一人は寂しい。

でも、支配されるのは嫌。

アタシはアタシで居たい。








愛なんて信じる事が出来ず。

永遠なんてものは存在を疑い。

一人の世界にアタシは足を踏み入れた。












静寂の日々。

仕事は楽しい。

戯れに遊んだ子犬君もかわいかった。

でも、アタシの傍には誰も居ない。

だけどそれで良いんだ。

アタシはそれを選んだから。








今の彼が現れた時も、アタシはまだ警戒しっぱなしで。
それでも何か惹かれるものを感じたのか、
遊びで終わってしまっても、それでも良いかもしれないと思った。
そして差し伸べられた手を掴む。








掴んだその手はとても暖かかった。








そう。
彼を受け入れよう、そう思った瞬間に好きだと自覚した。
また恋をしてしまった。
あれだけ避けて通ろうとしていたものを、自分で選んでしまった。
一人で気楽に生きていくはずだったのに。






でも自覚した思いは予想外に膨らんで。
また同じ過ちを繰り返してしまうのかと怯えて。
出来る限り冷静に対処しようと身構えて。
少しでも長く一緒に居たいから、と。





そんな風に考えていたのだけど。









彼は今までの誰とも違った。
疑う必要なんて何も無い位に、アタシに愛を与えてくれた。
不安になって迷っても、ちゃんと安心させてくれた。





素直にただ『会いたい』と告げる事が出来るのは、
これ程までに幸せを感じられるのか。
『一緒に居たい』という言葉を喉の奥で押し殺さずに
いられるのは何て素敵な事なのか。







たどたどしい言葉で、上手く伝えられない思いを、
彼はちゃんと受け止めてくれる。
それまで口に出せなかった言葉は、もどかしい程に
沢山の単語を重ねてやっと吐き出せるもので。
それでも、彼は辛抱強く聞いてくれて。





説明するのが下手だな、と彼は笑った。
それを見て、ホントにねとアタシも笑った。





これまで生きてきて出来なかった事。
彼がアタシを変えてくれた。