アタシは一人じゃ駄目な人間だ。

あの人もそう言った。

『だから俺がいるだろう?』

そんな風に微笑んで。





でも、自分から惚れ込んでしまうと

それすらも気にならなくなって。

結局最初と同じ過ち。

アタシはあの人の思うがままだった。







いくらあの人がアタシを放置しようとも、

アタシの想いはあの人のもので。

『他の奴なんて好きになれないだろう?』

自身満々で言い切るあの人の、その言葉がアタシを縛る。






居ない間にアタシだって他の人を見つけるんだから。

そう言っても、結局連絡がくればあの人の元へ行く。

連絡取れる状態じゃなかったと言われれば、仕方ないのだと納得し、

次の連絡が来るまでアタシはあの人を待つ。







連絡先もわからず、どこにいるかもわからない。

別に他の誰かを選ぶなら選べばいいとアタシを泳がせ、

気まぐれに戻ってきて愛を囁く酷い男。





けれど逆らう事が出来ない。

愛はそういうものなのだ。

アタシは常に従うだけなのだ。

そんな生き方に慣れてしまっていた。

結局相手が変わるだけで、アタシは誰かに囚われる。







そんなの耐えられない。








そして、連絡は途切れ。

数ヶ月が過ぎ。

戯れに誰かを求め。

一年が過ぎ。

愛を信じる事を忘れ。

二年が過ぎ。






今度こそ、と見つけた人はアタシがいないと駄目だと思わせる人で。

やっと救われた気持ちになった。






今までずっと、駄目な人間だと思わされ。

そんなアタシよりも愛に不器用な人。

平気でアタシを裏切って、それでも傍にいようとする人。






お互い自覚のないまま、傷の舐めあいを続ける。

そうする事で傷を塞ぐ事が出来ると信じていたのか。

少しでもお互いが前を向いて歩けるようにと、

更に傷を深くする事にも気づかずに。








何年も傍に居るうちに、その事実に気づいた時には

離れる事すら困難になっていて。

喧嘩をする日の方が多くなって。

同じ布団の中で背を向けて声をかけずに眠った。

殴り合いの喧嘩もした。






アタシは手放せなくなっていて。

ずるい部分も甘んじて受け止めた。

別れた後も身体の関係だけは続き。

取り戻す事に必死になってた。






愛して無くても、アタシが居ると便利でしょう?






都合良く振舞って。

アタシの元に戻ってくるようにと。

アタシ以上に貴方を幸せにする人は居ないのだと。

支配される側から支配する側に回ろうとするように。









だから相手は逃げ出したのだと、

気づけないまま。










そこにも愛は存在したとは思う。

じゃなくちゃ何年も一緒に暮らせない。

けれど、アタシは間違ってた。

だからお互い自由にならなくちゃと、そう素直に思えた時に

苦しくても手を離した。

愛着でも。愛情でも。確かに大切だったものを失う為に。













そしてまた戯れを繰り返し。

もう恋はしないと思うと、あの人が戻ってくる。

止めて欲しい。これ以上傷つきたくない。誰も傷つけたくない。

そう思うたびに連絡が入るのは何故なんだろう。










アタシは誰を愛していたの?

アタシは誰と傍に居たいの?

自問自答が繰り返される。








嘘じゃないよ?

本当だったよ?

大切だったよ?








そんな風に思えるから傍に居たのに。

なのに、気まぐれにアタシの元に戻ってくるあの人は、

そんな事おかまいなしにアタシをかき回す。








まるで結局あの人の手のひらで踊らされているかのように。

アタシに自由はないかのように。











ちゃんとけじめをつけよう。

じゃないと本当の意味では先に進めない。

いつもここに戻ってきてしまう。

誰と本当に愛し合ったとしても、

あの人は簡単にアタシを支配してしまう。









最初の恋の痛手が胸をよぎる。

そして、初めてあの人がアタシの前から消えてしまった時の事も。










初めての恋人はもう二度とアタシの前には現れない。

あの人の存在もアタシの前から消してしまおう。

そうすれば、少なくとも壊れないで居られる。

二度と、あんな風に生きたくない。








誰かを傷つける事も、傷つく事もなく。

一人で生きていく。

もう、誰にも支配なんてされない。

アタシはアタシ。

アタシの心はアタシだけのものだ。










だから去年の秋、もう二度と連絡を取らないつもりで

あの人との事を終わらせたのに。