営業トーク
海の家では、
毎朝バイト達が、駅や駐車場から海岸に下りてくる海水浴客の呼び込みをしている。
常連客や指定の割引券を持っている人などは、利用する海の家は決まっているが、
それ以外のお客さんは、呼び込みで海の家に入れる。
どこの海の家も、自分のところを利用してもらおうと、呼び込み合戦が始まる。
だが、どこを利用するかはお客さんの自由なので、呼び込みを無視して素通りすることも多い。
売店にいるオレは、砂浜を歩いているお客さんに声をかけている。
家族連れに若い男性客や女性客、カップル客からグループ客等々、客層は様々だ。
バイトに言わせると、
オレの呼び込みは、客の獲得率が高いらしい。
バイトの呼び込みを無視した客を、オレが獲得することが何度もあった。
売店にいると、いろんな人と会話をする機会も多く、雑談もよくする。
バイトに比べれば、会話慣れしているので当然のことだ。
ただ、バイトに言わせると、特に女の子の獲得率が高いらしい。
バイトたちは、オレの呼び込みを『ナンパ』と呼んでいたそうだ。
ある日も、オレが女の子のお客さんを連れて行ったとき、
バイトの女の子が、
「またナンパしてる。」
と言い、
荷物の預かり所に案内した時も、料金係のバイトが、
「ナンパ成功したんスか?」
と言った。
オレはそのたびに、
「ナンパなんかしなかったよな?」
と女の子たちに確認する。
ノリのいい女の子になると、
「そう、ナンパされちゃったの。」
と答えたりする。
そんな会話も、お客さんとのコミュニケーションを取るきっかけにはなっているのだが・・・。
ただし、これはナンパではなく、あくまで営業トークであることを強調しておく。