ドタバタの後で~思い出話 | Sea Breeze Season8

ドタバタの後で~思い出話


その頃、ねぇさんはいつも同じコを連れて海に来ていた。

ねぇさん達は、必ずパラソルとサマーベッドを借りていた。

パラソルの所では、どちらとも話したが、ねぇさんの方がよく話し、友達は少し控えめだった。
売店に来るのもいつもねぇさんだ。

当然、話す機会も多くなる。

オレが売店を出て、パラソルのレンタル小屋に向かって砂浜を歩いていると、

「おにいさ~ん!」

とパラソルの下で手を振りながら声をかけてくる事もあった。

ねぇさん達は、パラソルを借りるといつもレンタル小屋から近い所に立てていた。

元々は、オレがバイトの応援でパラソルを立てに行った時、遠くまで回収しに行くのが面倒なので、近くに立てたのが始まりだ。

それからはずっと彼女達は近い場所に立てるようになった。

なので、オレもねぇさん達のパラソルに行って話すこともあった。

ある日、パラソルの所で話している時、

ねぇさんが、

「ちょっとトイレ行ってくる。」

と言って、友達と二人きりになった事があった。

その時に、

「あのねぇさん、ホントによくしゃべるよなぁ。いつもあんな感じなのか?」

と友達に聞いてみた。

「うん。しゃべるけどあんなに笑って最後まで話してるのは珍しいよ。それに、おにいさ~んって手を振ったりなんかして。」

と言った。

「そうなんだ。誰とでもあの調子で話してそうだけど。」

「初めはすぐに打ち解けて笑って話してるんだけど、だんだん笑顔がなくなってくるんだよね。それで戻って来ると不機嫌な顔になってるの。」

「なんで?そんな顔見たことないけどなぁ。」

「だって、おにいさんは自慢話ってした事ないでしょ。あたし達のまわりって多いんだよね。そういう自慢話の好きなヤツが。それにすぐ上から目線になるヤツとか。なんかムカついて頭にくる。」

オレは、いつものねぇさんとの会話を思い出して、

「オレがあのねぇさんと話す時は、大体ねぇさんをからかって怒られて、ねぇさんの話にツッコミ入れてまた怒られて、最後は大笑いするみたいな感じかなぁ。」

「だよね。いつも帰りの電車で、今日はあんなこと言われた。こんなこと言われた。で、頭に来ちゃったって楽しそうに話してる。」

「知らなかったなそんな話。初めて聞いたよ。」

今までねぇさんからそんな話は一度も聞いた事がなかった。

「だけど、オレも上から目線じゃない?」

「そんな事ないよ。おにいさんのは自慢話じゃないし、あたし達の話もちゃんと聞いてくれるじゃん。おにいさん、なんかあのコと気が合ってるみたいだから付き合っちゃえば?」

「それはないかなぁ。」

「どうして?」

「他の季節とか、海以外でのねぇさんが想像できないんだよなぁ。それにいつでも会えるようになったら、ここで会った時の楽しみがなくなるし。たまにしか会えないから楽しいんだよ。そういうのってない?」

「前に電車の中で、あのコにも付き合えばって言ったら、同じようなこと言ってたよ。」
  
「なんて言ってた?」

「おにいさんと会うのは、あそこじゃなきゃダメなのって。あそこで色あせたTシャツとビーサンじゃなきゃダメなんだって。」

「でもその話だとなんかオレTシャツとビーサンのおまけみたいになってないか?」

彼女は笑っている。そして、

「売店もそうだよ。あたしが、なんか飲もうか?って言うと、じゃあ買ってくるねって自分から行っちゃうもん。普段はそんなことめったにしないのに。」

「言いたい事を言い合ってるから楽しいんじゃないのか?全然遠慮もしないし。」

「そうなのかなぁ。」

と言った。

「それ以外に何かあるか?」

とオレは聞いた。

「うん。おにいさんにナンパされたのかなって。」

「ねぇさん達はナンパされたら着いて行くのか?」

「絶対行かない。ナンパするヤツ大っキライだから。」

以前、ねぇさん達がナンパ男に声を掛けられている所を何度か見かけた事があった。
いくらナンパ男がしつこくても、ねぇさん達は絶対に着いて行こうとしなかった。

「オレはナンパなんかしないよ。いつもあのねぇさんが売店に来るから、自然に話すようになったんだよ。」

「そうなの?あたしはかなり警戒してたよ。前に何度か他の海に遊びに行ったんだけど、海の家のバイトがナンパしてきたんだよ。どこから来たのとか、年いくつとか、名前はとか。」

