生い立ちと初出演後の不遇 クリント・イーストウッドは父クリント・イーストウッド・シニアと母モーガン・イーストウッドの間に生まれる。
スコットランド、アイルランド、ドイツ、イングランドの4か国の血をひいている。
家系はメイフラワー号の乗員で港町プリマスを統治したウィリアム・ブラッドフォードを祖とする名家であるが、幼い頃の生活は世界恐慌の煽りを受け苦しかった。
オークランド・テクニカル・ハイスクール卒業後、朝鮮戦争のさなかである1951年に陸軍に召集され入隊。
2年後の1953年に除隊後、サウス・カリフォルニアに移住。
アルバイトの傍らロサンゼルス・シティ・カレッジの演劇コースを専攻する。
1950年代初めにユニバーサル映画と契約を結ぶが、当初は『半魚人の逆襲』『世紀の怪物/タランチュラの襲撃』といったB級映画の端役しか与えられないという、不遇の時代を過ごした。
TVシリーズ『ローハイド』、そして2人の師との出逢い 1959年からCBSで放映されたテレビ西部劇『ローハイド』で、ロディというカウボーイを演じる。
ロディとは名前ではなくニックネームで、ROWDYつまり“荒くれ者”。
同作品は約7年間に亘り150話近く製作された人気シリーズとなり、イーストウッドの知名度と人気は世界的に高まった。
1964年にはセルジオ・レオーネ監督にイタリアに招かれ、マカロニ・ウェスタンの嚆矢でありかつそれを代表する作品となった『荒野の用心棒』に出演。
その後も『ローハイド』の撮影の合間を縫って『夕陽のガンマン』、『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』と都合3作のレオーネ作品に出演した。
この3作品で名無しの男を演じたイーストウッドはレオーネを師と仰ぎ、レオーネの逝去まで交友を続けた。
これらの映画の人気により、イーストウッドの映画俳優としての評価はヨーロッパが先行し、アメリカに逆輸入された形となった。
『マンハッタン無宿』で出逢ったドン・シーゲルと再びタッグを組んだ『ダーティハリー』でイーストウッドは型破りな刑事ハリー・キャラハンを演じた。
これはシーゲル作品としてそれまでで最大のヒットとなり、イーストウッド本人もこの作品で人気アクション・スターとしての地位を不動にした。
現在においてもイーストウッドの俳優としての代表作として真っ先に挙げられるのがこの作品である。
『ダーティハリー』シリーズは、この後4作品が製作されている。
監督業の成功 1968年に映画制作会社マルパソプロダクションを設立。
1971年に『恐怖のメロディ』で初監督。
俳優業の傍ら『荒野のストレンジャー』『アウトロー』などの作品を立て続けに発表。
監督業に進出した他の役者と違い、所謂「大作」や賞レースに関わる作品への出演はせず、自らのプロダクションで製作した小規模ともB級とも呼べる作品でのみ主演し、監督業と俳優業を両立しながら地位を確立した。
1987年の第45回ゴールデングローブ賞において、生涯の功績を称揚するセシル・B・デミル賞を受賞。
1992年、師であるセルジオ・レオーネとドン・シーゲルに捧げた“最後の西部劇”『許されざる者』を監督兼主演で制作。
第65回アカデミー賞監督賞、作品賞を受賞、第50回ゴールデングローブ賞監督賞を受賞した。
この頃から『マディソン郡の橋』『ミスティック・リバー』といった文芸性の高い作品も手がけている。
2004年の『ミリオンダラー・ベイビー』で2度目のアカデミー作品賞/アカデミー監督賞のダブル受賞を果たす。
74歳という、最高齢での受賞記録を樹立したバイタリティは、アクション映画で培われたものであろうと驚嘆の元に迎えられた。
アカデミー主演男優賞はノミネートにとどまったが、「単に監督もできる俳優」ではなく、「アクション映画から文芸映画まで幅広くこなせる、優れた監督兼俳優」という評価を確立した。
2006年に『父親たちの星条旗』・『硫黄島からの手紙』の2部作を発表。
これはアメリカがかつての日米戦争において最大級の痛手を受けた「硫黄島の戦い」を、日米双方の視点から2作に分けて描くという方法で製作されている(同じような日米双方の視点による映画には真珠湾攻撃を扱ったトラ・トラ・トラ!があるが、こちらは1本の映画の中に入れている)。
『硫黄島からの手紙
』は、ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞作品賞・第32回ロサンゼルス映画批評家協会賞最優秀作品賞を受賞し、同年の賞レース最大の目玉として注目を浴びていたが、アカデミー賞では音響編集賞のみの受賞にとどまった。
2007年1月、『硫黄島からの手紙』でゴールデン・グローブ賞最優秀外国語映画賞を受賞。
2006年1月ごろ、南京事件 (1937年)を題材とする中国映画『南京・クリスマス・1937』の監督にイーストウッドが抜擢されたという中国官僚の発言が報道されたが、イーストウッド側がすぐに否定するという一幕があった。
