おはようございます。
BBブリッジの番場です。
現在、T細胞遺伝子改変療法であるCAR-T(Chimera Antigen Receptor T-cell Therapy)療法およびTCR(T Cell Receptor Therapy)療法の世界の開発動向や将来展望に関するレポートを作成し、調査結果も公表しました。
【技術・市場レポート】
T細胞遺伝子改変療法(CAR-T/TCR)開発の最新動向と将来展望(2016年1月発刊)
【プレスリリース】
T細胞遺伝子改変療法(CAR-T/TCR)の開発について調査結果を発表
本ブログでも何度か取り上げましたが、T細胞遺伝子改変療法の開発は欧米のベンチャー企業を主体にもの凄い勢いで開発が進められています。その結果、現時点で臨床試験段階のものも多数あり、早ければ本年度の上市が期待できます。
CAR-T/TCRの開発に注目が集まるにつれ、世界の大手製薬企業もベンチャー企業との提携を介して開発に参入しています。実際にはPfizer、Novartis、GSK、AstraZenecaなどがん領域に力を入れている大手製薬のほとんどの企業が共同開発を進めています。
一方、我が国においてもついに大手製薬企業であるアステラス製薬も開発に参入したことを2015年12月に発表しました。
【12月11日 アステラス製薬プレスリリース】
Bellicum社とのがんにおける細胞治療法に関する提携のお知らせ
アステラス製薬の提携先であるBellicum Pharmaceuticalsは細胞に特定のタンパクを発現させることで細胞内シグナルのコントロールを行う技術を持っており、アステラス製薬子会社のAgensys(2007年にアステラス製薬が買収)が持つ抗体開発技術と組み合わせることで、より優れたCAR-Tの開発などを目的としています。
CAR-Tに代表されるT細胞遺伝子改変療法は現在注目されている再生・細胞医療の中でも最も早くかつ大きな市場を形成すると期待されます。T細胞遺伝子改変療法が大きな市場を形成する根拠として、(1)がん領域は治療満足度が低く高い薬価が得られること、(2)患者を対象とした複数の臨床試験で高い効果があることが既に証明されていること の2点があります。米国FDAからbreakthrough therapyの指定を受けている開発品も複数あり、早ければ2016年度中の上市される可能性もあります。血液がんに対する抗体医薬品や分子標的薬が1製品で年間数千億円の売上がある製品が複数あることを考慮すると、CAR-T/TCRでも同等かそれ以上の市場を期待できます。
一方、CAR-T/TCRは患者の血液を加工して製造するため、インフラを含めた製造工程の開発も非常に重要です。日本国内では再生医療等安全性確保法の制定に伴う特定細胞加工物製造の許可制度の整備などがあり、CAR-T/TCRの提供体制も整いつつあるというアドバンテージがあります。さらに日本では細胞医薬品の品質管理技術や製造技術など開発する企業も多くあります。
CAR-T/TCRは国ごとのローカル展開が必要であるため、今後は海外開発企業と日本企業の導入導出契約の増加、特に有望なCAR-T/TCRの開発権の争奪戦も起こることが予想されます。
CAR-T/TCRの開発上市が医療現場および医薬品・再生医療ビジネスにどのような影響を与えるか、今後の展開に注目したいと思います。