確かに、海の家のバイトにはナンパ目的で申し込んで来る奴も多い。
海の家のスタッフならモテるとか、カッコいいとか勘違いしている奴らだ。
だが、そんなに甘いもんじゃない。
お客さんだって、そんなヤツに簡単に着いて行くほどバカじゃない。

「それじゃ警戒されても仕方ないか。だから最初の頃はオレとあまり話さなかったのか?」

「うん。」

「オレがねぇさんと話してるから遠慮してたのか、会話が苦手なのか、オレのことを嫌いなのかと思ってた。」

「そんなことないよ。おにいさんはいつも通りすがりに、あまり焼きすぎるなよとか、適当に休憩しろよとか言って、そのまま売店に行っちゃうでしょ。だからナンパじゃないんだなぁって思うようになってた。」

「そんなのは普通じゃないか?たまにはねぇさん達の所で話すことはあったけど。」

「だけど、おにいさんそんな時でも一度もあたし達のこと聞かなかったじゃん。」

「だって、元々ナンパしようなんて思ってねぇから、名前とかどこから来たのかなんてどうでもいいし。ただこうやって話しているのが楽しいんだよ。」

「でも名前ぐらいはいいんじゃない?」

「いや、どうでもいいよ。もうねぇさんで定着してるから。さん付けはなんか変だし、ちゃんって言うのもイメージじゃないし。ねぇさんって言うのが一番呼びやすいんだよ。」

元々、ねぇさんとおにいさんで始まった会話だ。
ねぇさんからも名前を聞かれた事はない。
それに、今さら名前で呼ぶのが照れくさいというのが本音だった。

「じゃあ、あたしとあのコが一緒にいる時はどうやって呼ぶの?」

「そっちのねぇさん、こっちのねぇさん。二人まとめて呼ぶ時は、そこのねぇさん達。」

彼女は笑って、

「普通そんな呼び方されたらイラッとしそうだけど、いつもそう呼んでたよね。で、いつの間にかそれが普通になっちゃってたね。」

と彼女は笑った。

そんな話していたら、ねぇさんが小走りで戻って来るのが見えた。

「お待たせ~。遅くなっちゃった」

オレは戻って来たねぇさんに、

「遅っせぇなぁ。便秘か?全部出たか?」

と聞いた。

「違うよ!ついでだからシャワー浴びて砂を落としてきたんだよ!ったく!普通女の子にそんな事言う?」

「普通の女の子には言わないよ。だけどねぇさんは普通じゃねぇだろ。」

「それどういう意味よ!」

「ねぇさんはちょっとヘンな女の子だから。」

まだ何か言いたそうなねぇさんに、こっちのねぇさんが、

「アンタが遅いからじゃん。だからおにいさんと話してたんだよ。」

ねぇさんは興味を持ったようで、

「ナニ?ナニ話してたの?」

と聞いてきた。

「こっちのねぇさんに逆ナンされてたんだよ。付き合ってくれって。」

「えっ!?ホントに?」

と言った。

こっちのねぇさんは笑いながら、

「そんなことしてないよ。アンタおにいさんといつもこんな会話してるの?」

「そう。いっつもこんな失礼な事ばっかり言ってくるんだよね。」

「ねぇさんだって同じようなもんだろ。」

横で聞いていたこっちのねぇさんが、

