久しぶりに昔の通学路を歩く。
何度も歩いて通った道。
あるものは何も変わらないけど、どれもこれも時の流れを感じさせる。
僕の記憶の中では、
賑やかで、人の声が絶えない道だったけど、
いつの間にかその声は消え、
ただ、海と、鳥と、風に吹かれる山の音だけが聞こえてくる。
私の知らない間に、気づかないうちに、
故郷の景色は変わってしまっていたのだ。
そう思いながらぷらぷら歩いていると、
ある家の中から黒い犬が飛び出してきて、
興味津々にこちらを見ている。
なんだかその瞳が、
今の僕には嬉しかった。
その後海を眺めて、
年季の入った漁船を見る。
静かな青空の下、波に揺られてただよっている。
小さいころからあったようなこの船を見ながら、
自分も一緒に揺られ、耳を澄ます。
ふと一羽の鳶が飛び降り、一声鳴いた。
それに応えるように、もう一羽鳴いた。
その鳴き声は生命力溢れるものだった、
でもそうあるのはあなただけ。
変わらず船は波に漂う。
僕も風に吹かれる。
懐かしく、いつも安心感を与えてくれていた故郷が、
初めて僕に寂しさを与えた。
でもその寂しさは、
過ぎゆく時の流れに傷つく私に
寄り添ってくれているのかもしれない。
あぁ海よ。
私の大好きな海よ。
いっぱいの太陽に照らされ美しく輝き、
泳いでいる魚たちが見えるほど澄んでいる海よ。
私はきっとあなたに殺される。
私から全てを奪って殺すのだ。
それでもお前は変わらずにいるんだろうか。
それでも私は愛せるのであろうか。