NHKスペシャル エネルギーの奔流 第2回「欲望の代償 破局は避けられるか」 2014.05.2 | OVERNIGHT SUCCESS

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NHKスペシャル エネルギーの奔流 第2回「欲望の代償 破局は避けられるか」 2014.05.25
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およそ700台のトラックが中国との国境ゲートが開くのを待っている。
(クラクション)午後5時。
国境ゲートが開いた合図が鳴り響いた。
積み荷は全て石炭だ。
世界有数の石炭産出国モンゴルはそのほとんどを中国に輸出している。
石炭は化石燃料の中で最も環境に悪影響を与える。
だが世界では最も消費が伸びている。
はるか昔火を手に入れた人類。
石炭石油。
新たなエネルギーを手に入れる度に文明は爆発的に進歩。
争いを繰り返しながら欲望は膨張した。
しかし飽くなき発展と成長を求める人類を地球は支えきれるのか。
この先に待つものは…。
経済発展の目覚ましい新興国で急増するエネルギー消費。
それが生み出すひずみが先送りできない状況になっている。
化石燃料から出る二酸化炭素COが原因とされる気候変動。
海面の上昇により数億人が移住を迫られると警告されている。
一方原発には処分のめどが立たない放射性廃棄物がたまり続ける。
危険な核のゴミ。
追い詰められた国々はこれまで考えもしなかった計画に手をつけようとしている。
果たして人類はエネルギーが生み出す矛盾を克服できるのか。
あの石炭トラックの群れが中国国境を越える。
モンゴルから輸出される全ての石炭が中国に向かう。
世界最大の石炭の輸入国である中国。
消費量は年間37億トン。
世界の半分にあたる。
石炭の価格は石油の1/3。
化石燃料の中で最も安い。
中国はこの安いエネルギーを原動力に世界第2位の経済大国に躍り出た。
しかし経済成長のスピードに環境対策が追いついていない。
(カウントダウン)
(爆破音)その中国が今年に入って石炭を大量に使う工場を解体し始めた。
(爆破音)大気汚染が深刻化し石炭の消費を抑えざるをえなくなったのだ。
北京ではここ10年で肺がん患者が6割増えた。
中国政府はエネルギー消費に占める石炭の割合を65%以下にする目標を掲げた。
しかし中国のエネルギー政策の専門家は対策の効果はあまり期待できないという。
エネルギー全体量が増えるから石炭全体の消費量はそんなに急激に減らす事ができないんですね。
急激に石炭を減らせば経済がかなり失速になるんですね。
必要な電力などが確保できない。
経済成長率が例えば7%を割り込むと結局失業率が上がるという事になるんですね。
これが一番大きな問題になると思います。
難問を抱えた中国は石炭に代わるエネルギーの確保を急いでいる。
その一つが海洋資源だ。
今月南シナ海で中国当局の船とベトナム海上警察の船が衝突した。
(衝突音)互いに領有権を主張する海域で中国の国有企業が海底油田の掘削を始めようとした事が原因。
今後中国がエネルギーを確保しようとする事で他国との摩擦が増える可能性があると指摘されている。
豊かさへの欲望がエネルギーを求めそれを巡って争いが起きる。
何度も繰り返されてきた歴史だ。
人類のエネルギー消費はこの僅か200年で爆発的に増えたんだ。
エネルギー消費が増え始めたのは石炭による産業革命が起こってから。
20世紀に入ると自動車の大量生産が始まり…第2次世界大戦後中東で大油田が次々と発見され世界各国が経済成長を達成した。
エネルギーとともに人口も増えた。
2050年人口は100億近くになりエネルギー消費は現在の2倍になると予測される。
しかし特にここ100年地球温暖化の原因とされるCO排出量も急増している。
しかも今も増え続けているのだ。
アジアの新興国の一つインドネシア。
人口2億5,000万。
経済発展に伴い国民のエネルギー消費が急増している。
首都ジャカルタでは異変が起きていた。
海沿いの地域では満潮になると一日およそ8時間浸水するようになった。
地盤沈下しているところに地球温暖化で海面がおよそ20cm上昇した事が原因と考えられている。
浸水エリアは徐々に増え衛生状態も悪化している。
この家では3年前から建物の奥まで水が入ってくるようになった。
毎日水かきに追われ暮らしもままならない。
浸水被害を調査しているインドネシアボゴール農業大学のリザルディ教授。
今世紀中にジャカルタの10%およそ50万人の住む地区が水没更に被害が進む可能性があるという。