「いつものアンタならソッコーで怒ってたじゃん。」

「怒ってるよ。」

「そう?アンタ楽しそうだよ。」

これ以上付き合えば、また話が長くなりそうなので、売店に戻る事にした。

「じゃぁ、オレはそろそろ戻るよ。このままいたらひっぱたかれそうだから。」

ねぇさんは、

「大好きなおにいさんにそんなことするわけないじゃん。思いっきり蹴っ飛ばすけど。」

「それはカンベンしてくれ。」

と言って、その場から引き上げた。


それからしばらくして、友達のねぇさんが売店にひとりでやって来た。

「へぇ、こっちのねぇさんが来るのは珍しいじゃん。」

とオレは言った。

「あたしがおにいさんのこと逆ナンしないってわかったから安心としたんじゃない?」

「それをあのねぇさんに言ったらまたモメるぞ。」

「それはマズイ。でもあのコがここに来たがるのがわかるよ。」

「そうか?」

「それに、おにいさんがいるから安心して遊べるし、のんびりできる。それに楽しいし。」

「別にオレは何もしてないよ。」

「だってパラソルの所や売店でおにいさんと話していると、他のナンパ男がよって来ないもん。」

「なんで?」

彼女は笑って、

「友達だと思われてるんじゃない?じゃなければ、どっちかの彼氏とか?」

それはあると思った。
ある時、売店に来た見るからにナンパな兄ちゃん達に、

「おにいさん、うまくやったじゃん。あの二人狙ってたんだよなぁ。」

と言われた事がある。

オレは、

「あぁ、あのコ達か?あいつらはオレの友達なんだよ。だから声かけても無理だよ。ここに逃げて来るから。」

と兄ちゃん達に言った。

だけど、そんな事は言わずに、

「あともうひとつあるよ。」

「なに?」

「ねぇさん達に魅力がないから寄りつかない。これが一番の理由じゃないのか?」

「じゃぁ、なんでおにいさんはあたし達と話すの?」

「ボランティア。ほら、オレって親切だから。寂しそうな二人に優しくしてあげないとな。」

「なによそれ!あたしだってナンパぐらいされたことあるんだからね!」

「そいつらは、よっぽどヒマだったんだろうな。」

「あたしがかわいいからよ!」

「じゃぁ、相当目が悪いんだな。」

「おにいさんには、あたしの魅力がわからないのよ!」

その時、急に気がついたように、

「あっ、そっかぁ!いつもこんな感じであのコと話してるんだぁ!」

「なんだ、今頃わかったのか。納得した?」

「うん、納得した。」

「あともうひとつ、ここにはねぇさん達の知り合いがいないからじゃないか?」

「どういうこと?」

「知り合いがいなければ気を使う事もないだろ?ここでねぇさん達の事を知ってるのはオレだけだから。」

「そうだね。」

「で、ねぇさん達はビキニ、オレはヨレヨレのTシャツでお互いビーサン。カッコいいも悪いない。元々、冗談みたいな会話で始まってるから。」

「そうだよね。会社に行く時みたいにオシャレしてる訳でもないし、砂だらけになったり、海でびしょ濡れなったり、全部見られてるもんね。カッコつけたってしょうがないよね。」

