『明日、日本を発つ』



二人で過ごす大切な時間を、ぶち壊したメール。



『二度と会わない』



そう決めたアタシ。





けれど連絡を受けてから、徐々に不安定になっていく。
時間が経つ毎に、抑えきれなくなっていく。






それはどうしてだろう。
迷う必要なんてないのに?






酒の力で抑えられなくなった理性が切れ、
アタシは彼の前で泣きじゃくった。
色んな事が頭をよぎり、止まらなくなった。




何を口に出していたのかも思い出せない。
過去の記憶が噴出して、それを彼に吐き出して。
行き場の無い思いをぶつける。





失う事の恐怖を植えつけられたあの人。
彼を失うのは耐えられない。
でも、アタシはいつも間違ってしまう。
今、彼を失ってしまったら、アタシはまたおかしくなってしまうかもしれない。




恐怖がアタシを支配する。
目の前の彼は、傍にいるといってくれているのに。
それでも怯えてアタシは泣きじゃくる。




何度も繰り返した別れ。
どこで間違ったか判らないの。
何でそうなってしまうのか判らないの。
だから、次もそうしてしまいそうで不安なの。




あの人に二度と会えないから不安定になった訳じゃなかった。
彼が傍に居る事を、強く確認していたかった。
不安がる事はないのだと、強く抱きしめて肌で感じたかった。





それが叶わないなら、このままアタシを切り離して。
そう考えてしまう位に。







それは自分で抜けられなくなった迷路で。
いつも迷い込み、同じ所をさ迷い続ける。
叶わない望みなら失ってしまえ。
そうして、また一人になればいいのと。





好きになればなるほど、アタシは迷路の奥に迷い込む。







けれど。
彼には驚かされた。
アタシが何年かかっても出来なかった事を、
いとも簡単にやってのける。






導き出された出口。
泣きじゃくるアタシを宥め、その話を聞きながら、
彼が発した言葉。
そのたった一言が、一番必要としていた言葉。







『それは愛されてるとは言わない』






そう。
本当は、それが真実。
アタシが目を背けていた現実。





彼がアタシに教えてくれた、”大切にされる”と言う事。
これまでの恋愛で感じなかった心地良さ。
彼が言うからこそ、納得出来た。





本当はずっと、口に出して言ってしまいたかったの。
そんなの愛じゃない、と。
でも、信じてるフリを続けたかったから、ひた隠しにしていた。




ううん。
信じていたかった。






たとえ口に出しても、結局どこかでその愛を信じて。
縋りついて自分を慰めていた。


本当に違う?
それでもそこに愛はなかった?と。






だけどそれは無意味な事。
それは我慢する必要の無い事。
臆病になりすぎて、現実と向き合わずに居た事。








最初の恋愛には区切りをつけた。
現実を知る事で、アタシは立ち直った。
立ち直ったつもりだった。



けれど、それは違った。
初めての恋で、つまづいた記憶を封印して。
もう同じ過ちは繰り返さないと前を向いた気になって。
結局同じ事をしていただけなの。








それに気づいて、こうして吐き出したくなった。
彼にもちゃんと伝える為に。





これまでの不安がどこから来ていたか。
本当は何が一番いけなかったか。
それを整理する為に。




彼をちゃんと大切に出来るように。






メールと、彼の言葉がアタシにそれを気付かせてくれた。