雨季にはジャカルタの半分の土地が沈んでしまう可能性があります。
これは我々にとって大問題です。
解決は簡単ではありませんがなんとかしなければなりません。
インドネシアでは既に24の島が海に沈んだ。
今世紀中に国土の1割が失われると指摘する研究者もいる。
海面上昇の被害が広がる一方でインドネシアでは温暖化を進めるようなエネルギー政策をとってきた。
政府は過去10年でCO排出量の最も多い石炭火力発電所を倍増させた。
価格が高騰する石油や天然ガスに比べ発電コストが1/3で済むからだ。
我が国は最も安い石炭による電力を最大限使わなければなりません。
安い電力こそが経済成長を推し進めるのです。
インドネシアの経済は安い電力によって急成長してきた。
電気料金は日本の半分。
海外から企業を呼び込むのに有利に働く。
日系企業だけでも1,200社が進出。
30万人の雇用を生んでいる。
こうして作られた製品を2億5,000万人の国民が消費。
旺盛な内需が経済を押し上げてきた。
GDPは10年で4倍に伸びた。
しかしCO排出量も世界平均の4倍のペースで増える事になった。
これからも石炭による発電の割合を増やすのか。
インドネシア政府は1年間かけて議論してきた。
3月エネルギー省は結論をまとめ今後10年間の発電計画を発表した。
今後10年発電の大部分は石炭が占める事になります。
電力の66%にあたる3,800万キロワットを石炭に頼らざるをえません。
値段の高い石油や天然ガスの割合を減らし石炭への依存度を大幅に増やす決断をした。
COの排出量は10年後には今の2倍になる見込みだ。
石炭を燃やす事で出るCOが環境に悪影響を及ぼす事は分かっています。
しかし安い電力は経済にとっても社会にとっても生命線なのです。
どちらかを選択しなければなりません。
難しい選択ですが私たちは環境より経済成長を選びます。
成長か?環境か?それが問題だ。
たとえ足元まで水が来たって豊かになりたい欲望は簡単には捨てられない。
だがこのまま進めば待っているのはこんな未来だ。
今世紀末平均気温は最大4.8度上昇。
異常気象を引き起こし食糧危機に陥る。
海面は最大82cm上昇。
数億人が移住を迫られ住む場所を巡って紛争が起きるといわれている。
安い化石燃料を大量に消費して経済成長する。
そんな20世紀的な方法はもはや成り立たないんじゃないか?アメリカ政府にエネルギー政策を助言してきた…エネルギーの歴史上人類は大きな転換点を迎えているという。
インドネシア政府は石炭の消費を増やす一方で新たなエネルギーの開発も進めている。
厳重な警備。
その先にあったのは実験用の原子炉だった。
原発の実用化を目指し小規模な発電を行って実験を繰り返している。
インドネシアでは2030年に電力需要が5倍になると予測されている。
エネルギー需要を満たしながらCOを削減する。
その手段として原発を位置づけている。
政府はジャカルタから400km離れた島に4基の原発を建設する予定だ。
我が国にも原子力の時代が来ます。
COの排出量が最も低いからです。
未来の選択はそれしかありません。
原子力しかないのです。
化石燃料から出るゴミCO。
COと並んで人類にとってやっかいなのが原発から出るゴミ放射性廃棄物だ。
原子力は石炭や石油などのあと1950年代に登場したエネルギーだ。
原子力発電所は世界に広がり今じゃ31の国と地域で426基まで増えた。
更に計画中のものも含めると181基が新たに建設される。
原発が増えるという事はすなわち放射性廃棄物も増えるという事だ。
このゴミはそれぞれ自分の国の中で処分する事になっている。
だが住民の反対で処分場を造れないもんだからそんな事にこだわっていられなくなってきた。
そういう時代なんだ。
広大な原野が広がるモンゴル共和国。
この国で放射性廃棄物を処分しようという計画がひそかに進められていた。
いわば核の国際処分場。
計画は2011年3月にアメリカで明らかになった。
アメリカがウラン燃料を輸出している韓国台湾などの使用済み核燃料をモンゴルに運ぶ。
そこに共同処分場を造る。
それは危険な放射性廃棄物は自国で最終処分するという常識を覆すものだった。
モンゴル国際処分場計画を知る…同盟国に核燃料を供給するアメリカにとって魅力的な計画だったという。
一方のモンゴルにもねらいがあった。
モンゴル政府は5年前から国内でウラン鉱石の本格的な調査を進めていた。
その結果世界最大級のウラン鉱脈がある事が分かった。
使用済み核燃料を引き取るサービスを行う事で世界にウランを売り込みたいと考えていた。