「そう。オレの前ではそういうこと全然意識してなかっただろ?」

「うん。ただの売店のおにいさんとしか思ってなかった。」

「ここで今さら気取ってもしょうがねぇじゃん。それに、オレねぇさん達のことお客扱いしてねぇし、もう友達みたいなもんだから。」

「うん、わかる。その方がうれしい。そっかぁ、そういうことかぁ。」

「これでわかっただろ?ねぇさん達と会うのはここじゃなきゃダメだって意味が。ここで発散すればいいんだよ。」

「うん。こういう楽しみ方があったんだね。」

と言った。

その時、あのねぇさんが遅れて売店にやって来た。

オレはねぇさんに、

「ビールだよな。」

と聞いた。

「そっちのねぇさんは?」

「あたしもビール。」

「はいよ。」

とジョッキを渡した。

二人は近くのテーブル席に座り、ビールを飲みながら雑談を始めた。

やがてビールを飲み終えた二人は、

「また後でね。」

と言って、自分たちのパラソルに戻って行った。

オレは、いつも通り、お客さんの対応をしたり、レンタル小屋の様子を見に行ったりしていた。
 
しばらくすると、また友達のねぇさんが、

「ちょっとトイレ借りるね。」

と言ってやって来た。

そして、戻って来たねぇさんに、

「こっちのねぇさんもあのねぇさんみたいに便秘か?」

と聞いた。

「違うよ!あたしはあのコより早かったでしょ!」

オレは笑いながら、

「まあ、これでも飲んで落ち着いて。」

と言って、オレが飲もうとしていた麦茶をコップに入れて渡した。

彼女は、一気に飲んで、

「フーッ。」

一息ついた。

「どう?少しは落ち着いた?」

「ありがとう。」

と言ってコップを返した。

「それ、下剤入れておいたから今度はすぐ出るよ。」

と言った。

「だから!」

と言ったところで、オレは、

「もう一杯飲む?」

と聞いたが、オレを見る目が疑っている。

「いや、今度は素直にもう一杯どうぞ。」

と言った。

彼女は無言で受け取った。

「そこ、座れば?」

とテーブル席を見た。

「また、なんか企んでるでしょ?」

「違うよ。ねぇさん結構汗かいてるだろ?ダメだよ水分とらなきゃ。」

と言った。

「だって今日暑いじゃん。喉が渇くんだよね。」

「ビールばっかり飲んでるからだよ。全部汗で出しちゃってるじゃねぇか。」

「いいの。ダイエット中だから。」

「なにがダイエットだよ。そんなにダイエットして、大してない胸がなくなっても知らねぇからな。」

「ほら!しっかりあるでしょ!」

と胸を突き出した。
以前だったら絶対そんな事はしなかった。
このねぇさんも、少しずつ馴れてきたようだ。

「いや、初めてここに来た頃よりかなり小さくなったような・・・。」

「ひど~い!やっぱりあたしの勘は間違ってなかった。」

「どんな?」

「あたしは、おにいさんが大っキライだって事が。」

と言いながら、顔は笑っている。

「ねぇさん、怒ってるわりには顔が笑ってるぞ。」

「だって楽しいんだもん。普段こんな会話する事もないし、おにいさんみたいにケンカ吹っ掛けて来るヤツもいないし。」

「別にオレは、ケンカ吹っ掛けてるつもりはないんだけどな。」

「だけど、これだけ思いっきり言い合える男友達なんて、あたしのまわりにはいないよ。なんか楽しいね。」

「なんだ、麦茶で酔っぱらったのか?」

「この雰囲気に酔っちゃったのかも。」

彼女は本当に楽しそうだ。
オレが思ってた以上に今まで気を使っていたのだろう。

そんな彼女に、

「一番タチの悪い酔っぱらいだな。オレにからむなよ。」

と言った。

「あたしがからむとコワイよ~。」

オレを睨んだが、目は笑っている。

「そんな事したら海に放り込んでやるからな。前に見た濡れた髪の毛が海草みたいにへばりついたあの姿は結構笑えたよ。」




その日は、南の海上に台風があり、沖からは大きなうねりが入って来ていた。
そのうねりは、波打ち際に来ると大きく立ち上がり、大波となって一気に崩れ落ちる。

さらに、この日は大潮で、既に潮が満ち始めている時間だったため、波も高さを増してきていた。

そんな状態だったので、海岸には遊泳注意が発令されていた。

それでも、かなりのお客さんは海で遊んでいた。
ねぇさん達もひとつのウキワに掴まりながら、うねりに揺られて遊んでいた。

そうしている間にも波は高くなり、お客さんも海から上がり始めた。

ねぇさん達も、海から上がろうと波打ち際まで来た時、その後ろで大きく立ち上がった波が崩れ、一瞬ねぇさん達の姿が消えた。

そして、波に巻き込まれ、海から上がって来たねぇさん達の姿はボロボロだった。
髪は顔から肩にへばりつき、その髪は砂混じり。
大きな波は、その勢いで大量の砂を巻き込んでいるからだ。
その後しばらくして、遊泳禁止が発令された。

