インドを離れて西へ西へ行くと、もうそこはアラブ圏。

イスラムの教えが生活のあらゆるものに染み付いているところです。


アラブのどこかの国の街角で、僕はカフェに入りました。

店は結構広く、30人ほどの人たちが既に席についていましたが、

驚いたことに、女の人が1人もいません。

居るのは、上半身をすっぽりと白いワンピースで身を包み、

頭には同じく白い帽子を載せている男たち。

顔には髭をたくわえて、口に水タバコのパイプをくわえながら、

煙をモクモクと出しています。


僕はシャイを注文して、誰も座っていないテーブルにつきました。

インドでは「チャイ」と呼ばれていた飲み物、いつの間にかここでは「シャイ」になっています。

つまりは紅茶です。ただ、チャイと違ってミルクは入りません。


甘ったるいストレートティを口に含んで、まったりしていました。

アラブ圏では、女性が公共の場に出るという習慣がないようなのです。

このカフェに男だけがたむろしている所以です。

彼らはシャイと水タバコを楽しみながら、それぞれのテーブルで

トランプをやったり、妙な双六(すごろく)のようなゲームに興じていました。


振り向くと、隣のテーブルの男が僕に話しかけてきました。

「お前もやるか?」

もちろん彼らの言語は殆ど理解できません。

しかしどうやら、彼は僕をこの双六に誘っているらしいことは分かりました。


これまでにも、僕はカフェに入れば暇なアラブの人たちと

このゲームで遊んでもらってました。

言葉が通じなくても楽しい時間を共有できる、ささやかな喜びです。

僕は隣のテーブルの椅子に腰を下ろすと、

2個のさいころを木盤に転がしました。


5のゾロ目。

僕がゴゾロを出すと、周りのアラブ人たちが大げさに喚声をあげました。

運のいい出目が続き、僕が結局先に上がると、

取り巻きの男の1人が「カフア」を持ってきてくれました。

ご褒美らしく、僕はその飲み物を頂きました。


どこかの歌にもありました。

アラブの偉いお坊さんが、恋を忘れた哀れな男に教えてあげた

琥珀色をした飲み物。

それは香辛料の入った、渋めの味でした。


日本にいても、たまに苦いコーヒーを淹れてしまったとき、

僕はふと、バックギャモンをやりたくなるのです。


たけぢぃ@BBブログ水曜日担当