2年間コーチングをさせてもらっているクライアントさんがいる。
彼は、この3か月間、ずっとイライラしていた。
「やるべきことはやっているのに、部下に変化が観られない!」
「同僚から、自分だけ前のめりで、周りがついてきていない、と言われた!」
「コーチングは、最強のツールだと信じていたのに!」
自分に対する怒りなのか、私やコーチングに対する怒りなのか、
その前の1年とは、ずいぶん様子が違っていた。
彼とずっと話をしながら、改めて考察したいことが浮かんできた。
それは「HOWの魔力」だ。
まじめな彼は、宿題を必ず実行し、報告する。
教科書通りに、部下と1on1を設定し、実行する。
その中でも、「よく聞き」「質問をする」。
教科書通りだ。
でも、部下は、チームは、彼が「思ったように」は変わらなかった。
彼は毎回のセッションで私に聞く。
「どうしたら、部下がもっと自発的になるだろう」
「どうやったら、チームで横の連携が生まれるだろう」
彼の自問は、いつも「HOW」から始まる。
「どうしたら~~できるだろう」 「How to」といっても言い。
要は、「もっとうまくいく、やり方を教えて」なのだ。
私たちが本当の行き詰まりを覚えるとき、多くの場合はこの「HOW」の魔力にとりつかれてしまっている。
ちょっとした行き詰まりであれば、「How to」を手に入れることで乗り越えることができる。
でも、本当の行き詰まりでは、そうはいかない。
そして、そのままでは、ずっと停滞し続ける。
それは、私たち自身の在り方を問うことから、逃れる、ということだから。
「HOW」を自問しているとき、私たち自身の世界は守られている。
「私は悪くない。やり方が間違っているだけだ」
「私は十分頑張っている。もっといいやり方があるはずだ」
本当は、物事が停滞しているとき、「そこにどんな自分がいるのか?」を見つめていく必要がある。
すべては、自分が作り出している物語だ、ということを受け入れなければいけない。
「私は何を必要としているのか?」
「ここから何を学ぼうとしているのか?」
「どんな変化を求めているのか?」
自分の内側の深く、海のように深い自分の世界に飛び込んで、深く深く潜っていって、
奥のほうから、かすかに聞こえる声に、耳をすまさなければいけない。
「認められたい」
「孤独が怖い」
「存在の価値があると証明したい」
そのもっと先。
「愛されたい」
「自由でいたい」
かもしれない。
「HOW」の魔力にとらわれるフィールドに、居続けないで。
自分自身の、本当の声を、聴いて。
そのために、不必要なものを手放して、スペースを空けて。
私と彼の冒険は、まだまだ続く。