Vol.28 Fabulous New Yorkers (9) Sheldon Barr
アートディラーのシェルダン・バーさんとの出会い
シェルダン・バーさんに出会ったのはニューヨークの友人の紹介です。
彼はベネチアン・グラス専門のアートディラーです。
シェルダンさんはパリやニューヨークのギャラリーで、40年以上アメリカとヨーロッパの家具やガラスアートを扱ってきました。
ティファニー・ランプ、エミール・ガレの花瓶、ルネ・ラリックのガラスの置物などなど、ああ、すべて私が大好きなものばかりで、ため息がでますね。
そんな美しい物に囲まれていたシェルダンさん。
ある日、ベネチアン・グラスの素晴らしいシャンデリアに一目惚れしたそうです。
そのシャンデリアは虫の死骸や古いローソクの塊などが付着しており、友人たちからは「馬鹿げている!」と言われましたが、100万円で買ってしまいました。
綺麗に掃除して、店に飾ると注目を集め、ベネチアン・グラスのタンブランーや、ワイングラスが欲しいと注文が来ました。
そのシャンデリアも180万円で売れました。
シェルダンさんの審美眼が正しかったのでしょう。
そして、15年前にニューヨークにベネチアン・グラス専門のギャラリーを開設しました。
同時にベネチアン・グラスについて猛勉強をしたところがシェルダンさんらしいですね。
そして、ベネチアン・グラスの本とベネチアン・グラスの
モザイクの本を書き上げました。
今は、3冊目の本を書いています。
ベネチアン・グラス・モザイクの本。これは絵でなくすべてモザイクです。
子供の頃、海岸で美しい色の貝殻を集めるのが好きだったシェルダンさんは、まるで子供の頃の好奇心そのままに、美しい貝殻を集めるように美しいベネチアン・グラスを集めているのでしょう。
「私は美しい色が大好きなのです。
だから、微妙な色の差も見分けることができますよ」
というシェルダンさん。
ガラスの微妙な色合いによって、花瓶や器の質は違ってきますよね。
その色の良し悪しを見極めることが専門家としての腕の見せ所でしょう。
彼のギャラリーに足を踏み入れた瞬間、私は「不思議の国のアリス」のような気分になりました。
シェルダンさんのギャラリーにあるたくさんのベネチアン・グラス
薄暗い部屋の中で、ベネチアン・グラスたちは小声でささやくように美しく、繊細なガラスの世界へと私を誘っています。
ああ、こんな色の貝殻を集めたことがあるなあ・・・・・、
この小さなガラスの器でお茶を飲んだら、どんな味がするかしら・・・、
こんな綺麗な花瓶にはどんな花を入れたらいいのかしら・・・、
こんなに輝く香水瓶にはどんな香りをいれたらいいのかしら・・・・・。
などなど、それぞれのベネチアン・グラスの物語が書けそうです。
シェルダンさんは、このギャラリーの仕事に加え、多くの雑誌にも原稿を書き、美術館のゲストキュレイター
としても活動しています。
今は、2012年にニューヨークのMuseum of Biblical Art (聖書アート美術館)の“Ecclesiastical Tiffany Designs”(聖書的なティファニー・デザイン)展覧会の準備をしています。
この展覧会は日本にも行く予定です。
シェルダンさんのビジネス・パートナーであり、ライフパートナーでもあるトム・ガーディナーさんは昔、バトラー(執事)をしていた経験を今本に書いています。
シェルダンさんは「すごく面白いんだ。映画になるかも」と期待しています。
著者としてもお互いに刺激しあっているようです。
彼らのウエブサイト www.gardnerandbarr.com
にアクセスしてみてください。
ベネチアン・グラスの歴史や美しいベネチアン・グラスの数々を見ることができます。