当時モンゴルの原子力計画に携わっていた…しかし秘密裏に進められていた計画がモンゴル国民に伝わると反対運動が起こった。
発覚から半年モンゴルの国際処分場計画は消えた。
しかし国際処分場の構想はヨーロッパでも進んでいた。
廃棄物の最終処分という原子力最大の問題に長年取り組んできた…今ヨーロッパ諸国の最終処分場の建設を模索している。
EU欧州連合は2011年加盟国に対し放射性廃棄物の処分の計画を早急に立てる事を義務づけた。
ほとんどの国が放射性廃棄物を抱えるEUはこの時初めて処分場を共有する事を認めた。
マコンビー博士はEUに加盟する10か国から国際処分場を造る事を依頼されている。
国際処分場を模索する国の一つオランダを訪ねた。
所有する原発は1基。
最終処分場を確保できていないオランダは高レベル放射性廃棄物をこの施設で一時的に保管している。
床下に貯蔵されコンクリートで蓋をされた高レベル廃棄物。
毎年3m^3ずつ増える。
最終処分場の建設費はたとえ高レベル廃棄物が少量でも数千億円かかる。
財政的に単独で処分場を造れないオランダは他国と共有する事が必要だと考えている。
問題は場所だ。
オランダ側はマコンビー博士に国際処分場の候補地を提案した。
オランダの政府機関が作った計画だ。
北海に人工の島を造る。
そこから海底に穴を掘り7か国の廃棄物を埋めるという計画だ。
しかし放射性廃棄物の処分に40年以上関わってきたマコンビー博士はこの計画の実現は容易ではないと考えている。
周辺国との交渉技術の開発資金調達など気が遠くなるほどの時間と労力が必要だからだ。
今マコンビー博士のもとには新たに原発を建設しようとするヨーロッパ以外の国からも問い合わせが相次いでいる。
まだ一件も実現していない国際処分場に期待して次々と原発が造られようとしている。
国際処分場を造ろうとする試みがかえって放射性廃棄物を増やす事につながるのではないか。
そう危惧し始めている。
この日はUAEアラブ首長国連邦の大使館に招かれた。
経済成長の続くUAEは現在2基の原発を建設している。
国際処分場に期待するUAEにマコンビー博士は忠告をした。
原子力というエネルギーを使えば必ず背負う事になる放射性廃棄物の課題。
その対策を十分に考える事なしに原発の建設をするべきではないとマコンビー博士は考えている。
石炭や石油からはCO。
原発からは放射性廃棄物。
どちらもやっかいだ。
ならば残る選択肢はそう!再生可能エネルギー。
いろいろなエネルギーの中でもごく僅かしか使われていないがこれから最も伸びると期待されてるよな~。
これで問題は解決!…といきたいところだ。
だが再生可能エネルギーを増やしても逆にCOや核のゴミが増えてしまう。
そんな奇妙な事が起きるっていうんだ。
2011年脱原発にかじを切った…この国では風力や太陽光発電をエネルギーの中心に据える。
将来再生可能エネルギーの割合を80%まで増やす計画だ。
しかしこのエネルギーの転換が矛盾を生み出そうとしている。
創業150年の大手…ドイツが再生可能エネルギーに転換してからこの10年で電気料金は2倍に跳ね上がった。
最近節電対策として消費電力を制御する装置を導入した。
この企業は電力料金がドイツのおよそ半分のチェコ共和国にも工場を持っている。
今後の設備投資はその工場を中心に行う事を検討している。
高騰する電気料金のために海外移転を考える企業はドイツ全体に広がっている。
商工会議所の調査によると既に3%の企業が生産の一部を国外に移転し14%が計画中だ。
ドイツの多くの企業が移転先に選ぶ隣国のチェコ共和国。
国境から僅か30kmの所にドイツ企業が集まる工業団地がある。
この国には既に200社以上の工場が建設されている。
工業化によって電力需要が伸び続けるチェコ。
電気の半分を石炭で賄っている。
中でも国内でとれる褐炭が中心だ。
褐炭は通常の石炭よりCOを1割多く排出する。
褐炭の採掘場と火力発電所に囲まれた村。
村長はチェコの大気汚染が進む事を心配している。
この悲しい景色を見て下さい。
ご覧のとおり取り返しのつかない破壊ですよ。
外国の企業は安い労働力と安い電気を求めてやって来ます。
よその国の工場によって自分たちの環境が汚染されるのは望ましくはありません。
どの国も自分たちが生み出す汚染にはもっと責任を持ってほしいと思いますね。
チェコ国営電力会社は将来の電力需要の増加に備え原発の建設を予定している。
ドイツ国境から60kmにある…ここに新たな原子炉を建設する計画だ。
ドイツの目と鼻の先で原発が増えていく。
2022年に全ての原発が廃止される予定のドイツ。
一方チェコでは2040年に発電量の5割を原発が占める見込みだ。