「その話はもういいから!いい加減忘れてよ!」 

「忘れるもんか。あんな面白いもの。もったいない。」

「全然もったいなくない!」

「鼻がイタ~イ!とか言いながら泣きそうな顔してたくせに。」

「してないもん!」

「ねぇさん達は気づいてなかったかもしれないけど、鼻水たらしてたぞ。」

「たらしてないってば!」

「うん。鼻水はたらしてなかった。」

と、オレは笑った。

「もう!でも鼻は痛かった。」

「あの後、すぐにシャワーに駆け込んで行ったよな。で、いつものいい女になって戻って来たじゃん。何事もなかったみたいに。」

「ふん!でもいい女って思ってくれてたんだ。」

「お世辞だけど。」

「まぁ、いいか。」

と、楽しそうに麦茶を飲んだ。

このねぇさんも、少しずつわかってきたようだ。
気を使わず、自然に話しているように感じた。

「ねぇさん、それでいいんだよ。変な気を使って疲れるより、遊び疲れて帰った方が楽しいだろ?」

「そうだね。」

「ところで、あのねぇさんはどうしてる?」

「なんかウトウトしてたから、寝ちゃったんじゃない。」

と言った。

気温はかなり高い。この暑さじゃ熱中症になるかもしれないと思い、

「このまま寝てたらヤバいだろ。あのねぇさんを起こしてきてくれるか?」

と、ねぇさんを呼びに行かせた。
連れてこられたねぇさんは、

「なによ、気持ちよく寝てたのに。」

とブツブツ文句を言っている。

「なに言ってんだよ。そんなに汗かいて。あのまま寝てたら熱中症になるぞ。」

と言って、麦茶を飲ませた。
少し多めに入れたが、それを一気に飲み干した。
まだ水分補給が必要だと思い、もう一杯渡した。

受け取ったねぇさんは、

「おにいさん、ありがとう。」

と言って、投げキッスをした。
オレは、その投げキッスを手でたたき落とすマネをして、

「いいから飲め。」

と言って麦茶を渡した。
その様子を友達のねぇさんが、笑いながら見ている。

それを見たねぇさんは、

「こういう事するヤツなんだよ。このおにいさんは。」

と指を指して言った。

友達のねぇさんは、

「だって、あんたの投げキッスってマズそうじゃん。」

と言って笑った。

オレは、

「久しぶりに来てどう?」

と聞いた。

「楽しいよ。」

とねぇさんが答えた。

「ねぇさんじゃねぇよ!それに久しぶりじゃねぇだろ!オレが聞いたのはそっちのねぇさんだよ!」

「いいじゃん!楽しいんだから!」

とふくれている。
友達のねぇさんは、

「久しぶりだけど、やっぱりここは楽しいね。二人のショートコントも面白いし。それにナゾも解けたし。今日は特に楽しいよ。」

と嬉しそうに麦茶を飲んだ。

「ナゾってなに?」

とねぇさんがオレを見た。

「オレは知らねぇよ。」

「ホントは知ってるんでしょ?」

「そっちのねぇさんのナゾをなんでオレが知ってるんだよ?」

と言うと、友達のねぇさんを見て、

「ナゾってなによ?」

「ナイショ。」

と教えない。

また、こっちを見て、

「おにいさんホントに知らないの?知ってるんでしょ?教えなさいよ。」

「ホントに知らねぇって。帰りにそっちのねぇさんに聞けばいいじゃん。」

友達のねぇさんは、 

「あたしとおにいさんの秘密。」

と言った。

「だから、そういう言い方するとまたややこしい事になるだろ!このねぇさん容赦ねぇんだから。」

彼女は、笑って麦茶を飲んでいる。
ねぇさんは、オレを見ている。

「おにいさん、ホントに知らないの?」

「知らないって。しつこいなぁ。」

と、とぼけた。

この後も、売店に来る度に聞かれたが、オレは最後までとぼけておいた。