「ロックとは暴力衝動を音楽で表現したものである」、正確な言い回しは違ってるかもしれませんが、評論家・編集者・DJでお馴染みの渋谷陽一氏の名言です。暴力衝動をもう少しブレイク・ダウンすると、自分の置かれた位置、家族、友人・恋人、学校・職場、社会、国・政治、ラジオから流れてくる音楽、あらゆるものに「満足」できない若者のうっぷんを晴らすために生まれてくる衝動と言えるのではないでしょうか。そういう意味で、ロックとは、生まれた時からアンチ・テーゼの音楽だったのです。
ブライアン・ジョーンズをリーダーに、R&Bやブルーズを真面目に演奏するグループだったローリング・ストーンズが、ビートルズの成功に刺激を受け、ジャガー&リチャード主導の大衆ウケする路線に切り替え、こういったロックの本質をついた曲で全米No.1を獲得しました。ロックの精神的支柱として、永遠に歌い継がれるであろう名曲です。
不満だ! 不満だ! トライしたけどダメだった ラジオで 男がしゃべってる くだらんお喋り 耳障り テレビで 男が白シャツ自慢 吸ってない奴 男じゃねぇ スターになって 女にアタック 「おとといおいで 減量中」 不満だ! 不満だ! 満足なんかありゃしねぇ
「不満だぁー!」と叫ぶ女ピン芸人も最近いましたが、まさにこれこそロックの本質を歌った歌だと思います。「① 歌詞良し」
ディストーションのかかったギターで、一度聴いたら忘れない印象的なリフ。たった1フレーズで曲を支配するパワー。「20世紀のロック・リフ」なら、かなり上位に入ったでしょう。「② リフ良し」
チャーリー・ワッツのしっかりとリズムをキープしながら、どんどん高揚していく感情を煽るようなドラミング。ビル・ワイマンの地を這うようなベース・ラインでえぐられる腹の底。「③ リズム良し」
ロック名曲の3大要素を必要十分に満たした名曲だと思います。
さて、こういった名曲を数々生み出してきたストーンズですが、76~77年にロンドンで起こったパンク・ムーヴメントでは完全に敵視され、その頃の若者にはラジオでくだらんお喋りしている男と同列に扱われてしますのです。
クラッシュは「1977」という曲の中で、「No Elvis, Beatles, & Rolling Stones in 1977」と歌ったのがその象徴でしょうか。これもロックの宿命と言えば宿命。メイン・ストリームに対抗して人気を得たアーティスト自身が、メイン・ストリームになってしまい、対抗される対象になってしまう。もう50年こんなことを繰り返しているんですねぇ。
さて、そのパンクの流れで発生したニュー・ウェイヴの中では、いろいろと実験的な音楽や演劇的要素を含むアーティストが数多く発生しました。そういったニュー・カマー達の実験の中で、この「Satisfaction」という名曲自身も見事に解体・再構築がなされてしまいました。
オハイオ州はアクロン出身のディーヴォによる「Satisfaction」。(78年発表)
ストーンズ・ファンが聴いたら怒りそうなアレンジですが、当時は、この曲ですらこんな風に解体させられてしまうのかと、驚きと感慨を持って聴いてました。これぞ新時代ってなワクワク感もある曲でした。今、聴くと結構ファンキーな感じがいいですね。
と、こんなこともありましたが、いまだにストーンズのライヴでは当然のように演奏されている名曲です。
長い間、放ったらかしにしていました「20世紀のロック・ソング」の記事、遂に1つ仕上げました。今回は選外の曲から選びましたが、今後、各ファン投票で5位以上に入った曲を中心にとりあげていきます。更新頻度は低いと思いますが、請うご期待!