ドイツ南部。
フランスとの国境。
川を挟んだフランス側で原発が稼働している。
ドイツが国境を接する国には現在77基の原発がある。
更にドイツ企業が進出するスロバキアやポーランドでも原発建設の計画が進む。
1つの国が再生可能エネルギーを増やしても逆にほかの国で火力発電所や原発が増える可能性がある。
ドイツ経済研究所のハンス・ベルナー・ジン教授はこの現象をグリーンパラドックスと呼び批判している。
1国で環境対策をすれば成果が上がると考えるのはあまりに楽観的です。
かえって周辺に悪い影響を及ぼしかねません。
だからこそ世界規模で足並みをそろえてこの問題に取り組まなければなりません。
1つの国が単独で対策を試みても意味がないのです。
この200年で爆発的に増えた人類のエネルギー消費。
それに伴って増え続けるゴミの問題はたとえ1国が努力したところで解決しない。
国の違いを乗り越えて協力できなければ一体どうなるのか?膨張の果てに待っているのは…。
エネルギーの最前線を見つめてきた専門家は危機を免れる方法をどう考えているのか。
ヨーロッパを代表する経済学者パリ大学のジャン=マリー・シュヴァリエ教授はあらゆる分野の革新が必要だという。
エネルギーの分野で行き詰まった問題を技術の力で解決しようという挑戦が始まっている。
来年アメリカで稼働を始める世界最新鋭の石炭火力発電所。
ここには石炭から出るCOを取り除き地中に埋めるCCSというシステムが組み込まれている。
このパイプラインは地下1,500mの地層につながっている。
そこにCOを閉じ込める仕組みだ。
このシステムを使えば排出量を限りなくゼロに近づける事も可能になる。
しかしCCSを導入するには従来の発電所のおよそ2倍のコストがかかる。
技術の普及はどこまでコストを下げられるかにかかっている。
放射性廃棄物の問題を解決する模索も続けられている。
高レベル廃棄物が有害な放射線を発する期間を短縮する技術だ。
日本はこの分野で最先端を走っている国の一つだ。
放射性物質に加速した中性子を当てる。
これによって核分裂させ元よりも半減期の短い物質に変えようという試みだ。
研究の結果数万年続く高レベル廃棄物の環境への影響を数百年に短縮できる事が分かった。
しかしまだ微量の物質を使った基礎実験にとどまっている。
まだ1g未満しか実験できていない訳ですからこれから実際に核変換をしていかないといけないのは何トンというそういう量を取り扱っていく技術をこれから積み重ねていかなければいけないと思っています。
実用化は早くても2050年という。
2050年。
地球の人口は72億から96億に膨れ上がりエネルギー需要は今の2倍になると予測されている。
その爆発に技術革新は間に合うのか。
時間との闘いだ。
アメリカのリチャード・ハインバーグ氏は人類に残された時間は短く大量消費を前提とする社会を変えなければならないという。
ゴビ砂漠にある世界最大級の石炭鉱山。
今日も中国に輸出する石炭を掘り続けている。
近くでは古くからこの土地で羊を飼う遊牧民の暮らしが営まれている。
羊の習性から学んだ一つの教訓を話してくれた。
テイ!とめどない欲望に駆られ資源を掘り続ける人類。
(クラクション)エネルギーの奔流が生み出す矛盾を解き破局は回避できるのか。
未来への選択が迫られている。
2014/05/25(日) 21:00~21:50
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル エネルギーの奔流 第2回「欲望の代償 破局は避けられるか」[字]

化石燃料が出す温暖化ガス・CO2。原発が出す核廃棄物。エネルギー消費の膨張にともない深刻化する問題に対し、人類はついに禁じ手ともいえる解決策に乗り出した。

詳細情報
番組内容
地球温暖化が叫ばれる中、皮肉にも化石燃料の中でCO2を最も排出する石炭の消費が伸びている。経済成長をめざす新興国では原発建設も加速し、核廃棄物がたまり続ける。世界はついに禁じ手ともいえる解決策に乗り出した。経済成長と環境・安全の間で深刻化する矛盾と葛藤。2050年にはエネルギー消費は現在の2倍に膨張する。このまま大量消費を続け、果たして文明は持続できるのか。世界の英知とともに人類存続の道を探る。
出演者
【語り】松重豊,井上二郎

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ニュース/報道 – 報道特番

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz