「カバーズ&トリビューツ」の書庫において、早くも2回目の登場となる、元ロキシー・ミュージックのリーダーにして、UKを代表する伊達男! ブライアン・フェリーの最新作の登場です。基本的に新譜は「ロック日記」の書庫で紹介しておりますが、今回の彼は、ソロ・デビュー・シングルでも取り上げたボブ・ディランのカバーを、アルバム全体でやってのけました。そういう意味で、ディラン・トリビュートでもあり、当書庫でのご紹介が最適と考えたわけであります。

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Dylanesque / Bryan Ferry

07年発表

もともとディラン自身が自らの過去の曲を全く別のアレンジにより別の曲に仕上げる性癖があるため、ディランの名曲を再構築することに抵抗のある人はないでしょう。また、ディランの曲は、本人が演るより、他の人が歌った方が曲の良さが伝わり易いといった難儀なところもあります。このアルバムもそういった例に漏れず、デイランの曲を再構築(ディランのオリジナルを知らない曲も何曲かありますが)して、その曲の良さを引き立たせるとともに、完全なフェリー・サウンドに仕上げているところが面白いですね。新たな発見もあったし。

それでは収録曲のご紹介! [ ]内はディランのオリジナルの収録アルバムです。
① Just Like Tom Thumbs Blues [Highway 61 Revisited]
 オープニングは割とさらりとした感じで、淡々とした感じで歌います。フェリー自身によるハーモニカがいい感じです。

② Simple Twist Of Fate [Blood on the Tracks]
「血の轍」では、アコースティックの弾き語りになっていましたが、ここではアップ・テンポの良質なポップ・ソングに仕上がりました。個人的には、このアルバムのベスト・ヴァージョンだと思います。

③ Make You Feel My Love [Time Out of Mind]
 これのオリジナルは知りませんが、ピアノをメインに据えたバラード曲。美しい!

④ The Times They Are A-Changin [The Times They Are A-Changin']
 ある意味、当アルバムで一番驚いた曲。名曲で馴染みもある「時代は変わる」なのですが、アレンジやフェリーの歌声での妙で、まるでブルース・スプリングスティーンの曲であるかのように聞こえます。なお、私はこの曲を最初に知ったのはサイモン&ガーファンクルでした。

⑤ All I Really Want To Do [Another Side of Bob Dylan]
 ディランの4枚目から、プロテスト・ソングの趣がなくなって来た頃の曲。

⑥ Knockin On Heavens Door [Billy the Kid]
 とにかくカバー・バージョンの多い、邦題は「天国への扉」という曲。当アルバムでは、⑪と並んでロック・アーティストに支持されています。

⑦ Positively 4th Street [Single]
 これは、「Like a Rollong Stone」に続く、シングル盤でのみでの発売された曲。これについてはディランのオリジナルを知らないので、なんとも言えない曲ですが、いい曲だと思います。

⑧ If Not For You [New Morning]
 ジョージ・ハリソンが「All Things Must Pass」でも取り上げていた曲。サザン・ロック、スワンプ・ロックの雰囲気満載の曲。

⑨ Baby, Let Me Follow You Down [Bob Dylan] (デビュー・アルバム)
 ザ・バンドの「Last Waltz」のハイライト・シーン、ディランの登場ソングかつ締めソングとして使われた曲。アップ・テンポのロック・ナンバーに、フェリーのハープも格好良いです。

⑩ Gates Of Eden [Bringing It All Back Home]
 かなりスロー・テンポで歌われてます。ディランのヴァージョンは頭に残ってないなぁ!

⑪ All Along the Watch Tower [John Wesley Harding]
 ロック界でも名曲と誉れの高いこの曲を、フェリーもピック・アップ。やはり、ジミヘンのヴァージョンが元になっている気もします。

超有名曲から、アルバムの片隅の曲まで取り上げ、かなりのヴァリエーションに富んだアルバムに仕上がっております。シンガーとしてまた、新しい魅力が引き出されたグラムの帝王、ブライアン・フェリー。自ら好きな曲を思う存分、歌いまくり、次へのステップを期待してしまう1枚でした。

では、「Positevle 4th Street」をしっとり詠います。