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コンテンツ制作支援、クラウドの次は―米アドビ社長兼CEOシャンタヌ・ナラヤン氏(そこが知りたい)



2014/04/27 日本経済新聞







米ソフト大手のアドビシステムズがクラウドコンピューティングへの対応を急いでいる。2013年には主力の画像処理ソフトなどでパッケージ版の販売を打ち切り、クラウドに一本化した。これまでの成果と次の一手をシャンタヌ・ナラヤン社長兼最高経営責任者(CEO)に聞いた。 ――クラウドに全面移行しました。 「当社は創業以来、コンテンツ制作者の支援を事業の中心に据えてきたが、消費者がコンテンツを視聴する形態が大きく変わっている。メディアの中心が新聞・雑誌からウェブやモバイル機器のアプリ(応用ソフト)に移り、変化のスピードも速い。12~18カ月ごとにパッケージ版を更新するのでは間に合わないというのが理由のひとつだ」 「利用者は高額なソフトを購入するのではなく、料金を毎月払えばよい。初期コストが下がることで、利用者の裾野も広げられる。海賊版への対策にもなる。パッケージ版とクラウドサービスを併存させる考え方もあったが、複雑さが増してうまくいかないと考えて全面移行を決めた。社内には利用者数や継続利用率など新たな指標を示し、理解を求めた」 ――成果は出ていますか。 「1年弱で500もの機能を追加することができた。15年11月期までに400万人の利用を見込んでいるが、想定を上回るペースだ。14年11月期に300万人を超える見通し。直近の四半期には売上高の半分以上をクラウドサービスが占めた。(パッケージ版の販売中止は一時的な減収要因になったが)今後は売上高、1株利益ともに増加に転じるとみている」 ――次の一手は。 「アプリやハードウエア(機器)に取り組む。タブレット(多機能携帯端末)はコンテンツの視聴だけでなく、制作にも活用できるはずだ。いいアイデアが浮かぶのは机の前だけでない。これまで出先ではナプキンにメモ書きする程度だったが、タブレットを使うことにより、どこでもコンテンツを作れるようになる。数カ月以内に対応アプリを一通りそろえる。電子ペンなどの関連機器も近く発売する」 ――マーケティング関連サービスも強化しています。 「コンテンツ制作から出発した当社が、その管理や配信、評価などに進出して企業のマーケティングを支援するのは自然な流れだ。競合も多いがコンテンツ制作者と強い関係を持つ当社は違いを出せると考えている。M&A(合併・買収)で関連企業を相次いで傘下に収め、各社のサービスの統合に注力している。現在、売上高に占めるマーケティング関連の割合は20~25%だが、この比率をさらに高める」 マイクロソフトやオラクルなど米ソフト大手はクラウド対応を競っているが、一気に「全面移行」にかじを切ったアドビは大胆だった。だが、この1年で株価は約4割上昇し、時価総額は300億ドル(約3兆円)を突破。“賭け”はひとまずは吉と出た。 もっとも移行に成功しても、成長に結びつけられるかは別の話。新規利用者の取り込みやマーケティング支援への取り組みはこれからだ。米投資情報誌のバロンズが「事業再生の名人」と称したナラヤン氏が経営者として名声を高められるかは、次の一手にかかっている。(奥平和行) 米カリフォルニア大学バークレー校で経営学修士。1998年にアドビ入社。2007年から現職。50歳。