TPP、農業の変革迫る、進む高齢化、生産額目減り、攻めの経営、政策も転換点。 | OVERNIGHT SUCCESS

OVERNIGHT SUCCESS

オーバーナイトサクセス >>> 
帰国子女の英語データ集(英語喉 ネイティブ音完コピ 独り言英語)

TPP、農業の変革迫る、進む高齢化、生産額目減り、攻めの経営、政策も転換点。

2014/04/27 日本経済新聞 

 環太平洋経済連携協定(TPP)が日本の農業に変革を迫っている。24日の日米首脳会談では合意にいたらなかったものの、日本が「聖域」としてきた豚肉や牛肉の関税を下げ、コメの輸入枠を広げる方向で交渉が進んだ。厳しさを増す経営環境に対応し、国際競争力を高める攻めの農政が求められている。
 TPPをめぐる日米交渉の最大の焦点が、農産品の扱い。安倍晋三首相とオバマ大統領の首脳会談や閣僚級協議では、豚肉と牛肉の関税を大幅に下げることや、米国からコメを輸入する際の低関税枠を広げることが話し合われたもようだ。
 農業団体は交渉加速に身構える。全国農業協同組合中央会(JA全中)は21日に緊急集会を開き、万歳章会長が「現場には大きな不安が広がっている」と強調。別の幹部は集会に出席した自民党議員に「(2012年の衆院選で)一票を投じたことを踏まえてお願いしたい」と迫った。
 似たような光景は20年余り前にもあった。「期待を裏切るなら、今後の国政選挙で著しい変化が起きることを止められない」。日米欧など各国で貿易自由化を話し合ったガット・ウルグアイ・ラウンドでは、JA全中の堀内巳次会長(当時)がコメ市場の開放に反対する1991年の緊急集会でこう語った。
 票の力を頼りに離反をちらつかせ、農産物市場の開放を食い止めようという姿勢はいまも昔も同じ。ではこの間に農業はどうなったのか。
 12年の農業産出額は8兆5000億円と、20年前と比べて2割強減った。農業人口に占める65歳以上の比率はいまや6割超。日本の高齢化を上回るペースで若い担い手の減少が進む。いまのまま農業保護を続けても、流れは変わらない。
 もちろん市場開放が進めば、農業はこれまで以上に厳しい国際競争にさらされる。だから「不安と懸念と危機感が広がっている」(JA全中の万歳会長)。問題はそれを払拭するためにどんな手を打つかにある。
 農政はちょうど競争力の強化へとカジを切ったばかりだ。担い手に耕地を集めるための「農地バンク」を今年から創設。稲作の効率向上を阻んできた生産調整(減反)を18年をメドに廃止することも決めた。TPPはこうした政策にさらに力を入れるよう迫る。
 教訓はウルグアイ・ラウンドへの対応にある。農業交渉が大詰めを迎えた92年、農林水産省は市場原理を重視し、競争を促すことで経営効率を高める「新政策」を発表。将来のある農業者に政策支援を集中するなど、農政の転換を試みた。
 揺り戻しは翌年に起きた。交渉が妥結しコメ市場の部分開放が決まると、補助金のばらまきを求める声が噴出。6兆円もの対策費を投じて農村で公共事業などを進めたが構造改革は遅れ、日本の農業の競争力はいっこうに高まらなかった。
 TPP交渉がまとまれば、再びばらまきを求める声が強まるのは確実。一方で逆風に向き合おうとする経営もある。
 シンガポールに牛肉を輸出する北海道芽室町のオークリーフ牧場の柏葉晴良社長は「攻めの農業に徹する」と話す。ウルグアイ・ラウンドの轍(てつ)を踏まず、未来を担う経営を後押しする政策にいまこそ照準を合わせるべきだろう。