ドタバタの後で~ねぇさんと③
ビールを飲んでいるねぇさんと話していたオレは、そんな事を思い出しながら、
「ところで、あの日の帰りにあのねぇさんのナゾは教えてもらえたのか?」
と聞いた。
「そう!その話!なんかおにいさんと楽しく話せるようになったって。友達になれたって。嬉しそうだったよ。」
「そんな事だったのか。楽しくったっていつもと一緒じゃねぇのか?それにもう前から友達みたいなもんだし。」
「それが違うんだって。」
「なにが?」
「それがハッキリ言わないんだよね。『あたしとおにいさんの秘密』って言って。ただ、おにいさんの事を愚痴ってたけど、なんか楽しそうなんだよね。おにいさん、あのコになんかした?」
「何もしてないよ。いつもねぇさんと話してるように話しただけだよ。」
結局、まだ教えてもらえてないようだ。
「そうだよね。おにいさんが何もしてないのは、あのコの態度見てればわかるんだけど、気になるなぁ。」
ねぇさんが、あまりにもあのねぇさんのことを気にするので、
「そんなに知りたい?」
と聞いてみた。するとねぇさんは、
「知りたいよ。あたしに秘密なんて。それにおにいさんのことみたいだし。」
と言った。
でも、オレはあの時、知らないと言い張ったので、
「多分だけど。」
と、一応前置きをして、オレがあのねぇさんと話していて感じた事を話した。
「あのねぇさんは、オレとねぇさんの会話が羨ましかったんだと思うよ。」
「なんで?普通の会話でしょ?」
「オレとねぇさんには普通でも、あのねぇさんには違ったみたいなんだよ。」
「どういう事?」
「あのねぇさんは、オレと話す時に気を使ってたみたいなんだ。」
「あのコが?あたしには全然気なんか使ってないよ。」
「ねぇさんには気を使わなくても、オレには気を使ってたんだって。他の友達と話す時みたいに。」
「あぁ、確かにそういう所があるかも。」
「だから最初はちょっと気を使ってたんけど、ねぇさんの時みたいに話したらすぐに打ち解けてきたよ。」
「どうして?」
「オレがあのねぇさんをお客扱いしなかったからじゃないか?」
「おにいさん、また失礼な事を言ったんだ。」
「いや、言ってないよ。だから普通にねぇさんと話してる時みたいに・・・」
「それが失礼な事だって言ってんの!!」
「でも、いいじゃん。あのねぇさんも喜んでたし。」
「あぁ、また被害者が増えたんだ。」
ねぇさんは笑っている。
「それってねぇさんがオレの被害者ってことか?」
「そう、被害者第1号。」
「被害者はオレだよ。こんなウルサイねぇさんに付きまとわれて。」
「いいじゃん。あたしはお客さんなんだから。お客様は神様って言うでしょ。」
「どこが神様なんだよ。じゃぁ疫病神ってことで。一応神様だし。」
「なによソレ!」
「だからこういう事なんだよ。こんな風に話せたのが、あのねぇさんには嬉しかったんだと思うよ。あのねぇさんが言ってたよ。自分のまわりには、オレみたいにケンカを吹っ掛けてくる男友達はいないって。オレはケンカのつもりはないんだけど。」
「あたしのまわりにもいないよ。」
「それは、ねぇさんが怖いからだろ?」
「うるさい!」
「こういう会話が楽しかったんだろうな。」
「そっかぁ、だからあの日の帰りはあんなにはしゃいでたんだ。ありがとね。」
とお礼を言った。
「なんで?オレは何もしてないよ。ただあのねぇさんと話してただけだから。」
ねぇさんが言うには、
彼女は人当たりがよく、付き合いもいいのでいろいろ誘われる事も多いという。
だが性格なのか、いつもまわりに気を使っている所があるらしい。
初対面の相手でも会話はするが、いつの間にか聞き役になっている事が多いそうだ。
そして、聞かされる話は自慢話。
みんな自分をアピールする事しか考えていないという。
「だから、何も気にしないでおにいさんとガンガン言い合えたのが楽しかったんだね。あの日の帰りは、おにいさんの悪口で盛り上がったもん。」
「結局オレは悪者か?今度は二人を相手にケンカしなけりゃいけねぇのか。」
「いいじゃん。楽しいケンカなんだから。」
「でも、この話ねぇさんは聞かなかった事にしてくれよな。」
「どうして?」
「だってねぇさんにはナゾの話だし、ねぇさんが知ってたらマズイだろ。それに、あのねぇさんが言ってただろ?『あたしとおにいさんのヒ・ミ・ツ』って。」
「なに、その言い方。全然かわいくないんだけど。」
「うるせぇ!そこはスルーしろ!だから、たまに聞いてみれば?あのナゾってなにって。いつか話してくれるんじゃないか?もしかしたら、オレが感じた事と違うかもしれないし。」
「うん、そうする。」
と、ねぇさんは言った。
あの夏以来、ねぇさんとは会えていないが、あのねぇさんからナゾは教えてもらえたのだろうか。