時はクラシックみたいやな~、と思ったりしましたが、明らかにゴスペルを意識してます。コーラスの後、ややおとなしめの演奏から、徐々に盛り上がってきて、エンディングでは冒頭のコーラスとバンド・サウンドを重ねクライマックスを迎えます。アル・クーパーがキーボードとフレンチ・ホルンで参加。ジャック・ニッチェもアレンジに加わっております。ライヴでは観客に歌わせる場面もありますね。名曲です。

この後にリリースされたライヴ盤「Get Yer Ya-Ya's Out!」にも3曲が収録されており、私はこっちのライヴ・バージョンを先に聴いたため、強く印象に残っています。ライヴ・バンドとしても大きな評価を得始めた頃の作品です。

このライヴが正規盤としては、デッカ・レコード最後の作品となり、以降、あの有名なベロでお馴染みの自らのレーベルへ移籍します。