老夫婦
海の家の日陰に、上品そうな2人のお年寄りがいた。
日傘をさしているおばあさん。
杖をついているおじいさん。
2人とも、海のほうを眺めている。
日陰とはいえ、連日の猛暑。
オレは、
「暑いでしょう。どうぞ中で休んでください。」
と言って、砂浜側のテーブル席を勧めた。
この日は、やや東寄りの南風。
海に面しているこの席には、気持ちのいい風が入ってくる。
席に着いたおばあさんが、
「ここ涼しくて気持ちいいわねぇ。」
とオレを見ながら言った。
この老夫婦、
息子家族と一緒に、近くのホテルに泊まりがけで旅行に来たのだという。
孫が海で遊べるくらいの年齢になったので、海水浴にしたそうだ。
だが、この暑さは老体には厳しく、日陰に避難していた。
そんな話をしながら、
お客さんが買っていたかき氷を見て、
おばあさんが、
「私もかき氷食べようかしら。でもあまり食べられないから、半分にしてもらうことできます?」
と聞いてきた。
「できますよ。」
と答えた。
そして、おばあさんはイチゴ、おじいさんはレモンのかき氷を注文した。
オレは半分のかき氷を作り、
「お待たせしました。」
とテーブルにかき氷を置いた。
料金表を見て、おばあさんが財布から、
「これでお願いします。」
千円札を出した。
オレは、その千円札を受け取り、釣り銭を渡した。
その金額を見て、
「おつり多くありません?」
オレは、
「半分ずつなので1杯分で結構ですよ。」
と言った。
それを聞いたおじいさんも、
「2つ頼んだのに、それじゃ申し訳ないですよ。」
とかき氷代を払おうとしたが、オレは、
「どうぞ、サービスです。」
と断った。
ひと休みしていた2人は、
「お礼にこれ買っていきましょうよ。」
とおじいさんに話している。
それは、バケツやシャベル、じょうろ等、6種類位がセットになっている、子供用のオモチャだった。
サービスした金額よりも、全然高い品物だ。
おばあさんは代金を払い、
「どうもありがとうございました。おかげでゆっくり休めました。」
と言って、2人は席を立ち、
今買ったオモチャを持って出て行った。
多分、海で遊んでいる孫に届けに行ったのだろう。